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【市況】ESG最前線レポート ─「リスクからチャンスへ」<新春特別企画>

株式会社グッドバンカー リサーチチーム 倉橋 麻生

第3回 「リスクからチャンスへ」

●スポーツ競技での人権問題への関心の高まり

 2022年2月から始まる北京2022冬季オリンピック・パラリンピック。2021年12月、アメリカが外交使節団を派遣しない外交的ボイコットを表明し、これにイギリスやオーストラリア、カナダ、リトアニアなどが追随することを表明して、日本も政府関係者の派遣を見送る方針を決めました。

 各国が外交的ボイコットを表明する理由は、中国政府による新疆ウイグル自治区などでの人権侵害への抗議です。これには、オリンピックに政治問題を持ち込むべきではないとする意見もありますが、オリンピック憲章には人権尊重が謳われており、人権問題に対し世界から厳しい目が向けられていることは事実です。

 中国では元政府要人からの性的被害を告発した女性選手が行方不明になった事件もあり、女子テニス協会が中国開催の大会の中止を発表しています。

●企業に対しても厳しい目が

 2021年1月、アメリカで、ある日本企業の製品が輸入を差し止められました。先の新疆ウイグル自治区での人権侵害により、ウイグル産綿などを対象とする輸入禁止措置に違反したとするもので、フランス司法当局も捜査に乗り出しています。ウイグル綿を巡っては、同地区で生産されている綿の使用を取りやめる企業が相次いでいます。このように、企業の事業活動における人権への配慮も強く求められているのです。

 また、ミャンマーで軍事クーデターが起こって以降、日本を含めミャンマーに進出する外国企業に対し、クーデター政権を資金面で支えないようビジネスの見直しを求める声が強まっています。ミャンマーの民主化を支援するNGO(非政府組織)は、クーデター政権と関係があるという日米欧などの上場企業61社をリストアップし、機関投資家に対して保有株式の売却を求める声明文を発表しました。ある日本企業は、国軍系企業との合弁事業の提携解消に向けた協議を行っています。

 これらの動きは、直接的に企業の経営や業績に影響するものであり、ESGの「S」(Social:社会)への未対応が事業のリスクとなるわかりやすい事例と言えます。

●リスクをチャンスに――ESG投資

 環境、人権、不祥事、事故、疫病、紛争、格差……。様々なリスクが絶えず生じる世界にあって、企業はそれらを見据え、適切に対応していかなければなりません。その中で、ドラスティックな変化を求められることもあるかもしれません。

 例えば、イギリスのBP<BP>は2020年に国際石油資本から総合的なエネルギー会社に転換するための事業計画を発表し、2030年までに再生エネルギーによる発電量を50ギガワットに増やし、石油・ガスの生産を2019年比40%削減することを明らかにしました。つまり、石油メジャーが「脱石油」へと舵を切り始めたのです。2021年には米エクソン・モービル<XOM>が株主総会で環境派とされる3人を取締役に選任し、オランダのロイヤル・ダッチ・シェル<RDS.A>は二酸化炭素の排出量を2030年までに2019年比で45%減らすよう司法に命じられるなど、本業そのものの方向性の大転換が求められています。

 また、少し前になりますが、世界的スポーツ用品メーカーの米ナイキ<NKE>も、東南アジアの工場における劣悪な労働環境下での低賃金・長時間・強制・児童労働が発覚し、社会の批判にさらされ、世界的な不買運動にまで発展しました。当然、同社は経営的にも大きな打撃を受け、以降、これを教訓としてESG対応に注力し、体制を整えていきました。

 このように、リスクにしかるべく対処・マネジメントを行い、逆にチャンスと捉え、変化することができれば、その企業の持続可能な成長につながります。

 投資家もこうした社会的リスクを考慮し、適切に対応を行っている企業に投資をしていくことが、パフォーマンスにも影響するものと見ています。それを見極める指標となるのが「ESG」なのです。

情報提供:株式会社グッドバンカー

(2021年12月24日 記/次回は2022年1月29日配信予定)

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