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【特集】日ピストン Research Memo(8):2031年3月期に非自動車エンジン売上高比率40%以上を目指す(2)

日ピス <日足> 「株探」多機能チャートより

■日本ピストンリング<6461>の成長戦略

3. 重点施策
第八次中期経営計画では「Change as Chance ~変化の中にこそチャンスあり~」を掲げ、行動指針として「新しい5S」(変化に対応できる「Speed」、戦略を立案し実行できる「Skill」、データに基づき科学的に判断できる「Science」、組織を良くしたいという熱意「Spirit」、安心安全な環境と心構え「Safety」)を挙げている。

また重点施策としては(1) 全体最適なモノづくりシステムの構築、(2) コア技術・製品によるソリューション提供型開発営業の推進、(3) 新製品事業開発・創出の強化、(4) 人と組織の構造改革(意識改革)、(5) サステナブル企業への躍進、の5つを掲げている。

(1) 全体最適なモノづくりシステムの構築
原材料調達から市場情報まで含めたサプライチェーン全体を意識して、ボトルネック排除による整流化、工程ごとの部分最適から全体最適の追求、需要に連動した生産と供給を推進することで、リードタイム短縮や在庫削減を図り、収益を極大化する生産体制の構築を目指す。これに関連して、2020年10月に実施した機構改革では、グローバル調達部を新設している。

(2) コア技術・製品によるソリューション提供型開発営業の推進
従来は営業部門と開発部門がそれぞれ顧客と折衝していたが、2020年10月に機構改革を実施し、開発営業部(国内営業を統括する開発営業第一部、海外営業を統括する開発営業第二部)に開発部門の技術折衝業務を移管し、一本化した。ピストンリングのフリクション低減やバルブシートの熱マネージメントなどの課題に対するソリューションを提供しエンジンの燃費低減に貢献する。さらにモデルベースデザインを確立し、設計評価を委託されるソリューションプロバイダーを目指す。

(3) 新製品事業開発・創出の強化
非自動車エンジン向け売上の拡大に向けて、電動化・ロボット事業、医療製品事業、モータ事業を中心に、コア技術を活用して、新製品・新事業の展開を推進する。特に産業機器分野のメタモールド製品の拡販、医療分野の新生体適合材料チタンタンタル合金「NiFreeT」の製品化・事業化を推進する。また、圧粉コアによるアキシャルギャップ型モータの開発などにも取り組んでいる。なお、2020年10月に実施した機構改革では、業務推進スピード向上のため、メタモールド事業推進部を新製品事業開発部に統合した。

(4) 人と組織の構造改革(意識改革)
環境変化に合わせて変われる企業体質、組織と人材の醸成を目指し、事業構造改革(グローバル視点の最適調達、製品改廃の推進、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進)、組織改革(国内子会社の合併、組織の新設・統廃合、監査等委員会設置会社への移行)、意識改革(働き方改革・ジョブ型への転換、オープンイノベーション、ダイバーシティの実現)を推進する。

具体的には、例えば意識改革については、IoTやRPA等の導入による業務効率化とともに、「働きがい」を高める働き方改革を進め、シニアや女性従業員の活躍支援や、働きがいをもって仕事ができる環境を整備することで、ワークエンゲージメントの向上につなげていく考えだ。

(5) サステナブル企業への躍進
SDGsへの取り組みについては、社会に存在する様々な課題の中から優先して取り組むべき重要課題として、地球環境との共生(製品を通じた環境貢献、事業活動における環境貢献)、ステークホルダーとの共生(顧客満足度向上、従業員の安全と健康、ダイバーシティの実現)、持続的な成長のための基盤醸成(人権尊重、コーポレート・ガバナンス、コンプライアンスの遵守)を特定し、持続可能な社会の実現に向けた活動を展開している。

具体的には、製品を通じた環境貢献では燃費1.5%向上に貢献する製品の開発、事業活動における環境貢献ではCO2排出量削減などに取り組んでいる。また2021年3月には、経済産業省及び日本健康会議が主催する「健康経営優良法人認定制度」において「健康経営優良法人2021(大規模法人部門)」の認定を受けた。これは、前年に続いて2回目の認定となる。さらに、コーポレート・ガバナンス強化の取り組みとして2020年6月に指名・報酬諮問委員会を設置、2021年6月に監査等委員会設置会社へ移行した。

このほか、2021年8月には原材料にコバルトを使用しない「コバルトフリーバルブシート」を開発した。これまでバルブシートの材料には、耐摩耗性向上を目的にコバルトが使われてきたが、コバルトは電気自動車の車載用電池に欠かせない原材料であるため市場価値が高騰してきていること、また、希少金属のため責任ある鉱物の調達という観点でリスクがある等、サステナビリティ面も含めて課題の多い資源であることが背景にある。「コバルトフリーバルブシート」の開発により、コバルトに依存することなく、従来と同水準の機能を確保できるようになった。同社は、本製品の拡販に努めるとともに今後も環境問題や人権その他の社会問題に対応し、サステナブルな社会の構築に向けて積極的な取り組みを続ける方針だ。

また、2021年10月にはサステナビリティ推進室を新設した。従来は、持続可能な環境・社会の実現に向けた各種取り組みをCSR推進委員会が中心に進めてきたが、その取り組みを一層強化するため、サステナビリティ関連業務の実行・管理に関する企画推進のための専門組織として、経営企画部内にサステナビリティ推進室を新設した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)

《NB》

 提供:フィスコ

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