【市況】明日の株式相場に向けて=市況関連人気は海運から鉄鋼へ
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
米国の景気回復期待を買いの根拠としていたはずが、都合よく金融緩和長期化にすり替わった。注目された4月の米雇用統計は事前予測を大幅に下回る内容だったが、これによりFRBの金融緩和政策が長期化するという思惑を呼び、米株を押し上げたという。極端な話、株価動向をみてからの後付け講釈に使われているに過ぎない印象もある。今週は米国の重要経済指標が相次ぐが、株価は整合性の伴った軌道を描くのか注視したい。
個別株戦略では中期波動で狙える銘柄の選別が、この時期はなかなか難しい。3月決算企業の決算発表が佳境を迎えているが、今週は週末14日に1000社近い発表が予定されており、夏の花火大会で言えば最終盤の大玉連発場面にあたる。ここを通過してしまえば、来週以降ほぼ決算発表絡みの株価の動きに翻弄されることはなくなる。実質的なピークはトヨタ自動車<7203>とソフトバンクグループ<9984>の決算発表が予定される12日だが、いずれにしても決算発表のトンネルをくぐりながらの個別株戦略は、好決算発表銘柄のギャップアップにつくか、決算発表で叩き売りモードとなった急落株の悪目買いという手法にマーケットの関心が向かいやすい。物色の方向性という点では市況関連株優位ということは間違いない。中期的にみてもこれまでのハイテク・グロースから景気敏感セクターのバリュー系銘柄に一種のグレートローテーションが起きているという指摘もある。しかし、短期的には現在投資マネーが激しく流入する日本製鉄<5401>をはじめとする鉄鋼株の追撃は、AIではなく“人間であれば”タイミング的に少なからず躊躇する場面でもある。
鉄鋼・海運株は景気敏感株におけるツートップのような存在となっている。実際はこれまで海運の戻りが鮮烈過ぎて、鉄鋼は霞んでいた面もある。業界大手企業の損益動向を見ても分かるように業績的には海運が21年3月期に回復色をみせているのに対し、鉄鋼は22年3月期からの回復と1期のズレが生じている。その分だけ鉄鋼株の戻りが遅れたわけだが、今回の決算発表を契機に日本製鉄、ジェイ エフ イー ホールディングス<5411>などが強烈な追い込みをみせ、急勾配の上昇波動を構築している。ちなみに、きょうは鉄鋼株が業種別値上がり率トップとなる一方、海運株は最下位となった。
ここ3、4年のタームでチャートを俯瞰すると鉄鋼よりも非鉄株の出遅れ感が強いことに気づく。大手で時価総額の大きいところでは三井金属<5706>や三菱マテリアル<5711>などが挙げられる。天井の高い銘柄で、比較的足の速いものでは大平洋金属<5541>や大阪チタニウムテクノロジーズ<5726>、東邦チタニウム<5727>などがある。商品市況高といっても、まだこれらの銘柄群には本格的な買いが波及していない。
このほか個別では、決算発表後の銘柄もしくは今回の決算発表に絡まない銘柄(決算月が3の倍数ではない企業)で、買えそうな銘柄をいくつかピックアップすると、まず5G関連で株価が500円近辺と値ごろ感のある双信電機<6938>。独立系電気工事会社で太陽光発電関連に実績の高いJESCOホールディングス<1434>。通信・防災用電線メーカーでウェアラブル端末など新境地を開拓中のJMACS<5817>。塩ビコンパウンドのトップメーカーであるリケンテクノス<4220>。パワー半導体関連で実力株の三社電機製作所<6882>などがある。これらは、いずれも株価が3ケタ台だ。もう一つ、株価1000円近辺でもみ合うアグレ都市デザイン<3467>もマーク。コロナ禍で郊外の戸建て取得ニーズが高まっており、業績は好調に推移。7倍前後のPERと4%台の高配当利回りは魅力となる。
あすのスケジュールでは、3月の家計調査、日銀金融政策決定会合における主な意見(4月26・27日開催分)など。海外では4月の中国CPI、4月の中国PPI、5月のZEWの独景気予測指数など。(銀)
出所:MINKABU PRESS