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【市況】明日の株式相場に向けて=マザーズ市場の急落が鳴らす警鐘

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 きょう(5日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比30円高の2万9332円と続伸。22年相場の大発会で幸先よくスタートダッシュを決めた東京市場だったが、日経平均が500円超の上昇はやや出来過ぎ感もあり、きょうはその反動で上値が重くなった。しかし、半導体の主力銘柄が利食われるなかできょうもプラス圏を維持したのは、金融株や景気敏感株などバリュー株への資金シフトがうまく利いたことによる。前日は欧州株市場がほぼ全面高となり、米国株市場でもNYダウが続伸し連日の最高値と気を吐いたが、ナスダック総合株価指数は反落した。ここ最近の推移を改めて眺めれば、ナスダック指数は寄り付き早々に戻り高値をつけた昨年12月28日から崩れ始めている。

 何かを気にしているとすれば、それは米長期金利の動向というのが妥当な見方であろう。米10年債利回りはインフレ警戒のなかで水準が切り上がらないことに、パウエルFRB議長ですら首をかしげているような状況にあったが、ここ最近は目が覚めたように上昇し始めた。前日に10年債利回りが一時1.68%まで上がり、これは衝撃的とはいわないまでも、昨年10月21日に1.7%台に乗せたときに近い動揺がマーケットに走った。高PERのハイテク系グロース株はこれまで過剰流動性に包まれていたが、窓を開けたら冷たい北風が頬に当たり、にわかに冬の存在を意識したような状態だ。

 きょう開示されるFOMC議事録(12月14~15日開催分)にマーケット関係者の耳目が集まっている。この時間軸で長期金利が上昇してきている背景には、明らかに議事録に対する思惑がある。市場では「テーパリング加速による量的緩和(QE)の前倒し終了と年3回の利上げシナリオまでは相場は織り込んでいるが、その先にあるFRBのバランスシート縮小、つまり量的引き締め(QT)に対する議論が早くも俎上に載っているのではないかという警戒感がある。場合によっては、6月からといわれる政策金利の引き上げに先立って、3月の量的緩和縮小と入れ替わりで間髪を入れず量的引き締めに入る可能性もゼロではない」(ネット証券マーケットアナリスト)という声が出ていた。

 米国ではバイデン大統領が、何はともあれ支持率低下の要因となっているインフレ対策を優先したいという考えで、そのプレッシャーはパウエル氏にも間接的に伝わっている。長期金利を上昇させイールドカーブのスティープ化を実現する手法として量的引き締めは有効であり、それに向けたシナリオは12月開催のFOMC議事録に書き込まれているという見方は客観的に考えても不自然ではない。ナスダック指数が高値圏で逡巡しながらも水準を少しずつ切り下げているのは、このFOMC議事録の開示待ちという意味合いが強い。

 そして、東京市場ではこのナスダック指数の動きにリンクして変調ぶりを際立たせているのがマザーズ指数の動向である。きょうは終値ベースで49ポイントあまり下げ927.69と昨年来安値を大幅に下回った。下落率にして5%、これは日経平均に当てはめれば1400円以上の暴落となる。マザーズ市場の評価損益率は直近でマイナス25%前後に達している。東証1部銘柄との合わせで何とか投げ売りは抑えているものの、依然として厳しい状況に変わりはない。これに輪をかけて傷んだ状態となっているのが12月の怒涛の新規上場ラッシュでセカンダリー市場に上がってきた直近IPO銘柄群だ。当初から玉石混交とは言われていたものの、現状はその玉を探すのが難しくなっている。もちろん成長性を秘めた銘柄も少なくないはずだが、今は株式需給悪のひとことでプラス材料はすべて払拭されてしまうような地合いである。新興銘柄売りの東証1部買いという一種の資金シフトであれば、それはそれで対応のしようがあるが、前向きな変化の兆候とはいえず注意が必要だ。まずはFOMC議事録開示後の米株市場の動向を注視したい。

 個別株では株価指標が割安でなおかつ成長力も内包する銘柄が今の地合いで優位性を発揮しそうだ。半導体関連ではエノモト<6928>やニレコ<6863>に注目。また、自動車周辺ではトヨタ系のフタバ産業<7241>はEV対応にも積極的で面白い存在となる。このほか、自動運転のソフト分野で活躍が期待されるゼンリン<9474>もマークしておきたい。

 あすのスケジュールでは、1月の日銀当座預金増減要因見込み、6カ月物国庫短期証券の入札など。海外では12月の財新中国非製造業PMI、12月の独CPI、12月の米ISM非製造業景況感指数、11月の米貿易統計、11月の米製造業受注など。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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