【市況】【村瀬智一が斬る!深層マーケット】 ─こう着相場は継続か、需給良好な銘柄に短期資金が集中しやすい
RAKAN RICERCA 代表取締役 会長 村瀬智一
「こう着相場は継続か、需給良好な銘柄に短期資金が集中しやすい」
●きっかけ待ちの市場、小売り・ハイテク株の動向には警戒
日経平均株価は6月21日の急落、その後の切り返しによって目先底を確認した格好だが、節目の2万9000円突破には、現在の薄商いの需給状況ではエネルギー不足といったところである。新型コロナウイルスのワクチン接種は加速しており、経済活動の正常化期待が高まる一方、変異株の新規感染者が増え、東京都などを対象とした4回目の緊急事態宣言の発出も懸念されて手掛けづらくさせている。
一方、米国では足元で長期金利が低下傾向にあり、テーパリング(量的緩和の縮小)の時期については、早くとも2022年後半から23年前半との見方がコンセンサスである。また、経済指標の発表を受けた米国市場の反応も、景気回復といったポジティブ面を材料視しており、センチメントは良好である。ただし、東京五輪を巡る不透明感なども投資家心理を神経質にさせており、こうした状況が東京市場へ参入しづらくする要因となっている。VIX指数の低下傾向などリスク選好の状況の中、積極的にショートを積み上げる動きもなく、市場はきっかけ待ちの状況にある。
来週以降は 小売りを中心に決算発表が増えてくる。小売り、なかでもコロナ禍が追い風となった業界については、前年同期の反動が相当大きいと見られる。これは予想されたことではあるが、週末のワークマン <7564> [JQ]の急落を見る限り、同様の動きが広がる状況には注意が必要だろう。また、米国ではマイクロン・テクノロジー<MU>が予想を上回る決算ながらも、材料出尽くしで大きく下落していた。東京市場でもレーザーテック <6920>あたりが利食いの対象になっているようだが、こうした動きがさらに強まるかを見極めたいところだ。そのため、物色としては材料系の銘柄のほか、中小型株の中で需給状況が良好な銘柄により短期資金が集中しやすいと考えられる。利食いが懸念されるハイテク株については、リバランスを想定し、相対的に出遅れている銘柄を選好したい。
●来週の活躍期待「注目5銘柄」
◆OBARA GROUP <6877>
自動車業界向け抵抗溶接機器の最大手。半導体向け平面研磨装置なども展開。足元ではアジア地域での業績が堅調に推移している。自動車業界では設備投資や生産活動が回復傾向にあり、下期業績の上振れも意識されやすい。株価は6月前半の戻り高値4085円をピークに調整を見せていたが、3700円処での底固めを経て、上値抵抗線の25日移動平均線を捉えてきた。6月高値ならびに1月につけた年初来高値を窺う展開に期待。
◆JMDC <4483> [東証M]
保険事業支援サービスや健康ポータルサイトを運営。健康保険組合が保有するデータの分析サービスやPHR(パーソナルヘルスレコード)サービスなどを提供するヘルスデータプラットフォームは、クライアントのDX化のニーズを捉えて順調に拡大。厚労省は6月末に初診からのオンライン診療の恒久化に向けた制度の大枠を示しており、関連銘柄の一角としての期待も。株価は5月半ばと6月前半につけた4300円近辺でのダブルボトム形成後、ネックラインを突破してリバウンドを強めている。4月の戻り高値5650円を捉えたことで、2月につけた年初来高値6250円が射程圏内に。
◆ジャパンエレベーターサービスホールディングス <6544>
独立系メンテナンス会社として、エレベーターやエスカレーターのメンテナンス業務を行う。国内主要メーカーの各機種に対応できる高度な技術力と純正部品の調達力が強み。エレベーターなどのメンテナンス市場では、顧客のコスト意識の高まりに加え、運行の安全性に対する要求が強まっている。技術力に加えて価格競争力が同社の強みの一つでもあり、こうした需要の取り込みが期待される。
◆村田製作所 <6981>
各種電子部品を展開。足元では、同社が開発中の全固体電池が複数社の産業機械に採用されたことが報じられている。年内に月間10万個体制で量産し、供給を始めるという。ハイテク企業は足元で調整が目立つが、同社は1月につけた高値1万0835円をピークに調整が続いている。チャートは52週線を支持線とする一方で、13週線に上値を抑えられる形であり、煮詰まり感が台頭。高値から半年近く経過し、調整一巡感も意識されやすいところだろう。
◆コンフィデンス <7374> [東証M]
6月28日にマザーズ市場に新規上場。初値は2911円(公開価格1760円)だった。ゲーム・エンタメ業界のクリエイターのキャリアを多方面からサポートするサービスを展開。また、ゲーム・エンタメ業界に特化したメディアも複数運営している。エンジニアの人材不足を背景に、成長期待は大きいだろう。個人投資家の売買など需給状況次第の面はあるものの、相場全体の商いが膨らみづらい中、資金回転の利きやすい銘柄には引き続き資金が集中しやすいと見ておきたい。
2021年7月2日 記
株探ニュース