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【特集】狭小・変形の穴場開拓で急成長、持続の鍵は「脱・東京依存」~オープンH

~株探プレミアム・リポート「戸建て業界-勝ち組の条件 第2回」~

登場する銘柄
オープンH<3288>、カチタス<8919>、ケイアイ不<3465>、アグレ都市<3467>、プレサンス<3254>

編集・構成/真弓重孝、取材/高山英聖(株探編集部)

前回記事「リモート特需後の勝ち組になるのはどこ? 不動産業で気を吐く『戸建て』」を読む

リモート特需で好業績企業が続出した戸建て業界。2021年は20年に比べて市場の成長は減速しているが、前回の記事で紹介した2人の専門家によれば、市場は中期的に安定しながら、長期的には人口減少の逆風が予想されるという。

そうした中で、今後も潜在的な成長力を持つ会社はどんなところか。業績と株価が好調なオープンハウスグループ<3288>、カチタス<8919>、ケイアイスター不動産<3465>、アグレ都市デザイン<3467>から探った。

4社の最近の株価パフォーマンスと事業概要と強みは、以下の通りだ。今回はオープンHに焦点を当てる。

■4社とTOPIX、不動産業の株価パフォーマンス(2019年末比)
【タイトル】
注:3月17日終値時点。不動産業は東証業種別株価指数。銘柄名は簡易表記

■4社の戸建て事業の概要
銘柄名
<コード>
主力事業顧客に対する
訴求点
競争力の源泉
オープンH
<3288>
新築建売平均年収でも
都市部で購入可能
製販一体、営業力
カチタス
<8919>
中古再販リフォーム済みで
新築の半値以下
調査・改修ノウハウ
ケイアイ不
<3465>
新築建売格安セミオーダーデータドリブン追求
アグレ都市
<3467>
新築建売注文住宅に
劣らない品質
製販一体、設計力


「ガラ空きの市場」に資本を集中投下

「東京に、家を持とう」のキャッチフレーズで知られるオープンH<3288>は、東京都中心部から電車で30分以内のエリアを中心に、平均的な会社員でも手の届く範囲の価格帯で戸建てを開発・販売する。業績は過去9期連続の2桁の増収経常増益で、今期も2桁増を計画している。

■『株探プレミアム』で確認できるオープンHの長期業績推移
【タイトル】

急成長をけん引しているのが、売上高の5割超を占める戸建て事業だ。首都圏を中心に営業センターを60拠点以上構え、近年は名古屋、福岡でも販売件数を増やしている。

同社の競争力の源泉と、今後の課題をまとめたのが以下の表だ。多少土地が小さくても、都心の近くでもマイホームを持ちたいという層をターゲットに成長してきたが、次なる飛躍には、東京以外のエリア拡大と、既存のビジネスモデルを応用した収益基盤の強化も求められそうだ。

これまでの取り組みと、これからの成長戦略について見ていこう。

■オープンHの競争力の源泉、当面の課題、課題解決の一手
【タイトル】

「都市部の小さめの土地」という穴場に着目

まずこれまで成長してきた成長力の3つの源泉について見ていく(上の図の左)。

1つ目は、「都市部の狭小地・変形地狙い」という、勝負するマーケットを絞り込んだことだ。本格展開したのが2000年代後半だ。

東京都心の近郊は通勤の利便性から人気が高い一方で、価格面や供給量で会社員が手軽に手を入れにくい状況。その需要と供給のミスマッチを埋めるのが、狭小地・変形地狙い。こうした土地は居住面積を広げにくいことから、まとまった土地に規格化した戸建てをつくりたいホームビルダーには不人気だった。

これに対して、オープンHは、たとえ狭くても3階建てでガレージ付きの3LDKが確保できる家を手頃な価格で提供できれば、顧客の支持を得られるはずと考え、事業モデルを着々と構築してきた。そうした中で、2008年のリーマン・ショックの地価急落で、都市部の土地を安く取得できた。

同社の都心近郊の物件価格は平均4200万円ほど。国土交通省の「住 宅 市 場 動 向 調 査」(令和2年度)によれば、三大都市圏での新築の注文住宅の平均価格は約5600万円。これと比較すると、オープンハウスの物件価格はやや低めになっている。

顧客のボリュームゾーンは世帯年収で700万~800万円の層だ。家計の健全性の面から「年収の5~6倍」(IR担当・田川敦史氏)と考える基準に、どうにか収まっている。

■オープンHの戸建て住宅
【タイトル】

仕入れ・販売で「攻めの営業」を追求

もう1つが「攻めの営業」だ。

例えば、建設用地の仕入れ営業では通常、土地の目利きのできる熟練社員が人脈を武器に地場の不動産仲介会社からFAXで送られた土地情報を吟味して、仕入れの判断を下す。それに対してオープンHは情報収集に人手をかけることを厭わず、物件情報がFAXで流される前に先回りして押さえる戦略だ。

具体的には、仕入れ専属の社員が地場の不動産会社を1日20件以上回り、土地情報をかき集める。足元の人員は200人以上で、その規模は「おそらく業界で突出している」(田川氏)。

販売営業も同様だ。街中で声掛け営業を実施し販売力を底上げしている。自社の開発案件に限れば、年間販売棟数のうち3割は声掛け営業によるものだという。

「製販一体」がすべての土台に

最後が「製販一体」の体制構築だ。戸建て事業に必要な「土地の仕入れ」「設計・施工」「販売」という3つの工程を内製化したことは、独自のポジショニングに貢献している。

先にも触れた通り、まとまった土地に規格化した戸建てを一気につくりたいホームビルダーにとって、ひとつ1つ違った設計が必要な都市部では建築コストがかさみやすい。

それに対してオープンHは、「設計・施工」の内製化で土地ごとに違う設計を可能とした。外注が減れば中間マージンを抑制できるので、建築コストの圧縮にもなる。その分だけ販売価格の設定もやりやすくなる。

一方で注文住宅の大手メーカーは、同社によれば自社で「仕入れ」「販売」を行うのに消極的な印象だという。オープンHは2つの営業活動を内製化すれば、先に触れたように営業効果を高められると考えた。

仕入れ・販売の内製化はシナジーも発揮しやすい。例えば仕入れ部門が、土地の仕入れの可否を判断する際、想定する販売価格が妥当かどうかを、販売部門が持つ実績とすり合わせることができる。柔軟な情報共有が、意思決定の早さや精度を支えている。

オープンHといえば泥臭い営業を思い浮かべがちだが、その根底では独自のポジショニングと製販一体で商品開発と営業の効率性を追求していることがわかる。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。



 

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