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【特集】グローセル Research Memo(4):2021年3月期はコロナ禍の影響で営業損失だが、粗利率は改善

グローセル <日足> 「株探」多機能チャートより

■業績動向

1. 2021年3月期の連結業績概要
グローセル<9995>の2021年3月期の連結業績は、売上高が59,861百万円(前期比12.8%減)、営業損失が493百万円(前期は61百万円の損失)、経常損失が261百万円(同5百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失が367百万円(同65百万円の利益)となった。

コロナ禍の影響で、主な向け先である自動車や産業機器の生産が停滞し、需要が特に第1四半期に急減したことが減収の主な要因である。一方で、高採算品の比率が高まったことで粗利率は改善した。さらに、出張旅費や交際費等の減少により販管費も前期比で減少したが、減収による売上総利益の減少を補えず営業損失となった。第1四半期をボトムに第2四半期以降は回復し、下半期だけを見れば営業利益を確保している。

製品別売上高は、集積回路が39,323百万円(前期比15.1%減)、半導体素子が9,967百万円(同13.3%減)、表示デバイスが1,416百万円(同7.8%減)、一般電子部品が9,154百万円(同1.2%減)となった。

すべての製品が減収となったが、特に自動車向けが多い集積回路、半導体素子が大きく落ち込んだ。表示デバイスは民生用が低迷した。一般電子部品は、「STREAL」やEMSなどは増加したが、開発用の需要が減少しセグメントとしては減収となった。なお注力商品である「STREAL」の売上高は1,530百万円(前期490百万円)となり、前期比で3倍以上となった。海外拠点の売上高は13,157百万円(同5.7%減)であった。

分野別売上高は、産業用が23,490百万円(前期比4.1%減、売上高構成比率39.2%)、自動車が29,200百万円(同16.6%減、同48.8%)、民生が4,280百万円(同17.7%減、同7.1%)、OAが1.430百万円(同20.6%減、同2.4%)、通信が1,160百万円(同27.5%減、同1.9%)、アミューズが300百万円(同40.0%減、同0.5%)であった。すべての分野向けで減収となったが、特に自動車向けが大きく落ち込んでおり、対売上高構成比も前期の51.0%から48.8%へ低下した。

減収ながら売上総利益率は9.3%(前期は9.0%)へ上昇したが、製品構成の変化による。特に比較的利益率が高い「STREAL」の売上高が増加したことが利益率の改善に貢献していると言えるだろう。売上総利益額は5,580百万円(同10.2%減)となった。一方で販管費は、減収に伴う経費減に加え、コロナ禍の影響による出張旅費や交際費の減少があったことから前期比3.2%減の6,074百万円となったが、売上総利益の減少を補えず、営業損益は493百万円の損失となった。ただし、上半期の営業損失が503百万円であったことから、下半期にはわずかではあるが10百万円の利益を計上したことになる。

2. 財務状況
2021年3月期末の流動資産は前期末比で1,100百万円増加し28,864百万円となったが、主に現金及び預金の減少1,614百万円、受取手形及び売掛金の増加1,099百万円、商品及び製品の増加1,367百万円などによる。固定資産は4,789百万円(前期末比492百万円増)となったが、主に投資その他の資産の増加521百万円による。この結果、2021年3月期末の資産合計は33,653百万円(同1,592百万円増)となった。

一方で、負債合計は前期末比1,640百万円増の11,151百万円となったが、主に流動負債のうち、支払手形及び買掛金が210百万円増、短期借入金が1,666百万円増、固定負債のうち、長期借入金が94百万円減、退職給付に係る負債が85百万円減などによる。純資産は、主に当期純損失の計上や配当金支払いによる利益剰余金の減少680百万円などにより前期末比49百万円減の22,501百万円となった。この結果、2021年3月期末の自己資本比率は66.9%(前期末は70.3%)となった。

3. キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは2,591百万円の支出となったが、主な支出は税金等調整前純損失の計上261百万円、売上債権の増加1,080百万円、たな卸資産の増加1,354百万円、主な収入は減価償却費143百万円、仕入債務の増加191百万円であった。投資活動によるキャッシュ・フローは356百万円の支出となり、フリーキャッシュフローは2,947百万円のマイナスとなった。財務活動によるキャッシュ・フローは1,260百万円の収入であったが、主な収入は長短借入金の増加1,536百万円、主な支出は配当金の支払額312百万円であった。この結果、2021年3月期中の現金及び現金同等物は1,614百万円減少し、期末残高は3,395百万円となった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

《NB》

 提供:フィスコ

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