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【市況】【杉村富生の短期相場観測】 ─反騰相場の波に乗るテーマ&銘柄群

経済評論家 杉村富生

「反騰相場の波に乗るテーマ&銘柄群」

●金融政策の転換は“冷や酒”のようなもの?

 利上げは好材料? 現状はそうなっている。それだけインフレが怖いということか。FRBは先のFOMCにおいて、テーパリング(資産買い入れ額の縮小)の規模を月間300億ドル(従来は同150億ドル)と倍増させた。テーパリングは2022年6月末終了予定が3月末に前倒しされる。

 1回目の利上げはその後になる。5月が有力だが、22年中に3回、23年に2回の利上げが計画(予想)されている。コロナショックに対応した猛烈な流動性の供給、ゼロ金利政策が終了する。世界は日本を除き、“高金利”時代を迎える。この潮流は長期的には株式市場に大きな変化をもたらすだろう。

 イングランド銀行(イギリス中央銀行)は予想に反し、政策金利を0.1%→0.25%に引き上げた。やはり、株価は上昇している。FRB、イングランド銀行ともに、変異株「オミクロン」のパンデミックによる景気失速よりもインフレ抑制を優先した格好だ。バイデン大統領、ジョンソン首相の支持率は低迷している。

 両国の金融政策転換は政治的な判断だろう。中央銀行の独立性など、そもそも存在しない。議長、総裁の人事権は政府が持っている。パウエル議長は前のトランプ大統領が任命した人物だが、バイデン大統領は再任に際し、「雇用よりも物価に軸足を移せ」と条件をつけた。この要請に応えている。素直な性格である。

●EV、DX、メタバース関連に妙味あり!

 さて、株式市場は一連の金融政策の転換をものともせず、堅調だ。16日の日経平均株価は606円高と急騰、2万9000円台(大引けは2万9066円)を奪回した。まあ、驚くことではないが、抜群に強い。売り方は焦っているだろう。もちろん、これは想定シナリオ通りの展開である。22年相場の前倒しとの見方ができる。

 需給面(12月第2週の主体別売買動向)では公的年金の信託銀行が8週連続の買い越し、事業法人(自社株買い)、投信が買い越している。外国人(現物)は5週連続の売り越しだが、先物は5034億円の買い越し(前の週は7059億円の売り越し)。売りポジションの修正(巻き戻し)を急いでいるのだと思う。

 物色傾向はどうか。まず、外部環境の変化に負けない強い収益力を有する企業群が狙い目となろう。具体的にはトヨタ自動車 <7203> 、日本M&Aセンター <2127> 、イビデン <4062> 、伊藤忠テクノソリューションズ <4739> 、岩谷産業 <8088> 、ベネフィット・ワン <2412> など。

 来期(22年度)大幅増益の視点ではディップ <2379> 、コムチュア <3844> 、古河電気工業 <5801> 、日本電子 <6951> 、共立メンテナンス <9616> 、ラウンドワン <4680> 、日本製鋼所 <5631> 、TIS <3626> などに妙味があろう。

 テーマ的にはどうか。増産に転じているアップル<AAPL>を顧客として抱えるデクセリアルズ <4980> 、NISSHA <7915> 、EV(電気自動車)関連の田中化学研究所 <4080> [JQ]、日本電解 <5759> [東証M]、 メタバース関連のイー・ガーディアン <6050> 、CRI・ミドルウェア <3698> [東証M]などに注目できる。

 このほか、旺盛なデジタル投資需要を背景にDX(デジタルトランスフォーメーション)関連のホットリンク <3680> [東証M]、シンプレクス・ホールディングス<4373>、ALBERT <3906> [東証M]、デジタル証券分野への進出を狙う青山財産ネットワークス <8929> [東証2]などは妙味十分だろう。

2021年12月17日 記

株探ニュース

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