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【特集】プラチナは欧州ロックダウン再導入で一段安も、米大統領選の開票も焦点 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は10月、米国の追加経済対策の合意期待や、米大統領候補討論会を無難に消化し、リスク選好の動きとなったことを受けて9月21日以来の高値918.07ドルをつけた。ただ、その後は経済対策の協議難航に加え、新型コロナウイルスの感染再拡大でドイツやフランスがロックダウン(都市封鎖)の再導入を発表したことから、リスク回避の動きとなって戻りを売られた。英国もイングランドのロックダウンを発表しており、景気の先行き懸念から9月安値827.67ドルを割り込んで一段安となる可能性がある。

 目先は米大統領選の開票の行方も焦点である。世論調査では民主党のバイデン元副大統領が優勢だが、隠れトランプ派の存在に加え、郵便投票や期日前投票の開票で混乱する可能性も指摘されている。接戦になり勝者確定が遅れれば、リスク回避の動きが加速する可能性が出てくる。

 ただ、中長期的には世界的な金融緩和や財政刺激策が下支え要因であり、手じまい売り一巡後の安値は買い拾われるとみられる。

●第3四半期のユーロ圏GDPは予想以上も景気の二番底を警戒

 第3四半期のユーロ圏の域内総生産(GDP)速報値は第2四半期の11.8%減から急回復し、前期比12.7%増となった。フランス、イタリア、スペインの回復が目立ち、事前予想の9.4%増を大幅に上回った。

 ただ、新型コロナウイルスの感染再拡大を受けてドイツとフランスがロックダウンを再導入しており、景気は二番底に向かうとみられている。ドイツのメルケル首相は、11月2日から1ヵ月間、ロックダウン措置を実施すると発表した。フランスのマクロン大統領も10月30日から12月1日までの約1ヵ月、再びロックダウンを実施すると発表。英国も31日、11月5日から12月2日までの約1ヵ月間、イングランドのロックダウンを実施する。これらにより需要減少懸念が強まるとみられる。また、スペインは緊急事態宣言の期間を2週間としていたが来年5月9日まで延長。イタリアも封鎖措置を導入する見通しとなった。北半球の冬季の新型コロナウイルスの感染拡大の行方を引き続き確認したい。

 欧州自動車工業協会(ACEA)によると、9月の欧州連合(EU26)の新車(乗用車)登録台数は前年同月比3.1%増の93万3987台となった。1~9月は前年同期比28.8%減の705万8090台。昨年12月以来の増加率となった。商用車登録台数も前年同月比13.3%増の16万3512台と回復した。1~9月は前年同期比24.5%減の120万6259台。しかし、ドイツとフランス、英国のロックダウンの再導入で11月の自動車販売は急減する見通しであり、プラチナの自動車触媒需要の一時的な減少は価格下振れのリスクが出てくる。

 一方、欧州中央銀行(ECB)理事会では主要な政策変更を見送ったが、ラガルドECB総裁は「新型コロナウイルスが経済に及ぼす影響を認識し、次回理事会(12月10日)で政策措置を調整する必要がある」と、12月に追加対策を講じる可能性を示した。新たな措置が決定されればプラチナの下支え要因になるとみられる。

●南アのプラチナETF残高が急減

 プラチナETF(上場投信)残高は11月3日の米国で38.90トン(1ヵ月前38.34トン)、2日の英国で19.17トン(同18.67トン)に増加、2日の南アフリカで17.32トン(同19.32トン)に減少した。米国や英国で投資資金が流入したが、南アで急減し、合計0.94トン減となった。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、10月27日時点のニューヨーク・プラチナの買い越しは1万0051枚となった。7月28日の2万2412枚をピークとして縮小し、10月20日に7825枚と2019年7月以来の低水準となった。欧州の新型コロナウイルスの感染再拡大を受けて買い玉減少、売り玉増加で買い越しを縮小しており、ロックダウンをある程度織り込んでいる可能性もある。

 一方、ニューヨーク先物市場の指定倉庫在庫は引き続き増加した。11月2日の指定倉庫差在庫は65万7775オンス(1ヵ月前63万8511オンス)と引き続き増加しており、実需筋の売り圧力が強い。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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