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【特集】需給見通しはさらなる原油高を示唆、脱炭素社会に向かう過程で供給不足は不可避か <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

 ニューヨーク市場でウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物は2018年10月以来の高値を更新している。新型コロナウイルスの流行を克服し、主要国経済が正常化に向かっていることが背景である。経済活動の復旧によって石油需要がコロナショック前の水準へ回復する可能性が高い。需要回復見通しに異論を唱える市場参加者はいないのではないか。

 供給見通しも単純である。サウジアラビアとロシアを中心とした石油輸出国機構(OPEC)プラスは減産目標を縮小して段階的に増産するが、毎月の共同技術委員会(JTC)後に明らかになっている内部資料からすれば、需要を上回るような増産は回避する構えである。需要超過の継続は世界的な在庫の引き締まりを意味することから、原油価格は年後半にかけて一段と上昇していくだろう。今週にもイラン核合意の修復作業が終了し、イランが増産するとしても供給過剰になることはないとみられている。

●米シェールオイル生産量は低迷続く

 バイデン政権が誕生するまで、原油価格が上昇すれば米国のシェールオイル生産量が拡大し、需要超過を打ち消す役割を担っていたが、最近の米石油産業は意気消沈したままである。米国のクリーンエネルギー政策を背景に、石油産業は身の置き場を失った。原油の増産を検討している場合ではない。米エネルギー情報局(EIA)によると、米原油生産量は日量1100万バレル付近で低迷が続いている。コロナショック前は日量1300万バレルまで生産量が拡大した時期があり、生産を制限するロシアやサウジアラビアを尻目に米国は世界最大の産油国だった。

 米ベーカー・ヒューズが発表している米国の原油掘削リグの稼働数は先週で365基まで回復しているが、新型コロナウイルスのパンデミックが起きる前のように700基超が稼働することは今後なさそうだ。EIAの掘削生産性報告(DPR)によると、7月もシェールオイル生産量は低迷する見通しである。

 バイデン政権が4年で終わろうとも主要国はすでに脱炭素社会へ向けて動き出している。石油企業が新規投資を拡大し、増産体制を整えることはないだろう。限られた定期改修しか行われないならば、生産設備は老朽化し、生産は先細りになっていくに違いない。

●脱炭素社会への過程で石油は高騰する可能性

 あらためて言及することでもないが、追い詰められているのは米国の石油会社だけではない。BPにとってもサウジアラムコにとっても、ロスネフチも同様である。石油の使用用途のうち、最も大きな割合を占めるのはガソリンであり、ガソリン車を中心とした化石燃料を消費する輸送用機器がいずれこの世から消え去る存在であることからすると、投下した資本を数十年に渡って回収するような大規模な投資計画は非現実的である。

 OPECプラスが供給をコントロールし、需要超過に需給バランスを維持しようとせずとも、世界経済が脱炭素社会へ向かうなかで自然と需要超過となるのではないか。米国の石油産業が示すように供給はすでに伸び悩む兆候がある反面、ガソリンやディーゼル燃料からの転換にはかなりの時間が必要だろう。化石燃料への依存度を低下させる過程で供給が不足し、石油価格はかなり高騰する可能性がある。あまり想像したくない現実だ。ガソリンスタンドの前を通り過ぎるたびに、乗り換えを意識させられる日々が迫っているかもしれない。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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