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【特集】コロナ再拡大で石油需要見通し悪化、OPECプラスの増産計画は頓挫か <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 新型コロナウイルスの再流行を背景に、主要な産油国の動きが慌ただしくなってきた。米国や英国、フランス、ドイツなど主要国では一日あたりの感染者数が過去最多を塗り替えるなど、懸念されていた第2波の到来が現実となった。世界経済は引き続き疫病に蝕まれている。コロナショック後の石油需要の回復は遅れそうだ。

●増産に慎重なサウジ

 石油輸出国機構(OPEC)プラスは来年から日量200万バレル規模の増産を行うことで既に合意していたが、サウジアラビアがこの増産の延期を提案していると伝わった。その後、アラブ首長国連邦(UAE)やロシアは従来の合意に沿った増産の支持を表明し、増産に慎重なサウジと、需給見通しに楽観的な産油国とで主張は一時交錯した。

 ただ、ロシアのプーチン大統領はOPECプラスの現行の減産目標を維持する余地があるとの認識を示すなど、増産支持を一転させた。新型コロナウイルスの流行が顕著に拡大していることで、ロシアの判断の転換は早かった。新型コロナウイルスの流行が産油国の脅威であることは明らかであり、来年からの日量200万バレルの増産計画を押し通す意思は弱い。新型コロナウイルス流行の第1波が広がっていた当時、ロシアとサウジアラビアの協議決裂は史上初となる原油のマイナス価格を発生させており、ロシアも懲りているようだ。

 ロイター通信が報道した今月の共同技術委員会(JTC)の文書によると、OPECプラスが新型コロナウイルスの再流行やリビアの生産回復による供給過剰を警戒していることが明らかとなった。想定されている来年の供給過剰の規模は日量20万バレルと限定的だが、新型コロナウイルスの流行は読めず、需要見通しの下振れ懸念は強い。

 この懸念が文書となって公表されたことからすれば、増産計画の修正を提案しているサウジアラビア寄りの議論が進展していると思ってほぼ間違いなさそうだ。あるいは、プーチン露大統領が言及したように見通しの変化によっては、リスクシナリオとして減産もありうる。今月の共同閣僚監視委員会(JMMC)で来年の生産規模の変更について正式な提案はなかったが、来月30日のOPEC総会、翌日のOPECプラスの総会に向けて協議が繰り返されるだろう。

●増産計画は修正か

 現状の感染状況を踏まえると、来年1月からの日量200万バレルの増産を撤回する必要が高まっているのではないか。上述したように今月15日のJTCで来年の供給過剰の規模は日量20万バレルと想定されていたが、JTC後の2週間で需給見通しは一段と悪化した。リビアの生産回復は急速で来月には日量100万バレルの大台を回復する見通しである一方、新型コロナウイルスの第2波がどこまで猛威を振るうのか想定不能である。早ければ年内にも一部の国でワクチン接種が始まる可能性はあるが、楽観するような状況には程遠い。

 来月の30日OPEC総会を控えて、感染拡大や原油市場の動き次第では、臨時総会もありうる。OPECプラスが仲違いなどによって再び後手に回ることはないのではないか。増産幅の修正か、増産の一時見送りか、減産強化か、協議を見守っていくことになる。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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