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【市況】国内株式市場見通し:引き続き外部環境に一喜一憂の展開

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより

■海外要因や国政期待のはく落から記録的な下落

今週の日経平均は3週連続で続落。9月ISM製造業景況指数が予想外に改善したことに加え、製薬大手メルクが開発中の新たな新型コロナウイルス治療薬への期待から、前の週末の米株式市場は上昇していた。これを受けて週明けの東京市場も反発して始まったが、すぐに失速すると下げ幅を拡げる展開となった。米連邦政府の債務上限問題など外部環境の不透明感がくすぶる中、香港取引所が経営不安に陥っている中国恒大集団の株式売買を停止すると発表したことが投資家心理を悪化させた。また、岸田新内閣の顔ぶれに「期待外れ」との声も聞かれ、週明けの日経平均は326.18円安となった。

5日、6日の日経平均は622.77円、293.25円とそれぞれ下落。産油国の「OPECプラス」会合で大幅増産が回避され、NY原油先物が7年ぶりの高値を付けたことなどを受けて、インフレ加速や長期金利上昇に対する警戒感が高まった。また、国内では岸田文雄首相が金融所得課税の見直しを検討すると明言したことなども売りを誘った。日経平均の8日続落は2009年7月以来12年ぶりで、この間の下げ幅は2700円あまりに達した。

7日の日経平均は149.34円高と9日ぶりに反発し、週末8日も370.73円高と続伸した。米共和党が連邦政府の債務上限について12月まで一時的に拡大する案を示し、これが合意に至ったことで投資家心理が改善した。また、ロシアのプーチン大統領が天然ガスの供給増加を示唆したことで天然ガスや原油等のエネルギー価格が低下し、これに伴い長期金利の上昇が一服したことも安心感につながった。米国株が反発基調を強めたことに伴う安心感から東京市場でも買い戻し機運が高まった。また、週末は国慶節明けの中国市場が上昇して始まったことも安心感を誘った。ただ、米雇用統計の結果を前に様子見ムードも強く、後場は上げ幅を縮める展開となった。それでも6日安値27293.62円からは800円近く上昇し、28000円を回復して週を終えた。

■インフレや長期金利の動向に警戒

来週の日経平均は一進一退か。引き続き米中にまつわる不透明感など海外要因に左右されそうだ。

米連邦政府の債務上限問題は12月まで一時的に棚上げされ、目先の債務不履行(デフォルト)リスクは後退したが、解消されたわけではない。中国の不動産業の資金繰り問題も今後も折に触れ話題になることはほぼ確実。中国経済に占める不動産業の割合は大きいため、実体経済の下振れリスクはくすぶる。

さらに、中国のほか欧州などで世界的に広がっている電力不足の問題にも警戒が必要だ。世界が同時期に一気に脱炭素の動きにシフトした弊害として、石炭、天然ガス、原油などのエネルギー価格が高騰していることが背景にある。ロシアのプーチン大統領が天然ガスの供給増加を示唆したことで価格高騰が落ち着く動きも見られているが、在庫が少ないまま電力消費が増える冬場を迎えるリスクは払しょくできていない。エネルギー価格の高騰は企業業績の下押し圧力となりかねない。

さらにインフレや長期金利の動向にも警戒が必要だ。9月の米雇用統計では人手不足のなか雇用のミスマッチが続き、雇用者数の伸びが市場予想を大きく下回った一方、失業率は改善し、賃金も予想以上に伸びた。エネルギー価格の高騰長期化や構造的な賃金上昇はインフレを一過性のものから長期的なものに変える恐れがある。米10年国債利回りも4カ月ぶりに1.6%台まで上昇した。来週は米国で物価指標が発表予定であり、インフレへの思惑や長期金利の動向には警戒したい。

他方、衆院選は31日投開票と決まった。岸田新政権に対する海外からの評価は厳しく、9月第5週の東京証券取引所発表の投資主体別売買動向によると、海外投資家は現先合算で1兆円4000億円以上も売り越していた。また、組閣後の内閣支持率は歴代政権の中で低く、国内でも評価は決して高いとは言えない。野党との支持率の差が大きいため、衆院選での与党大敗というシナリオは考えにくいが、衆院選投開票日までは株高になりやすいというアノマリーには期待しにくくなった。

■ファストリや良品計画に注目、安川電機の株価反応も

小売業中心に6-8月期決算が終盤に入る。14日には日経平均への指数インパクトが強いファーストリテイリング<9983>の本決算が予定されている。直近の月次動向から株価は軟調が続いているが、22年8月期見通しを受けた株価反応に注目したい。また、良品計画<7453>の本決算にも注目だ。7月には意欲的な中期経営計画を発表しており、22年8月期の見通しへの期待が高まる。製造業では安川電機<6506>が良好な上半期決算を発表し、第1四半期に続き通期計画を上方修正してきた。サプライチェーンの乱れなどが警戒されていた中、製造業の7-9月期決算への不安がやや払しょくされ、ポジティブに捉えられる。株価が素直に反応するか持続性とともに注目したい。

■FOMC議事録、米9月CPI、米9月小売売上高など

来週は11日に9月工作機械受注、世銀・IMF年次総会、12日に9月企業物価指数、独10月ZEW景況感指数、13日に8月機械受注、中国9月貿易収支、米9月消費者物価指数(CPI)、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(9月開催分)、G20財務相・中央銀行総裁会議、14日に中国9月生産者物価指数(PPI)、中国9月CPI、米9月PPI、15日に米9月小売売上高、米10月ニューヨーク連銀景気指数などが予定されている。

《FA》

 提供:フィスコ

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