【特集】オークファン Research Memo(1):2021年9月期第1四半期はインキュベーション事業の寄与により増収増益
オークファン <日足> 「株探」多機能チャートより
■要約
1. 会社概要
オークファン<3674>は、「RE-INFRA COMPANY」※をコンセプトとして、膨大な蓄積データとAIにより在庫価値を可視化・最適化する「在庫価値ソリューション事業」と、企業在庫の流通を支援する「商品流通プラットフォーム事業」の2軸により、社会課題となっている廃棄ロス削減に向けたワンストップサービスを提供している。主なサービスには、相場検索・価値比較サービス「aucfan.com」や国内最大級のBtoB仕入れサイト「NETSEA(ネッシー)」、ネットショップ運営一元管理ツール「タテンポガイド」などがあり、中小企業・個人事業主(副業を含む)を中心とする小売・流通業向けにトータルEC支援ソリューションを展開してきた。創業来、蓄積してきた商品売買データは約700億件を超え、ビジネス利用アカウント数は約140万に上る。EC市場やリユース市場の拡大をはじめ、個人の副業ニーズや法人の商品在庫流動化ニーズの高まりなどを背景として、同社独自の価値提供により順調に事業を拡大してきた。今後も、消費者に届けられることなく廃棄される約22兆円の法人在庫や流通構造の変化(オフラインからオンラインへの流れ)を同社自らの成長に取り込む戦略により、成長を加速していく構想を描いている。
※同社の存在意義を再定義したもの(2020年10月公表)。「新たにゼロから生み出すのではなく、今、目の前にある価値を見つめ直す。オークファンは社会の様々な『Re』(再び)を統合した唯一無二のインフラを構築していく会社でありたい」という思いを表現した造語。
2. 2021年9月期第1四半期の業績
2021年9月期第1四半期の業績は、売上高が前年同期比88.4%増の2,963百万円、営業利益が1,224百万円(前年同期は62百万円の利益)と、「インキュベーション事業」の寄与(ベンチャー投資に係る営業投資有価証券の一部売却)により大幅な増収増益を実現した。一方、主力事業だけで見ると、売上高が前年同期比7.7%増※1、
営業利益が同21.6%増※2とやや緩やかな滑り出しとなった。「商品流通プラットフォーム事業」が新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)における巣ごもり消費等により堅調に推移したほか、「在庫価値ソリューション事業」は大手顧客のマーケティング費用の抑制的な動きにより新規受注に遅れが生じたことから、主力事業全体では計画を下回る緩やかな伸びにとどまった。もっとも、活動面については、自治体や農林中央金庫(以下、農林中金)との協業など、全国の在庫流動化ニーズの掘り起しに向けて一定の成果を残すことができたと評価できる。
※1 外部顧客への売上高のみで算出
※2 調整値を含めた金額で算出
3. 2021年9月期の業績予想
2021年9月期の業績予想について同社は、期初予想を据え置き、売上高を前期比38.4%増の10,900百万円、営業利益を同58.4%増の1,300百万円と大幅な増収増益を見込んでいる。ベンチャー投資先の株式売却が業績の伸びに大きく寄与する想定(第1四半期に実施済み)であるが、その分を除いた主力事業についても、売上高を前期比51.4%増の10, 000百万円、営業利益を同57.6%増の500百万円と前期を上回る加速度的な成長を計画している。コロナ禍をきっかけとした環境変化を追い風として、「在庫価値ソリューション事業」及び「商品流通プラットフォーム事業」がともに順調に伸びる見通しであり、利益面についても、広告宣伝費や人件費など事業拡大に向けた先行費用を継続投入するものの、増収により吸収して大幅な増益を実現する想定となっている。なお、第1四半期の業績(特に利益面)が高い進捗率に達したにもかかわらず、期初予想を据え置いたのは、コロナ禍の影響等による「営業投資有価証券」の減損リスクの可能性を慎重に見ていることが理由のようだ。したがって、それ以外の前提条件に変更はなく、利益面での上振れの可能性はかなり高いと弊社アナリストは判断している。
4. 今後の方向性
同社は、現時点で具体的な中期経営計画(数値目標)の公表はしていない。ただ、廃棄処分されている約22兆円の法人在庫に着目し、社会課題となっている廃棄ロス削減に向けた取り組みを同社自らの成長に結び付ける方向性であり、同社グループの各機能を結集・統合した「モノの再流通インフラ」の確立や海外展開の本格化により、現在の約10倍となる流通高1兆円の実現を視野に入れている。弊社アナリストも、同社の目指す方向性は社会的意義やポテンシャルが大きいうえ、同社の優位性も発揮できることから、圧倒的なポジションを獲得できる可能性も十分にあると見ている。今後は、いかに他社に先駆けて市場を切り開き、囲い込んでいくのかが、同社の成長性を判断するうえで重要なテーマと言えよう。
■Key Points
・2021年9月期第1四半期は「インキュベーション事業」の寄与により大幅な増収増益を実現
・主力事業はやや緩やかな伸びにとどまるも、自治体との協業など今後に向けた活動では一定の成果
・2021年9月期の業績は期初予想を据え置き、通期でも大幅な増収増益を見込む。「インキュベーション事業」による寄与に加え、主力事業の加速度的な成長見通しに変化はない
・同社グループの各機能を結集・統合した「モノの再流通インフラ」の確立により、廃棄ロス削減に向けた取り組みを同社自らの成長に結び付ける戦略
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
《NB》
提供:フィスコ