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【市況】米国株式市場見通し:長期金利動向を注視

NASDAQ <日足> 「株探」多機能チャートより

特に金利高に敏感なハイテクが引き続き重しとなりそうだ。ナスダック総合指数は100日移動平均水準を完全に下回ると、さらに売りが加速する可能性もあり、引き続き下値を警戒したい。金利の上昇は歴史的に最低な結果となった7年債入札がきっかけとなったが、来週は財務省が実施する3年債、10年債、30年債入札結果にも注目したい。一方で、NY市で映画館の営業が再開されるほか、テキサス州など一部の州がパンデミック対応の規制を全て解除する計画で、経済活動の再開がさらに進む。また、1.9兆ドルの追加経済対策案も成立に向けて前進している。加えて、バイデン政権は5月末までに全国民に十分な量のワクチン確保が可能と発表し従来の予定から2カ月前倒ししている。ワクチン接種ペースも加速する見込みで、景気循環株を支える環境には変わりはなさそうだ。

年後半の強い景気の反動期待に加えて、インフレ過熱やFRBの政策の立ち遅れの懸念から長期債相場の変動率が上昇している。最近の国債相場の混乱への対応としてFRBがツイストオペなどのような手段を用いて、長期金利の上昇を抑制するとの思惑も浮上していたが、パウエル議長は先週のインタビューで、何のヒントも出さなかった。経済に関してはインフレや雇用を巡り目標に程遠いと慎重な見解を繰り返したほか、根深い低インフレが速やかに解消される可能性は少ないとしており、インフレの高騰よりも依然低インフレを懸念しているようだ。また、国債相場の混乱についても、「注意を引いた」との言及にとどめ、特に懸念を表明せず、速やかな対応の必要性を示唆しなかった。今月の連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されるまで思惑がくすぶり、金利動向を睨む荒い展開は続きそうだ。

経済指標では、1月卸売売上高・在庫(8日)、2月消費者物価指数(CPI)(10日)週次新規失業保険申請件数、1月JOLT求人件数(11日)、2月生産者物価指数(PPI)、ミシガン大消費者信頼感指数(12日)などが予定されている。急伸が警戒されているインフレの関連指標に特に注目だ。FRBが特に注目しているコアのCPIは前年比で+1.4%と1月と同水準にとどまる見通しで、2%超えの目標を依然かなり下回る。インフレへの警戒感が沈静化するとハイテク株も買い戻されるだろう。また、パウエル議長は特に労働市場の弱さに度々言及しているが、1月JOLT求人件数で市場のたるみ状況をさらに明確にしたい。

企業決算ではオンラインアパレルのスティッチフィックス(8日)、スポーツ用品販売のディックス・スポーティング・グッズ、財務ソフトウェアのH&Rブロック(9日)、ソフトウェアメーカーのオラクル、食品会社のキャンベルスープ、映画館運営のAMCエンターテインメント(10日)、電子署名のドキュサイン、化粧品小売りのアルタ・ビューティー(11日)などが予定されている。

パンデミック対応の在宅勤務で需要が急増したドキュサインは決算で増益が期待されている。注目は見通しとなるが、経済活動の再開で、今までと同ペースでの成長を見込むのは困難と見られ警戒したい。短期投機の動きで注目となったAMCエンターテインメントは前年比減益が警戒される。ただ、NY市では来週から営業が再開される計画で今後は改善を期待したい。ディックス・スポーティング・グッズはデジタルの強い売り上げで前年比増益が予想されている。

(Horiko Capital Management LLC)

《FA》

 提供:フィスコ

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