【特集】春風に舞う「介護」関連、高齢化社会をサポートする有望株総ざらい <株探トップ特集>
4月から介護報酬の基本料金が引き上げられる。新型コロナ感染拡大の影響を受ける事業者の経営基盤強化につながるとみられ、関連銘柄への関心が再び高まっている。
―新型コロナ対策分を上乗せ、介護報酬のプラス改定が収益押し上げへ―
介護事業者が提供したサービスに対して支払われる報酬(介護報酬)で、4月から基本料金が0.7%(うち0.05%は新型コロナウイルス対策として9月末までの限定措置)引き上げられる。厚生労働省が2020年10月に公表した調査によると、同年5月時点で約半分、10月時点で約3分の1の事業所が新型コロナ感染拡大前と比較して収支が悪化したと回答。介護報酬は事業者にとって各サービスの収入単価となるため、プラス改定による収益押し上げが期待できそうだ。
●特養は150円程度引き上げ
厚労省の介護給付費分科会は今回の改定で、新型コロナや大規模災害が発生するなかで「感染症や災害への対応力強化」とともに、団塊の世代のすべてが75歳以上となる25年に向けて、40年も見据えながら、「地域包括ケアシステムの推進」「自立支援・重度化防止の取り組みの推進」「介護人材の確保・介護現場の革新」「制度の安定性・持続可能性の確保」を図るとしている。具体的には、感染症や災害が発生した場合でも必要なサービスを継続して提供できる体制を構築するため、介護サービス事業者に対して業務継続計画の策定や研修・訓練の実施を義務付けた。また、地域包括ケアシステムの推進では認知症専門ケア加算を新たに創設し、自立支援・重度化防止ではADL(日常生活動作)維持等加算について通所介護に加えて認知症デイサービスや介護付きホーム、特別養護老人ホーム(特養)にも対象が拡大された。
基本料の引き上げは主なサービスで、訪問介護が1回1単位程度(1単位=10円を基本に、地域ごとの掛け率で金額を計算)、通所介護(デイサービス)が1回10単位前後、特養が1日あたり15単位程度となる。これにより、介護事業者の経営基盤強化につながることが見込まれ、関連銘柄に改めて注目したい。
●関連企業の足もと業績動向
日本ホスピスホールディングス <7061> [東証M]は、がんや難病など専門的な緩和ケアを必要とする患者が住むホスピス住宅や訪問看護、在宅介護を展開。2月12日には21年12月期通期の連結営業利益が前期比64.6%増の5億9000万円になる見通しだと発表した。今期を施設拡大の期と位置づけて10のホスピス住宅を新設する計画で、これにより今期末には合計27施設、838室となる見込みだ。
アンビスホールディングス <7071> [JQ]は医療施設型ホスピス「医心館」を運営し、慢性期・終末期の看護ケアを提供している。2月10日に発表した21年9月期第1四半期(20年10-12月)の連結営業利益は前年同期比46.8%増の7億2100万円で着地。既に同月1日には直近半年以内に開設した新規施設を中心に稼働率は順調に推移していることを背景に、通期の営業利益を前期比39.5%増の26億1900万円に引き上げている。
ケア21 <2373> [JQ]は関西を地盤に介護サービスを提供しており、3月5日に発表した21年10月期第1四半期(20年11月-21年1月)の連結営業利益は前年同期比5.5%減の3億7300万円となった。これは交付金を活用して購入した備品などを販管費に計上したためで、交付金を営業外収益に計上した経常利益は同35.3%増の3億1600万円。在宅系介護事業と施設系介護事業はともに増収を確保しており、通期の営業利益予想は前期比4.5%増の14億円と従来計画を据え置いた。
セントケア・ホールディング <2374> は2月8日、21年3月期第3四半期累計(20年4-12月)の連結営業利益が前年同期比96.2%増の23億4800万円になったと発表した。デイサービスでは新型コロナ感染拡大の影響で利用控えの動きもあったが、一方で訪問入浴が顧客の増加や稼働向上により売り上げが大きく伸長。訪問看護や看護小規模多機能型居宅介護も前期に開設した営業所が順調に成長した。これを踏まえ同日には、通期の営業利益見通しを前期比86.6%増の27億3900万円(従来予想は24億6900万円)に引き上げている。
SIホールディングス <7070> [JQG]は通所介護併設の高齢者住宅などを展開。2月10日に発表した21年3月期第3四半期累計(20年4-12月)の連結決算は、利用者数の増加などを背景に営業利益が前年同期比44.8%増の5億2300万円となった。通期業績予想は新型コロナの感染動向が見極めにくいとして未定としているが、同社が注力している高齢者住宅整備プロジェクトや高齢者向け生活支援サービス整備プロジェクト、経営支援サービス推進プロジェクトに期待したい。
ソラスト <6197> は医療事務受託の大手で、訪問介護やデイサービスなども手掛けている。両事業ともに堅調に推移しており、2月9日に発表した21年3月期第3四半期累計(20年4-12月)の連結営業利益は前年同期比21.7%増の48億3400万円で着地。同日には通期予想を前期比10.7%増の60億5000万円(従来予想は54億7000万円)に上方修正した。1月の介護サービス利用も順調で、訪問介護利用者数は前年同月比88.4%増の1万3840人、デイサービス利用者数は同4.1%増の1万1761人となっている。
シダー <2435> [JQ]は既存デイサービス施設の質を上げることで稼働率向上に努めているほか、既存の有料老人ホームの入居者獲得に注力したことにより、2月5日に発表した21年3月期第3四半期累計(20年4-12月)の連結営業利益は前年同期比2.0倍の7億6100万円で着地。通期予想は前期比60.0%増の8億7900万円を見込んでいる。
関西を中心に有料老人ホームを展開するチャーム・ケア・コーポレーション <6062> は2月5日、21年6月期第2四半期累計(20年7-12月)の連結営業利益が11億1500万円になったと発表。同社は第1四半期から連結財務諸表を作成しているため前年同期との単純比較はできないが、通期予想の22億円に対する進捗率は50.7%となった。開設2年目を経過した既存ホームの入居率は95.7%と高い水準を維持しており、開設2年未満のホームの入居についても順調に進んでいるという。
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