【通貨】為替週間見通し:ドルは底堅い動きか、インフレ指標が手掛かり材料に
米ドル/円 <日足> 「株探」多機能チャートより
【今週の概況】
■米インフレ懸念でドルは下げ渋る
今週のドル・円は下げ渋り。9月8日発表の7月米JOLT求人件数は過去最高を記録したことを受けて、8月13日以来となる110円45銭まで買われた。しかしながら、新型コロナウイルスの感染再拡大などの影響で米国経済の減速が警戒されたことから、リスク選好的なドル買いは縮小。9日に109円62銭まで反落する場面があった。
10日のニューヨーク外為市場でドル・円は、109円80銭から109円95銭まで戻した。この日発表された8月米生産者物価指数(PPI)は、前年比+8.3%、同コア指数は前年比+6.7%で上昇率は比較可能な2010年11月以降で最高を記録した。インフレ率の高止まりを意識してドル買いが再び優勢となった。メスター米クリーブランド連銀総裁が「デルタ株リスクが存在するものの経済への影響は限定的」との見方を示したことも、ドル買い材料となった。ドル・円は109円90銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:109円62銭-110円45銭。
【来週の見通し】
■ドルは底堅い動きか、インフレ指標が手掛かり材料に
来週のドル・円は底堅い値動きか。市場参加者の間では、今年の米経済成長見通しを引き下げる動きが広がっている。米国経済の早期正常化への期待は弱まりつつある。8月非農業部門雇用者数は予想を大きく下回るなど、雇用情勢が改善しているとは言い切れない部分もある。ただ、今月21-22日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)に向け、インフレ指標が高水準なら、量的緩和策の早期縮小観測が広がり、リスク選好的なドル買いが強まりそうだ。
来週発表される経済指標では9月14日発表の消費者物価コア指数(CPI)が有力な手掛かり材料となりそうだ。米連邦準備制度理事会(FRB)は、インフレ高進は一時的との見解を変えていないが、参考指標となる8月生産者物価コア指数は市場予想を上回った。8月消費者物価コア指数が7月実績並みの水準(前年比+4.3%)だった場合、金利先高観はやや強まり、ドル買い材料になるとみられる。また、16日発表の8月小売売上高が改善すれば、景気減速懸念は後退し、量的緩和策の早期縮小を想定したドル買いが強まる可能性がある。米国株式の上昇は一服しているが、8月小売売上高などの経済指標が改善した場合、米国株式はしっかりとした値動きを見せる可能性があるため、株高を意識したドル買い・円売りが増えることも予想される。
【米・8月消費者物価コア指数(コアCPI)】(14日発表予定)
14日発表の米8月消費者物価コア指数(コアCPI)は、7月の前年比+4.3%と同水準となる可能性がある。インフレ高進は一時的と見方がFRBの公式見解だが、市場予想に沿った内容なら引き締め期待のドル買いに振れやすい。
【米・8月小売売上高】(16日発表予定)
16日発表の8月小売売上高は、7月実績の前月比-1.1%との比較でやや改善する見込みだが、前月比プラスとなる可能性は低いとみられている。市場予想を下回った場合、経済正常化への期待は後退し、ドル売り材料となる。
予想レンジ:108円80銭-111円00銭
《FA》
提供:フィスコ