市場ニュース

戻る
 

【特集】エノモト Research Memo(9):目玉の津軽工場、期待広がる燃料電池部品

エノモト <日足> 「株探」多機能チャートより

■中期経営計画と進捗

3. 中期経営計画の進捗
(1) 津軽工場の進捗
投資の中で最重要なのが津軽工場の増築投資である。1stSTEPにおける津軽工場の増築投資は、短中期的にはコネクタ中心の増強による収益確保から成長という点で重要であり、長期的にはスマートファクトリー化による全社的収益性の改善という点で重要である。つまり、スマートファクトリー化により金型製作の自動化やプレス~メッキ~成形~組立の一貫生産体制の強化が進んで津軽工場のコストが低減し生産性が向上すれば、2ndSTEP以降にほかの内外工場にスマートファクトリーのノウハウを横展開していく考えだからである。このため、2022年3月期の設備投資は、津軽工場の増築を中心に中期経営計画全体の3分の2程度が投じられる計画になっている。このようにエノモト<6928>成長のキーファクトリーである津軽工場の増築エリアは、当初計画どおりに2021年11月末に竣工、年明けの2022年1月の稼働に向けて準備段階に入った。

(2) 燃料電池部品の進捗
提携企業との守秘義務などからこれまでニュースの少なかった燃料電池部品だが、中量生産体制の構築あたりからニュースが増えてきた。順調に進捗する同社技術への自信の表れと、燃料電池全般の技術の整理が進んできたことが背景にあると考えられる。今般、NEDOによる共通課題解決型産学官連携研究開発事業の採択プロジェクトに指定された。いくつかあるプロジェクトには競合するもの、協働すべきものがありそうだが、そうした情報の交換や提携の深化、参画企業との新たな協働など、NEDO採択プロジェクトのメリットは大きそうだ。中でも同社の燃料電池部品は実用化の面で先行している模様で、2021年5月に山梨大学で実施された「燃料電池電動アシスト自転車試作機完成披露式」において、日本で初めて制作された国産燃料電池を電源とする電動アシスト自転車に同社製「ガス拡散層一体型セパレータ」が搭載され、山梨県知事である長崎幸太郎氏が試乗した。もちろんメインターゲットはFCVであり、EVやドローン、緊急電源、エネファームなどへの応用範囲の拡大だが、実際に人が乗って動くという点で重要な進展と言えよう。以上のように、津軽工場や燃料電池部品を含め、同社の事業自体が脱炭素社会の実現に向けた世界の動きのど真ん中をかけ抜けることになるため、同社の中期経営計画の進捗に期待したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《ST》

 提供:フィスコ

株探からのお知らせ

    日経平均