【市況】明日の株式相場に向けて=市況関連株にインフレビーム照射
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
ともあれ、足もとのマーケットの流れを観察して思い当たるのは、貨幣価値の低下だ。すなわちインフレということになるが、コロナ禍で消費者サイドにすれば実感がなく、バブル経済的な体感温度からはかけ離れている。需要が盛り上がりを欠く中での素材価格の上昇はスタグフレーション的な意味合いを持つが、現時点で世界の中央銀行は緩和の手を緩めることはない。国内に限って言えば、「川上の物価上昇傾向は、今後食品価格などに色濃く反映され、我々の日常にも影響を与えることが予想される。ただし、菅政権で打ち出した政策効果で通信コストが低下している。したがって、数字的には相殺され物価上昇圧力は目に見えにくいものとなる」(ネット証券アナリスト)という指摘がある。
そして株式市場に目を向ければ、現在はコロナ禍を脱したグローバル経済の回復というよりもその先にあるインフレの気配を意識したフェーズにある。新型コロナウイルスの感染状況については、変異種の流行も含め依然として収束には程遠い状況にあるが、欧米ではワクチン普及を背景にアフターコロナを織り込む動きといってよい。何といっても、商品市況の上昇が顕著だ。川上インフレでもデフレマインドの環境は食品業界をはじめ、消費者と接点のある業態にとって由々しき状況を生み出しているのだが、市況関連株にとっては追い風。今のFRBを筆頭とする世界的緩和スタンスが株高の原動力となっている。
今は日程的に本決算発表絡みの銘柄が多いため、現実問題として投資のタイミングが難しい部分はある。ただ、川上インフレモードに即した銘柄群に株高の機会が巡りやすくなっていることに変わりはない。例えば東邦チタニウム<5727>や大阪チタニウムテクノロジーズ<5726>の戻り足はそれを示唆している。邦チタについてはあすに決算発表を控え、22年3月期の回復度合いを会社側がどのくらい強気にみているかを確認するまでは本腰を入れて買えないという事情がある。一方、大阪チタの決算発表は来週12日の予定。この2銘柄については、決算発表を通過してからでも間に合うと思われるが、目先の動きはともかく株価の方向性としては上であろう。当欄で4月初旬に複数回取り上げた東京製鐵<5423>と似た動きに発展していく可能性はある。このほか市況関連では海運株の強さが際立つが、日本郵船<9101> 、商船三井<9104> 、川崎汽船<9107>の大手3社を今さら買えないという向きには、これも繰り返しになるが明治海運<9115>、飯野海運<9119>といった上値に伸びしろのある銘柄に視点を合わせたい。更に、出遅れ顕著な東海運<9380>や大運<9363>などにも噴き上げのチャンスが訪れる公算は小さくない。
市況関連以外では再生トナーなどOA関連機器のリサイクル商品販売や情報セキュリティーソフト販売を手掛けるケイティケイ<3035>に意外性がある。足もとの業績は逆風環境ながら、評価の視点は21年8月期ではなく22年8月期であろう。コロナ感染対策関連としての切り口もある。
また、人工知能(AI)関連でシグマクシス<6088>の2100円近辺のもみ合いは強気対処で報われる可能性がある。22年3月期は14%増収、43%営業増益予想と回復色が際立つ。経営コンサルティング会社として戦略立案から開発、実行までワンストップで対応できる強みを持つが、AI技術を活用した案件にも強く、ビッグデータ全盛時代に同業他社と一線を画す。最後にもうひとつ、中央発條<5992>の1000円絡みはマークしておく価値がある。自動車ばねメーカーで業界屈指の実力を持つが、トヨタ自動車<7203>を主要取引先としている点は強み。21年3月期業績は低調だったものの、足もとの受注は高水準を極め22年3月期営業利益は前期比2.7倍の34億円と急拡大を見込む。トヨタ系にしてPER10倍、PBR0.4倍、3%超の配当利回りは評価不足が歴然だ。
あすのスケジュールでは、4月マネタリーベース、3月の毎月勤労統計調査など。海外では、4月の中国貿易収支、4月の米雇用統計、3月の米消費者信用残高など。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2021年05月06日 17時07分