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【特集】ときめきのラストワンマイル、「電動キックボード」はユニコーンを生む <株探トップ特集>

近距離移動の新たな「相棒」として電動キックボードが注目されている。海外では既に若者を中心に流行しており、日本でも規制緩和が待たれる。関連銘柄にはあらかじめ注目が必要だろう。

―欧米では既に風景の一部、日本はルール作りで市場活性化に期待―

 新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに「密」を避ける新たな移動手段が求められるなか、 電動キックボードへの関心が高まっている。欧米では2017年ごろに登場し、現在ではほとんどの先進国で街なかの風景の一部となっている。米国ではシェアリング大手のバード(カリフォルニア州)が史上最速でユニコーンとなるなど市場も急成長している。

 日本では規制の問題もあって欧米ほどの普及には至っていないものの、各地で実証実験が進み実用化段階に入ろうとしているところだ。欧米主要国はもちろん、東欧や南米まで席巻する電動キックボードの波は日本にも必ず押し寄せてくるとみられ、関連銘柄には注目が必要だ。

●ラストワンマイルを担うパーソナルモビリティ

 電動キックボードは、電動キックスケーターとも呼ばれ、一般的には2輪のボード上に持ち手となるハンドルが付き、それを電動モーターが動かすタイプが主流となっている。折り畳めるものが多く持ち運びが容易で、自転車より気軽に乗れるのが特徴。乗り方は片足をボードに乗せ、もう片方の足で地面を蹴って走り始め、安定したらハンドルに付いているレバーなどで加速や減速を行う。最高時速は15~30キロメートルのものが多く、1回のフル充電で航続距離30~60キロメートルといわれている。

 鉄道やバスなど公共交通機関を下車したところから自宅など目的地までの区間のことを「ラスト(ファースト)ワンマイル」というが、電動キックボードはMaaS(移動のサービス化)における「ラストワンマイル」を担うパーソナルモビリティの一つとして人気が高まっている。

●日本では原動機付自転車に該当

 海外では、安価なシェアリングサービスが世界各都市で急速に広がっているが、そうした国の多くは、新たに電動キックボードの法律上での位置づけを定めており、米国など多くの諸外国では電動キックボードを自転車と同様に扱っている。時速25キロメートル以下の乗り物なら自転車の延長で取り扱う国が多いためで、対象年齢の制限はあるものの免許は不要、ヘルメットの着用も任意となっている。また、走行も車道だけではなく、自転車専用レーンの走行が可能で、安全性と利便性を考慮した利用環境を整えている。

 一方日本では、電動キックボードは道路運送車両法上の原動機付自転車に該当し、公道での走行は車道に限定。運転免許証の携帯やヘルメットの着用が義務づけられ、ナンバープレート、サイドミラー、ウインカーなどの装着も必要となる。また、自賠責保険への加入なども必要だ。

 ただし、これらを電動キックボードに当てはめると観光地などで外国人観光客のほとんどがサービスを利用できなくなる。また、既存のナンバープレートは電動キックボードに適したサイズではないことや、ヘルメットもバイクユーザー以外では所有している人は少ないことなどルールに合わない点も多い。

●特例措置で実証実験をスタート

 電動キックボードの利便性や安全性の検証を行うため、昨年10月からは国内初となる公道での実証実験が全国各地で行われた。また、ここで得られた結果をもとに、今年4月からはシェアリングサービスの実証実験がスタートしている。今回の実証実験では、利用される電動キックボードが、「特例電動キックボード」と呼ばれる道路交通法上の特例措置が適用されるものになり、原付ではなく小型特殊自動車として位置づけられるため、ヘルメットの着用義務がなく「任意」となったことが最大の特徴。その一方、制限速度は原付扱いでは時速30キロメートルだったが、今回は時速15キロメートルとなっている。また、走行区分も前回の実証実験では車道のみだったが、自転車レーンや自転車道も通行できるようになった。引き続き歩道走行は禁止だが、利便性は大幅に向上した。

 ただ、こうした特例措置は、あくまで今回の実証実験で利用される特例電動キックボードに限られ、個人で購入した電動キックボードは従来通り原付扱いで、走行区分やヘルメットの着用義務なども従来通りとなる。

●サンオータスなどに注目

 前述のように、今回の実証実験は電動キックボードのシェアリングサービスに関するもので、国内電動キックボード事業者を中心として構成されるマイクロモビリティ推進協議会に参画するLuup(東京都渋谷区)、mobby ride(福岡県福岡市)、EXx(東京都渋谷区)、長谷川工業(大阪市西区)が参加し10月までの予定で行われる。

 これらに上場企業はなく、電動キックボードも海外製のものが多いため、関連銘柄はないように見えるが、徐々に増えつつある。

 その代表的なものが、いち早く電動キックボード関連事業をスタートさせたサンオータス <7623> [JQ]だ。同社は昨年12月にDMOジャパン(東京都品川区)と提携し、電動キックボードのシェアリング事業を開始。また、今年4月には京浜急行電鉄 <9006> グループとも同じくシェアリングサービスで提携した。更に同社は昨年6月、電動キックボードをはじめとする電動モビリティベンチャーのglafit(グラフィット、和歌山県和歌山市)と折り畳み電動バイクのシェアリング・販売で連携しており、サービス拡充などの期待もある。

 アダストリア <2685> は今年5月、前述のLuupと資本提携し、店舗への来店前後の「移動」に視野を広げた、新たな顧客体験の提供に向けた協業を開始したと発表した。協業第1弾として、Luupのサービスを利用して来店した顧客に対して、「niko and...TOKYO」が店内のカフェドリンクを半額で提供するキャンペーンを7月21日から8月末まで実施する。

●世界大手に出資するKDDI

 Luupも参画するマイクロモビリティ推進協議会には、電動キックボード・シェアリングサービス世界最大級の「Lime」と「Bird」も参加しているが、コロナ禍の影響もあり、日本市場への浸透はいまだ低い。「Lime」を運営する米ニュートロン・ホールディングス(カリフォルニア州)にはKDDI <9433> やデジタルガレージ <4819> が出資しており、今後の日本市場での展開に関しては、両社の動向が注目されそうだ。

 また、同協議会に参画し、4月から行われている実証実験にも参加するmobby rideは昨年10月、丸紅 <8002> と電動のマイクロモビリティを活用したサービスと電力サービスなどを掛け合わせたビジネスを共同で実現することで合意したと発表した。仮に電動キックボード普及のためのインフラが整備されれば、丸紅の全国に広がるネットワークや人材を活用できる強みを生かせよう。

 このほか、グループ会社ブレイズが、立ち乗りできる電動スクーターを展開するMTG <7806> [東証M]や、サンオータスとの連携で触れたglafitに出資するヤマハ発動機 <7272> なども関連銘柄として注目される。

 ただ、電動キックボードは普及が始まったばかりでもあり課題も多い。今年5月には大阪市中央区の繁華街で電動キックボードによるひき逃げ事故が発生した。事故を起こした電動キックボードは、原動機付自転車としての保安基準を満たしておらず、ヘルメット未着用や、歩道を走行してはならないといった交通ルールを無視した行いによるもので今後、利用に即したルール作りは重要になる。こうしたルールが作られれば市場は更に活性化するとみられ、関連銘柄の商機にもつながろう。

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