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【特集】フェローテク Research Memo(5):2021年3月期は半導体業界の活況を背景に60.3%の営業増益

フェローテク <日足> 「株探」多機能チャートより

■業績動向

1. 2021年3月期の業績概要
(1) 損益状況
フェローテックホールディングス<6890>の2021年3月期決算は、売上高が前期比11.9%増の91,312百万円、営業利益が同60.3%増の9,640百万円、経常利益が同93.0%増の8,227百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同363.9%増の8,280百万円となった。

世界的な半導体不足を背景に、主要顧客である半導体デバイスメーカーや半導体製造装置メーカーからの需要が高まり、売上高は過去最高となった。ウエーハ子会社3社の一部株式を売却し非連結化したことで、バランスシートのスリム化が進んだ。設備投資額はウエーハ子会社の非連結化もあり14,297百万円と期初計画29,400百万円からは減額。減価償却費は9,155百万円(前期7,600百万円)となった。

セグメント別の売上高は、半導体等装置関連が14.7%増、電子デバイスが28.1%増、その他が12.3%減となった。主力の半導体等装置関連では世界的な半導体不足により設備投資(半導体製造装置)関連、消耗品関係ともに好調に推移し、通期では14.7%の増収となった。電子デバイスでは自動車の温調シート向けは減収基調となったが、通信機器(5G)向けサーモモジュールやパワー半導体基板等が好調に推移したことからセグメントとしては増収となった。その他は、縮小中の太陽電池関連を含むことから減収となった。

新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ禍)の影響については、中国にある主要子会社の決算は12月であることから、これら子会社の影響は本決算においては軽微であった。国内市場においては、第1四半期(4月~6月)に物流・営業等で多少の影響を受けたが、その後は回復に向かった。全体としては、コロナ禍の影響はあったものの、それ以上に本業の好調が上回ったと言える。

売上総利益率は33.7%(前期は33.0%)と改善したが、主に電子デバイスセグメント及びその他セグメントの粗利率が改善したことに加え、依然として水面下であったウエーハ子会社を第4四半期から非連結化したことによる。利益率の改善に加え、増収により売上総利益額は30,782百万円(同14.3%増)となった。一方で、ウエーハ子会社の非連結化、国内ではコロナ禍の影響を受けて営業活動等を一時自粛したことなどから、販管費は21,141百万円(同1.1%増)にとどまり、営業利益は前期比で大幅増益となった。営業外損益については、営業外収益で補助金収入884百万円、持分法による投資損益240百万円等を計上し、営業外費用で支払利息1,477百万円、為替差損889百万円等を計上した。これらの結果、経常利益の増益率は営業利益より大きくなったが、これは前期の経常利益が貸倒引当金の計上などにより少なかったためである。また特別利益として持分変動利益5,284百万円、特別損失として減損損失2,100百万円などを計上したことから親会社株主に帰属する当期純利益は大幅増益となった。

設備投資額は、主に中国子会社での投資を中心に14,297百万円(前期は33,920百万円)となり期初計画(29,400百万円)からは大幅減となったが、これは主にウエーハ子会社を非連結化したことなどによる。内訳としては、約4,400百万円が再生ウエーハ関連の投資で、残り約9,800百万円がその他の投資であった。減価償却費は9,155百万円(同7,600百万円)と高水準であった。

(2) 子会社の増資等
1) 既存子会社
中国の主要子会社において以下のような資本異動を実施した。子会社の増資等の内訳は、ウエーハ子会社の一部売却により308億円、中国子会社の第三者割当増資により115億円の資金を調達した。これにより有利子負債の返済404億円を行い負債が圧縮し、財務安全性が改善した。また加熱する中国の半導体国産化への流れに乗るため、半導体ウエーハ生産増強や新たなウエーハ開発に向け一段の弾みをつけた。

2) 新規子会社及び資本提携
今後のグループによる事業拡大を見据え、以下の企業の子会社化及び資本提携を進めた。

a) RMT(子会社化)
超小型サーモモジュール製品の製造を手掛けるロシア共和国の企業。サーモモジュール製品のラインアップを強化。

b) MeiVac(子会社化)
米国サンノゼにあるMeiVacを子会社化。薄膜成形技術に長け、真空製品の技術力・販売網を強化する。

c) 大泉製作所<6618>(資本業務提携)
中国市場への本格参入を見据え、大泉製作所(東証マザーズ上場)と資本提携した。大泉製作所が得意とする車載・空調用の温度センサ技術と同社のサーモモジュール技術を組み合わせた新たな事業分野を創出する。

d) (株)カドー(資本業務提携)
カドーは「環境」「健康」等を指向した空気清浄機等の高級デザインと機能家電のファブレス日本企業である。両社の連携によりサーモモジュール温度制御技術を活用したコンシューマー製品について、日中を主軸に投入する。なお資本提携が2021年5月のため、カドーの連結決算への影響は2022年3月期からとなる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

《NB》

 提供:フィスコ

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