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【市況】植草一秀の「金融変動水先案内」 -長期大相場のゆくえ-

植草一秀(スリーネーションズリサーチ株式会社 代表取締役)

第68回 長期大相場のゆくえ

●長期大相場

 昨年2月以降、コロナ騒動が拡大して世界の株価が急落しました。未知の感染症のパンデミックが発生し、世界中が恐怖に包まれました。株価は各国で暴落。中国を除いて3割から5割の急落が生じました。しかしながら、株価調整は瞬時に大底を確認しました。米国のトランプ大統領(当時)とパウエルFRB議長が果断に大規模な財政金融政策発動を決定したことが、事態改善の契機になったのです。

 通常、株価急落は第1波、第2波、第3波が津波のように押し寄せることが多いのですが、コロナ暴落においては第1波が最大波となって、その後はほぼ一本調子の株価反転となりました。巨大な財政金融政策の発動が契機になったことは事実ですが、金融市場がコロナ騒動の本質を見抜いたことが大きかったように思います。

 コロナ騒動の本質とは、コロナが「恐怖の感染症」ではないという点にあります。国によって被害状況に大きな差があるのですが、少なくとも日本におけるコロナ被害は関連死を含めた死者数で比較する以上、通常の季節性インフルエンザと大差がないものになっています。

 金融市場は冷静かつ正確にコロナの本質を見抜いてきたように思います。コロナ暴落は一過性の現象に終わり、世界的に株価は2009年のリーマン危機後の安値からの長期大相場の延長線上に回帰したことになります。

●転換点が近付く

 私が執筆している会員制レポート『金利・為替・株価特報』では、日経平均株価が2015年、2018年に類似した一時的反発を演じる可能性が高いことを指摘してきました。直近の日経平均株価は8月20日から9月14日まで急反発したのち、今度は急反落しました。2015年も、2018年も、下落傾向が持続したあとに株価が急反発し、その後は再度下落に転じました。想定したような株価高値波乱状況が生じています。

 他国の株価推移を比較すると、本年2月から8月にかけての日本の株価下落は日本固有のものでした。菅内閣のコロナ対応が失策を重ねてきたことを反映する日本株価の軟調推移だったように思います。この間も他の主要国株価は堅調な推移を示したのです。

 筆者は8月23日付のブログ記事に日本のコロナ感染ピークアウトの可能性を指摘しました。実際に日本のコロナ新規陽性者数は8月20日にピークを記録して、その後は驚くほどのスピードで減少しました。新規陽性者数の急激な減少でコロナ騒動が目先の峠を超えたとの観測が強まり、これが株価上昇を支えました。

 そのタイミングで菅義偉首相が9月3日に辞意を表明したのです。辞意表明を受けて株価反発は加速して、9月14日の高値を記録しました。ところが、その後に日本株価は急反落しました。株価急反落の要因は2つです。1つはFRB金融政策の重要な変化。もう1つは中国エバーグランデ(恒大グループ)の経営危機の拡大です。実は9月半ばからの株価下落は世界的にほぼ連動しています。日本株価が出遅れを取り戻したタイミングで世界株価の下落要因の影響を受けたと見ることができます。

●2つのリスクファクター

 9月21-22日のFOMCで、FRBは金融引き締めの方向感を明確に打ち出しました。量的金融緩和をどのようなペースで実施するのかについての市場の関心が強かったのですが、この点についてパウエルFRB議長は、2022年半ばまでに量的金融緩和の縮小を終了させる方針を示唆しました。テーパリング終了は22年末になるとの市場観測より積極的な金融緩和縮小姿勢をパウエル議長が示したのです。

 金利見通しでは、22年末まで利上げなしが、22年に利上げ開始に修正されました。かなり思い切った金融引き締め方針の提示になったわけで、株価急落の反応が生じてもおかしくはない状況でした。

 しかし、FOMCが見通しを提示した9月22日のNYダウは上昇して引けました。パウエル議長が金融市場の信頼を獲得していることが示されたと言えます。それでも、その後、米国をはじめ世界の株価は下落傾向を強めました。米国金融政策の方向転換が株式市場にとっての警戒要因であることが改めて確認された次第です。

 もう1つの不安要因が恒大グループの経営危機の表面化です。33兆円の負債を抱える企業が破綻すれば、影響は深刻なものになるでしょう。新たな金融危機を警戒する声が広がってきました。恒大グループは社債利払いを履行する方針を表明しましたが、市場の疑心暗鬼は残存しています。香港市場での株式取引停止措置も多くの観測を生む要因になっています。

●一筋縄で対応できない局面

 恒大リスクは単なる一企業の問題でなく、中国全体の不動産バブル崩壊に伴う金融危機の一断面になります。類似した問題が多発することが警戒されているのです。中国政策当局は中国不動産価格の高騰を背景に、1990年代以降の日本の不良債権問題についての研究を重ねてきたと見られます。

 2022年は習近平主席の3期目政権運営への移行の可否を決する共産党大会が開催される年です。習近平氏にとって金融市場の大崩落回避は、最重要の政策課題になっているはずです。ただし、その一方で、習近平氏は中国経済の格差拡大の是正を最重要政策課題に位置づけています。中国において資本主義が最も先鋭化して究極の格差拡大が生じている現実に、習近平氏は正面から取り組む意思を表明しています。

 このことから、政府による問題企業の単純な救済はあり得ないと考えられ、そのため中国不良債権問題に対する金融市場の不安が広がっているのです。

 FRBによる金融政策の方向転換と中国企業の破綻処理進展が金融市場の2大警戒要因になっていると言ってよいでしょう。これらのことから筆者は株式市場の動向に強い警戒感を保持すべき局面であると判断しています。とはいえ、過剰流動性が残存しているため、株価急落後の反発力が強いことも事実です。波乱相場を前提に戦術を構築することが必要な局面です。

(2021年10月8日 記/次回は10月23日配信予定)


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