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【特集】リバウンド機運、コロナ禍でも奮起するアパレル関連株を総点検 <株探トップ特集>

コロナ禍で大変革するアパレル業界には、経営努力の回収期に入る銘柄の多くが割安に放置されている。スポーツや仮想ファッションなどのニーズを捉え、再評価の動きも。

―新型コロナの影響一巡で業績V字回復へ、ここから始まる復活ロードに乗れ―

 ここ大きく売り込まれる展開となっていた日経平均株価だが、週末28日にようやく切り返しに転じた。日経平均株価は500円超の上昇で4日ぶりに反発。前日までの3営業日で約1400円の下げをみせていただけに自律反発狙いの買いが優勢となったが、まだ底入れというには時期尚早の段階で、投資家は慎重な姿勢が求められる。企業の業績動向に目を凝らし、買えるものとそうでないものの見極めが重要だ。その際、たとえ足もとの業績が厳しくても、今後に回復の道筋が見えている企業であれば、投資対象として見直されるケースは多い。

 アパレル 関連は、コロナ禍で業績への影響を大きく受けた業界の一つだ。今年に入り、新型コロナウイルス感染症対策の「まん延防止等重点措置」が再び適用されたが、業績面では回復傾向にある企業が多い。ここ株式市場では、米金融政策の大転換を警戒し利益確定売りの動きが強まっている。好業績で割安に放置されていたアパレル関連株は相対的に上値妙味を内包している銘柄も少なくない。ここで関連銘柄を改めて点検してみたい。

●構造改革で業績が急回復

 2021年の国内ファッション業界は危機的な状況だった。インバウンド需要の消失やリモートワークの導入加速によってスーツやバッグなどのビジネス需要が減少し、外出自粛でワンピースや水着などの売り上げも落ち込んだ。こうしたなか大手アパレルなど、大規模な構造改革に動く企業が急増、それに伴う損失の計上で赤字転落する企業も相次いだ。しかし、今はそうしたドラスチックな経営努力の回収期に入っている。ワールド <3612> は、2度の構造改革の実施で21年3月期の連結最終損益が171億4900万円の赤字となったが、今22年3月期は同損益予想が5億2900万円の黒字とV字回復し、復配も果たす見通しだ。

 また、オンワードホールディングス <8016> は1月に発表した第3四半期累計(21年3-11月)決算で、最終損益が80億8200万円の黒字と通期計画に対する進捗率は99%だった。この決算発表を受けて同社株は下げ渋る動きをみせ、足もとでは300円を挟み一進一退の展開を示している。同じく1月に第3四半期決算発表を行ったTSIホールディングス <3608> も足もとの会社側想定を上回る業績好調を受けて、22年2月期通期最終利益予想を上方修正した。

 これら3銘柄はいずれも百貨店を主力販路として成長を遂げてきた総合アパレルメーカーだ。しかし、百貨店はECの台頭により閉店が相次いだうえ、コロナ禍が追い打ちをかけるかたちで販売急減に見舞われた。大量の在庫を抱え、資金繰りにダメージを受ける企業も少なくなかった。これまでシーズンごとにトレンドを仕掛けて買い替えを進めてきた大手アパレルメーカーは、旗艦ブランド廃止のほか、ECの本格展開及び仕入れ・販売コストの徹底管理などを進め現在、業績は回復歩調にある。ちなみに3銘柄ともPBRは0.6倍以下にとどまり、業績が回復に向かえば、株価指標面での割安さが買い安心感につながる。

●スーツ市場縮小も市場開拓を進めるタンゴヤ

 タンゴヤ <7126> [JQ]はオーダースーツの企画販売を手掛けるが、コロナ禍真っただ中の21年8月にジャスダックに新規上場した。初値は1703円と公開価格の1600円に対して6.4%上回った。同年10月には上場来高値の2589円まで上昇したが、その後は調整を余儀なくされ、直近は2000円近辺での値動きとなっている。21年8-10月期営業損益は1億4200万円の赤字で着地したが、22年7月期通期では4億1100万円の黒字(前期実績は3億900万円の黒字)と回復する見通し。リモートワークが進展しているとはいえ、既製品の需要動向には必ずしも影響は出ていないもようで、アフターコロナを見据えて新規に2店舗を出店。スーツ市場が縮小傾向にあるものの、同社は既製スーツからオーダースーツへのシフトの流れを捉えて、手ごろな価格で20~40代をターゲットとした市場の開拓を進めている。

●世界的サプライチェーン混乱下でも成長

 一方で、“いえなかニーズ”に対応し機能性を重視する中低価格帯商品を展開するメーカーの業績はそろって右肩上がりだ。ファーストリテイリング <9983> や、アダストリア <2685> など、これらの企業に共通しているのは、デジタル施策による徹底管理、機能性重視の商品展開、価格優位性である。生活必需品としての衣料品は外出自粛や収入面での不安があると、家計の防衛意識などから支出抑制の対象になりやすい。昨年半ばからコロナショックを背景に製造業を中心にサプライチェーンが混乱し、物流コストが急上昇していることなどが業績面でボトルネックとなっているが、それでも増収増益トレンドを維持している。

 なかでもデイリーファッションを手掛けるしまむら <8227> が昨年12月に発表した22年2月期第3四半期累計(2月21日-11月20日)連結営業利益は387億8500万円(前年同期比24.5%増)となり、通期計画456億8400万円に対する進捗率は84.9%だった。主力のしまむら事業は売り場と販売促進施策との連動が効果を発揮し、コーディネート提案の強化などによって、顧客の買い上げ点数が増加。また、効率的な在庫コントロールなどを行い値下げ抑制ができたという。その後に発表された1月度の既存店売上高は、前年同月比10.7%増と3ヵ月連続で前年実績を上回っており、通期業績の上振れも期待される。

●スポーツファッション周辺銘柄に注目

 スポーツウェア大手のデサント <8114> はアウトドアブームに乗り、22年3月期最終利益予想について期中2度にわたる上方修正を行っている。国内において、返品及び値引きなど販売ロス抑制による売上総利益率の向上や、販管費の削減による収益改善が想定より進んだことが、その要因となっている。また、韓国においてもランニングシューズやゴルフ関連商品の売り上げが好調に推移していることが寄与する見通し。

 小売店「ABCマート」を全国展開しているエービーシー・マート <2670> は昨年12月28日につけた昨年来安値4825円をターニングポイントに上昇基調となっている。21年3-11月期連結営業利益は前年同期比33.5%増の198億4500万円で着地、店舗運営の効率化と経費削減が引き続き奏功した。また株主還元にも前向きで、150万株(発行済み株式総数に対する割合1.81%)もしくは75億円を上限とする自己株式の取得枠を設定している(取得期間は2月28日まで)。

●メタバースファッションがブランド選びに影響も

 長引くコロナ禍の影響で消費者がオンラインを利用する時間が増えるにつれて、メタバース(仮想空間)におけるバーチャルファッションが現実社会にも影響を与えるだろう。アバター用バーチャルファッションを巡っては、欧米のラグジュアリーブランドが続々と開発に参入していることが話題だ。国内では、広告大手の博報堂DYホールディングス <2433> が自分をモデルに作ったアバターを使ってオンライン上で試着ができる「じぶんランウェイ」を開発したと発表。また、メタバースファッション専門アパレルブランド「ポリゴンテーラーファブリック」の新設を発表したシーズメン <3083> [JQ]のほか、ANAP <3189> [JQ]もメタバースファッションプラットフォーム「アパレリッド・メタ・コネクタ by ANAP」を開始するとしており、これらの企業の先進的な取り組みにも注目しておきたい。

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