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【特集】田部井美彦氏【気迷い相場の東京市場、日経平均株価の上放れは到来するか】(2) <相場観特集>

田部井美彦氏(内藤証券 投資調査部 リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト)

―企業業績にらみ思惑交錯、2万8000円台半ばで強弱感対立―

 24日の東京株式市場では、日経平均株価が3日続伸したが2万8500円を超えた水準では利益確定売りに押され、上値の重い展開が続く。株式市場は、米国のインフレ懸念が依然として警戒材料としてのしかかっているほか、業績の見方にも思惑が交錯している。果たして、東京市場は警戒要因を跳ねのけ一段の上値追いへ進むことができるのか。2人のベテランマーケットアナリストに今後の展開を聞いた。

●「テーパリング意識で上値重い展開も」

田部井美彦氏(内藤証券 投資調査部 リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト)

 日経平均株価は上値の重い展開が続いているが、これは日本企業の決算発表が今月中旬に一巡したことでイベントが終わり個別銘柄の展開材料がなくなったことが影響しているのだろう。

 加えて重要なのは、米国で新型コロナウイルスワクチンの接種が進み景況感が改善するなか、米連邦準備理事会(FRB)によるテーパリング(量的緩和縮小)の開始を意識しなければいけない状況になってきたことだ。もし、テーパリングが開始されたとしても、現在の状況はリーマン・ショック後に比べても金利水準は大幅に低いこともあり、株式市場が大きく崩れることはないと思う。しかし、テーパリングの議論がいつ始まり、その方向性などを確かめないと積極的に株式市場に参加することは難しいだろう。

 本格的にテーパリングの議論が交わされるのは7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)以降で、8月の米ジャクソンホール会議も含め夏場にかけてが重要な時期となることが予想される。こうしたなか、当面の相場は軟調な展開が続くとみている。6月いっぱいの日経平均株価のレンジは2万7000~2万9600円を見込んでいる。

 個別銘柄では、当面は半導体関連など高PERのハイテク株よりも、低PERで業績の上振れが期待できる素材株など景気敏感株の方が堅調な値動きが見込めそうだ。日本製鉄 <5401> や住友金属鉱山 <5713> 、三菱商事 <8058> 、商船三井 <9104> などの代表的な景気敏感株に注目したい。また、荏原 <6361> は5月中旬の決算発表で業績の増額修正を発表したが、今期は再増額修正も予想され株価は一段の上昇が期待できるとみている。

(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(たべい・よしひこ)
内藤証券リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。

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