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【市況】植草一秀の「金融変動水先案内」 -日本株価の下降トレンド-

植草一秀(スリーネーションズリサーチ株式会社 代表取締役)

第63回 日本株価の下降トレンド

●日本株価下落

 日経平均株価は2月16日を境に下降トレンドを描いています。この前日、昨年第4四半期のGDP統計が発表されました。コロナショック後に日本経済が回復した姿が示されたのです。日経平均株価は3万0714円まで上昇しました。昨年3月のコロナ急落から1万4356円、87.8%の急騰を演じました。

 しかし、この日を境に日経平均株価は下降トレンドに転換しました。株価下落の要因を3つ挙げることができます。第1は相場の成熟。相場変動にはリズムがあります。急激な上昇で高値警戒感が増大しました。第2は菅内閣の政策対応の迷走。コロナ対策での右往左往が日本経済に負の影響をもたらしています。第3は金融環境の変化。コロナショック後の株価急騰の主因は過剰流動性にありました。この過剰流動性に重要な変化の兆候が生じ始めたのです。

 筆者は会員制レポート『金利・為替・株価特報』で右肩下がりのボックス相場への移行を予測してきました。その予測通りの株価推移が生じています。菅内閣は東京五輪の開催を最優先して、緊急事態宣言を発出しながら五輪開催を強行しました。五輪騒ぎで内閣支持率の浮上を狙っているのだと思われますが、この強硬策がコロナ感染爆発という付随的な結果をもたらしました。

 五輪を開催するのに飲食店に時短営業、個人に外出抑制が要請されていますが、そのために経済活動が急激に低下する弊害が拡大しています。

●感染爆発の原因

 7月29日の新規陽性者数は東京都が3865人に、全国で1万699人に達しました。菅内閣は7月12日に緊急事態宣言を発出しましたが、人流拡大にまったく歯止めがかかっていません。五輪開催が市民の行動抑制のたがを外してしまいました。7月22日からの4連休は感染拡大地である首都圏から全国各地への旅行が野放しにされました。8月中旬以降、全国で新規陽性者数が爆発的に拡大することになるでしょう。

 酒類提供・深夜営業を続ける飲食店が大繁盛するなか、こうした抜け駆け事業者に対する締め付け策が破綻し、多数の飲食事業者が酒類の提供、深夜営業を再開しています。市民も五輪が開催されるのに外出自粛が要請されるのは理不尽と判断して行動抑制を放棄しています。

 人流拡大が感染爆発をもたらす主因になっています。五輪開催の強行が行動抑制放棄の号砲になったため、感染を抑制する方策が消滅しています。

 新規陽性者数がこのペースで拡大すると、当然のことながら医療逼迫が生じます。発症しても入院できず命を失う事例が多発することが予想されます。五輪のお祭り騒ぎが一段落する時点で、感染爆発に対する菅首相の責任が厳しく追及されることになるでしょう。

 米国株価は堅調な推移ですが、日本株価の低迷が際立っています。日本のマザーズ指数は日経平均株価に先行して昨年10月から下降トレンドを描いています。

●救世主にならないワクチン

 菅首相は「ワクチンが切り札」と述べますがワクチンは切り札になりません。7月16日までの時点でワクチン接種後急死者数が751人報告されています。接種人数は4000万人程度と見られます。ワクチン接種後に重篤な状態に陥った人は7月11日時点で2858人。接種人数は3760万人です。接種後重篤化率は0.0076%です。

 若年の健常者がコロナで重篤化する確率は極めて低く、この人々がワクチン接種による重篤化のリスクを冒してまで接種に踏み切る合理的な理由が見当たりません。

 医薬品に副作用は付きものですが、発症者がリスクを取ることには合理性があります。副作用のリスクよりも疾病を放置するリスクが大きいからです。しかし、健常者がリスクの大きなワクチンを接種することには合理性を認めにくいのです。政府の施策として、ワクチンでない治療薬の開発、利用を推進することが、あらゆる面で適正であると考えられます。この意味で、優良な治療薬の開発が株式市場において非常に重要性の高いテーマになると考えられます。

 日本では、今秋にかけてコロナ感染拡大に伴う混乱が経済面だけでなく政治面でも最重要事項になると思われます。菅首相は五輪のお祭り騒ぎと大型経済対策策定で衆院総選挙を乗り切る算段と思われますが、その帰趨を占う意味で五輪終了後の内閣支持率調査が注目されることになります。

●注目されるパウエル講演

 もう1つの重要テーマが米国金融政策です。6月のFOMCで2023年度中の利上げ見通しが示されました。超金融緩和政策が2023年末まで維持されるという、これまでのシナリオが修正されました。予兆は3月のFOMCからありました。想定通りの見通し修正になったわけですが、その修正が9月のFOMCで加速する可能性があります。

 FRBの金利見通しはFOMC各参加者の見通しを集計したものです。9月のFOMCで2022年末までに利上げを実施する見通しを示すメンバーが2人増えるとFRBの見通しが変更されます。2022年中の利上げ実施見通しが示されると金融市場は大きく反応することになるでしょう。9月のFOMCは21-22日に開催されます。

 その前の8月26-28日にワイオミング州ジャクソンホールで恒例の年次経済シンポジウムが開かれます。風光明媚な避暑地での夏季シンポジウムですが、ここでパウエルFRB議長が講演します。量的金融緩和の縮小=テーパリングの詳細が講演のなかに盛り込まれるのか。金融市場が関心を強めることになるでしょう。

 肝心のコロナですがワクチン接種が一巡すると様相が変化する可能性があるでしょう。そもそも、この騒動はワクチン利権のために演出されているとの見立てを否定し切れないのです。コロナのためのワクチンではなく、ワクチンのためのコロナというのが真相=深層ではないか。こんな推察もあながち否定できません。その場合には、徐々にコロナの雲は薄れてゆくことになります。中期の見通しとして頭の片隅に置いておくべきでしょう。

(2021年7月30日記/次回は8月14日配信予定)


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