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【特集】プラチナはドル高で一段安、コロナ感染拡大で景気回復の行方が焦点に <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は、米金融当局者のタカ派発言によるドル高などを受けて軟調に推移した後、米雇用統計をきっかけに急落し昨年11月以来の安値961ドルをつけた。しかし、1000ドル割れの水準は売られ過ぎとの見方から実需筋の買いなどが入って下げ一服となった。

 新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大などを受けて米ミシガン大消費者信頼感指数が大幅に低下し、景気の先行き懸念が出ている。欧米諸国はワクチン接種が進んだことからコロナウイルスとの共生路線を採っており、回復が続くのかどうかが当面の焦点になりそうだ。また、米議会でインフラ投資法案の協議が進んでおり、同法案が成立し労働市場の回復期待が高まるかどうかも確認したい。

 7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、新型コロナ感染者は増加したが米経済の回復は順調との見方が示された。ただ、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は利上げ検討は程遠いとし、量的緩和の縮小(テーパリング)について、具体的な時期は示さず慎重姿勢を継続した。

 一方、7月の米雇用統計が予想以上に改善したことでテーパリングの前倒し観測が出ている。同統計で非農業部門雇用者数は前月比94万3000人増加し、事前予想の87万人増を上回った。前月の93万8000人に続く伸びとなり、サービス業の労働需要が高まった。米アトランタ地区連銀のボスティック総裁はあと1~2ヵ月間、雇用の力強い伸びが続けばテーパリングを開始できるとの見方を示した。

 ただ、新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大を受けて消費者心理が悪化している。8月の米ミシガン大消費者信頼感指数速報値が事前予想の81.2を大幅に下回る70.2と約10年ぶりの低水準となった。7月確報値である81.2からも大きく低下している。米国ではワクチン未接種者が多い州での感染拡大が目立っている。米政府はワクチン接種やマスク着用を義務付け、ブースター接種(3回目の接種)の方針を示しており、感染拡大が抑制されるかどうかを確認したい。

 感染拡大の影響で今後発表される経済指標に陰りが見られれば、リスク回避の動きが出てプラチナの上値を抑える要因になる。ただ、中長期の景気回復見通しに変わりがなければ安値では買い戻されることになりそうだ。26~28日にはジャクソンホールで開かれる年次経済シンポジウムでパウエル米FRB議長の講演が予定されている。テーパリング実施について具体的な見通しが示されるかどうかも確認したい。

●米上院で1兆ドル規模のインフラ投資法案が可決

 米上院は10日、超党派による1兆ドル規模のインフラ投資法案を賛成69、反対30の賛成多数で可決した。また、米上院は気候変動などに対応した3兆5000億ドル規模の財政支出法案について審議入りを承認した。ただ、米上院のジョー・マンチン議員(民主党)は、賛成はしたものの、財政支出法案について「深刻な懸念がある」との見方を示している。

 一方、米下院では民主党の穏健派9議員がインフラ投資法案が成立するまで財政支出法案の予算決議を支持しない意向を表明した。米下院では23日に予算決議を巡る審議が開始される予定となっている。インフラ投資法案や財政支出法案が成立すれば米経済の回復期待が高まり、リスク選好の動きになるとみられ、今後の協議の行方を確認したい。

●プラチナは先物市場で大口投機家の売り圧力が強まる

 プラチナETF(上場投信)残高は8月13日の米国で39.45トン(6月末39.93トン)、12日の英国で19.51トン(同19.58トン)、13日の南アフリカで14.96トン(同15.87トン)となった。米FRBのテーパリング見通しや新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大を受けて投資資金が流出した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、8月10日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは5819枚となり、7月13日の1万5361枚を目先のピークとして縮小した。新規売りが新規買いを上回り、2019年6月以来の低水準となった。当面は買い戻す動きが出るかどうかを確認したい。

 プラチナの内部要因では、価格が急落するなか、上海プラチナの出来高増加とニューヨークの指定倉庫在庫の減少で実需筋が安値拾いの買いや買い戻しに動く一方、先物市場でテクカル面での悪化を背景とした短期筋の新規売りが目立った。ただ、中国ではデルタ株の感染者が確認されると、ロックダウン(都市封鎖)を再導入し、全住民にPCR検査を実施している。ゼロ感染を目指し徹底的に管理しており、実需筋は安値拾いの買いに動いても戻り高値を買い進む向きは少ないとみられる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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