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【市況】S&P500 月例レポート ― インフレ懸念が空前の上昇相場の脅威に浮上 (2) ―


●主なポイント

 ○S&P 500指数は、10月末の連続最高値更新の流れを維持したまま11月に突入しました。前月末の2営業日(10月28日と29日)に続いて、11月の1週目は全5営業日で終値での最高値を更新するという完璧なスタートを切り、翌週月曜日(8日)も最高値を更新して、最高値更新は8営業日連続となりました。8日連続での高値更新は1928年以降で5回目です。その後、市場では利益確定の動きも見られましたが続伸し、18日には再び最高値を更新して、年初来では66回目となり、1995年の77回に次ぐ過去2番目の記録となりました。この結果、S&P 500指数は過去1年間、終値での最高値を更新した日が毎月あったことになります。感謝祭の祝日後の月末3営業日は1%を超える変動が続き、オミクロン株への反射的な反応で2.27%下落、翌営業日は反発で1.32%上昇、そして最終日にはFRBのパウエル議長が議会証言でインフレの上昇とテーパリングの加速に言及したことで1.57%下落して月末を迎えました。

  ⇒S&P 500指数は11月に0.83%下落しました(配当込みのトータルリターンはマイナス0.69%)。10月は6.91%上昇(同プラス7.01%)、9月は4.76%下落(同マイナス4.65%)、過去3ヵ月では0.98%上昇(同プラス1.32%)、年初来では21.59%上昇(同プラス23.18%)、過去1年間では26.10%上昇(同プラス27.92%)しました。

  ⇒同指数は11月に7回、終値での最高値を更新しました(10月は5回、9月は1回、8月は12回、7月は7回、6月は8回、5月は1回、4月は10回、3月、2月、1月は各5回)。年初来の最高値更新は66回となり、2020年11月以降、終値での最高値を更新した日が毎月あったことになります(2020年10月はありませんでしたが、その前の9月と8月は最高値を更新)。

  ⇒コロナ危機前の2020年2月19日の終値での高値からは34.87%上昇し(同プラス38.80%)、その期間に終値ベースで85回、最高値を更新しました。

  ⇒バイデン大統領が勝利した2020年11月3日の米大統領選挙以降では、同指数は35.55%上昇(同プラス37.74%)しました(2021年1月20日のバイデン大統領就任後に64回、最高値を更新しています)。

  ⇒2020年3月23日の底値からの強気相場では104.12%上昇しています(同プラス109.64%)。

  ⇒同指数は、2021年11月18日に付けた終値での最高値である4704.54から2.92%下落して月を終えました。

 ○2021年第3四半期決算は予想が上振れる傾向が続いており、発表を終えた489銘柄中392銘柄(80.2%)で営業利益が予想を上回り、82銘柄で予想を下回り、15銘柄で予想通りとなりました。また、売上高では488銘柄中371銘柄(76.0%)で予想を上回りました。

  ⇒2021年第3四半期は、利益、売上高ともに過去最高を更新する見通しです。

  ⇒2021年第3四半期の利益は過去最高を記録した2021年第2四半期から0.2%の増益が予想されています。

  ⇒2021年通年についても過去最高益を更新する見通しで、前年比で65.2%の増益が見込まれ、2021年予想株価収益率(PER)は22.6倍となっています(2020年の利益は同22.1%減)。

  ⇒2022年の利益は2021年予想からさらに8.7%増と、過去最高益の再度の更新が見込まれ、2022年予想PERは20.8倍となっています。

  ⇒2021年第3四半期中に株式数の減少によって1株当たり利益(EPS)が大幅に押し上げられた発表済みの銘柄の割合は6.8%でした(第2四半期は7.4%、2020年第3四半期は9.6%、2019年第3四半期は22.8%)。

  ⇒2021年第3四半期の営業利益率は13.20%となり、過去最高となった第2四半期の13.54%からは低下しましたが、依然として高水準を維持しています(1993年以降の平均は8.12%)。

 ○2021年第3四半期に実施された自社株買いの97%以上について、内容が発表されました。第3四半期の自社株買いの総額は(2018年第4四半期の 2230億ドルを上回る)2320億ドルに達し、追加の自社株買いの報告が見込まれる中で四半期ベースでの過去最高を更新しました。第2四半期にも自社株買いを実施した同一銘柄の買い戻し額は19%増、2020年第3四半期との同一銘柄で比較すると132%増でした。株価が上昇しているために自社株買いの総額は増加しましたが、同時に企業が実際に買い戻す株式数も減少するため、EPSを向上させる株式数の減少には至っていません、その結果、第3四半期中に株式数の減少によってEPSが4%以上押し上げられた銘柄の割合は僅か7.4%でした(2019年第3四半期は22.8%)。

  ⇒注目すべき点として、バイデン政権は新たな提案の中で、企業の自社株買いに対する1%の課税を盛り込んでいます。

 ○議会では、3.5兆ドルの教育・気候変動・医療関連法案をめぐる妥協点の模索が急がれ、その後には1兆ドルのインフラ法案の採決が待っています。

  ⇒議会は2021年12月3日までの債務上限の一時的な引き上げと、同日を期限とするつなぎ予算を可決しました。これにより土壇場での交渉が再び行われ、ボラティリティが上昇することはほぼ確実です。

  ⇒バイデン大統領は、社会保障関連歳出法案(教育・気候変動・医療関連法案)について当初の3.5兆ドルから半減させた1.85兆ドル規模の修正案を発表し、主要20ヵ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席するため欧州へ出発しました(就任後の主要な外国訪問としては2回目)。大統領はスコットランドのグラスゴーで開かれる国連気候変動枠組条約第2 回締約国会議(COP26)にも出席しました。米国では気候変動関連法案がまとまっておらず、(バイデン大統領が大枠を示した)修正案をめぐって議会で交渉が続けられました。

  ⇒州知事選挙(2021年11月2日)を終え、議会は社会保障関連歳出法案とインフラ投資法案の同時採決を見送り、1兆ドルのインフラ法案を可決し、バイデン大統領が署名を行いました。

  ⇒下院では気候変動・教育・子育て支援を盛り込んだ1.75兆ドルの大型歳出法案(当初は3.5兆ドル規模だったが、その後1.75兆ドルに減額された)が民主党の路線に沿った形で可決され(賛成220、反対213。野党共和党は全員が反対に回った)、上院に送られることになりました(上院は議席数が民主党50、共和党50の同数となっており、議長のハリス副大統領の1票で法案の可否が決まる)。同法案に対する市場関係者の見方は分かれていますが、最終的には規模を縮小して可決されると見る向きが増えているようです。しかしながら、2022年まで成立がずれ込む可能性もあります。

●バイデン大統領と政府高官

 ○中間選挙については(2022年11月の選挙では下院は全議席、上院は3分の1の議席が改選対象となる)、2021年の選挙における共和党勢力の巻き返しや予想外のバージニア州知事選挙の結果(共和党候補の勝利)を受け、2022年の選挙戦はこれまでとは異なる展開を見せると思われ、争点も変わる可能性があります。

 ○バイデン大統領は欧州訪問(G20サミット、国連気候変動会議)を終え、(選挙結果を受けて)様相が一変したワシントンに戻ってきました。

 ○議会では新たに提案された(当初の3.5兆ドルから縮小された)1.8兆ドルの教育・気候変動・医療関連法案の審議が続いています。選挙結果を受けて、民主党内では党内対立が強まりました。また、法案通過には選挙戦での敗北が必要だとする声も一部で聞かれました。

  ⇒11月後半に、議会は1兆ドルのインフラ投資法案を可決し、バイデン大統領が署名しました。

  ⇒下院では気候変動・教育・子育て支援を盛り込んだ1.75兆ドルの大型歳出法案(当初は3.5兆ドル規模だったが、その後1.75兆ドルに減額された)が民主党の路線に沿った形で可決され(賛成220、反対213。野党共和党は全員が反対に回った)、上院に送られることになりました(上院は議席数が民主党50、共和党50の同数となっており、議長のハリス副大統領の1票で法案の可否が決まる)。

 ○米国(労働安全衛生局)は、2022年1月4日までに従業員100名以上の民間企業に対して、従業員に新型コロナワクチンの接種もしくは週1回の定期的な感染検査を義務付けることを指示しました(全米労働者の3分の2が今回の措置の対象となる)。

  ⇒連邦控訴裁判所はこの従業員に対する義務化措置の一時的な停止を命令しました。

 ○米国は31ヵ国を対象に、ワクチン接種を済ませたかコロナ検査で陰性証明を受けた海外からの旅行者に対して(2020年2月から導入されていた)渡航制限を解除しました。

  ⇒11月下旬になって、オミクロン株に対応するために、新たな制限措置が導入されました。

 ○バイデン大統領は中国の習近平国家主席とオンライン形式での首脳会談を行いました。両首脳は、3時間を超える会談を両国間の緊張を緩和する機会だと指摘しました。

 ○米国とその他の国(中国、日本、英国)は原油価格とインフレの抑制を目指し、戦略石油備蓄を放出すると発表しました。米国は(6億500万バレルの総備蓄量から)5000万バレルを放出することを決定しました。

 ○バイデン政権は新たな変異株であるオミクロン株に対応するために、8ヵ国からの入国を制限する措置を導入しました。

※「インフレ懸念が空前の上昇相場の脅威に浮上 (3)」へ続く

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