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【特集】欧米株「コロナ大乱」の行方、“再びの3月暴落”はあるか <株探トップ特集>

新型コロナウイルスが収束するどころか再び勢いを増してきた。ここ欧米株市場が波乱安の展開をみせている。コロナ暴落はまた繰り返されるのか。

―“頑強推移”日本株の真相とこれから、事態収拾後の「強気相場」始動の確度―

 新型コロナウイルスが再び世界経済に脅威を与え始めた。ここにきて欧米株市場が波乱の様相を強めている。気温低下で冬の気配が漂い始めるなか、欧米で新型コロナ感染者数が急速に拡大傾向をみせており、フランスやドイツではこれに伴う経済活動の規制を余儀なくされる状況に陥っている。

●NYダウ900ドル安、恐怖指数も急騰

 前日の米国株市場ではNYダウが900ドルを超える下げで、ナスダック総合指数も400ポイントを上回る急落に見舞われた。NYダウは一時2万6500ドルを割り込み75日移動平均線を大きく下放れた。直近では9月下旬にも75日線を下に抜ける局面があったが、今回はその時につけた安値をマドを開けて大陰線で下回っており、明らかにムードが悪い。また、“恐怖指数”とも称され全体株価と逆方向に連動する米VIX指数については、前の日に比べ21%の急騰で40ポイント台に乗せ、終値ベースでは6月11日以来約4ヵ月半ぶりの高値水準に跳ね上がった。

 前日はこれに先立って欧州株市場の下落が際立っていた。各国の主要株指数の動向をみるとフランスが3.4%安、ドイツとイタリアは米国よりもきつい4%を超える下落をみせている。各国いずれも今月中旬を境に急速に下値を試す展開を強いられているが、その理由として挙げられるのはただ一つ、新型コロナ感染急拡大に伴うマーケット環境の悪化だ。

 直近で1日当たり感染者数が5万人を超えるフランスでは、事態を重くみて今月末から12月1日まで全土での外出制限が発表された。通勤・通学などはこの対象ではないが、外出する際には理由を明記した申告書を携帯することを義務づける徹底ぶりで、実質的にはロックダウン(都市封鎖)に近い。また、ドイツでは11月2日からレストランやバーなどの飲食店や劇場・映画館といった娯楽施設の営業を禁止する。「フランスでは医療崩壊に近い状態にある」(現地事情に詳しいアナリスト)とされ、もはや放置することができない状況にあるようだ。こういう環境下にあっては、株式市場でリスク回避の売り圧力が高まるのも仕方のない状況といえる。

●候補者2人が勝利宣言!?コロナ禍のカオスも

 同様に米大統領選を目前に控える米国も試練に見舞われている。1日当たりの新規感染者数が今月23日に8万人を超過し過去最高を記録、直近でも7万人を上回っており深刻な状況にあることに変化はない。こうしたなかで、来週3日に行われる大統領選がどうなるか、依然として予断を許さない局面にある。心配されているのは市場が渇望している追加経済対策案がいつどういう形で成立するかだ。

 大統領選は支持率ではバイデン氏が一貫して優勢だが、49選挙区(48州+ワシントンDC)において得票数が多い候補者が選挙人を総取りする“選挙人制度”が採用されているため、支持率がそのまま勝敗に反映されるとは限らない。更に今回はバイデン氏に有利に働く郵便投票に対し、トランプ米大統領は正当性を否定し負けても法廷闘争に持ち込む構えをみせている。松井証券シニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏は「投票所に足を運ぶのはトランプ支持層に多く、郵便投票の結果が確認される前に、トランプ大統領がいち早く強引な形で“勝利宣言”をするというケースも考えられる。トランプ、バイデン両氏が勝利宣言するというような前代未聞の事態に陥る可能性もあり、その場合は泥沼化しそうだ。当然、追加経済対策も当面は暗礁に乗り上げる可能性が高い」と指摘する。

●異色の底堅さ発揮する東京市場だが…

 ちなみに29日の東京市場では、日経平均株価は朝方大きく売りが先行して始まったものの寄り付きがこの日の安値となり、その後は一貫して下げ渋る展開となった。引け際に若干売り物が出たが、結局86円安でとどまった。日銀のETF買いが連日で発動されるとの思惑はあったが、それにしても異色の底堅さだ。

 ただし、窪田氏は「コロナ禍にあって、米追加経済対策の発動が遅れる状況となれば米国株の一段の下落は避けられず、東京市場もその影響は受けざるを得ない。日経平均は先行き2万2000円を割り込むような深押しも十分あり得る。少なくとも今買いに動くべきタイミングではない」という見方を示している。

 また、第一生命経済研究所主任エコノミストの桂畑誠治氏は「たとえ日本の新型コロナ感染が比較的軽微であっても、欧米株が下落トレンドをたどるなか日本株が上昇するシナリオは考えにくい。米国も大統領選の支持層で完全に分断されている状況で、選挙後も禍根を残し、先安観が強そうだ」という意見だ。

 しかし、株式市場の先行きについては非常に不透明で見えにくい状況にあることは確かで、第一線で活躍する市場関係者の間でもかなり意見が割れていることも事実である。

 証券ジャパン調査情報部長の大谷正之氏は「欧米で感染が再拡大し深刻な状況にあるが、既に一度は経験してきた道であり、そのぶん的確に対応できる意味もある。東京市場に目を向ければ国内企業の決算発表が比較的良好であり、株価も素直に反応するケースが多い。目先は欧米株主導で下値を探る場面もあるかもしれないが、中国がいち早く新型コロナを克服し経済回復色を強めていることにも着目すべきで、これを拠りどころに日本株も態勢を立て直すのにそう時間はかからないであろう」という見解を示している。

●「買っちゃえ日本」欧州から流れ込む投資マネー

 また、auカブコム証券投資情報室マーケットアナリストの山田勉氏は「これまでの経緯で明らかなように日本国内で新型コロナを過度に恐れる必然性はあまりない。また、米大統領選については、すんなり決まらないという可能性を株式市場は存分に理解している。法廷闘争などに持ち込まれることなく、きれいな形で(次期大統領が)決まる可能性もあるわけで、もしそうなった場合はどちらが勝っても米国株は急速にリバウンド局面に移行し、東京市場もそれに追随する格好となりそうだ」としている。

 とりわけ、強気で鳴らす東洋証券ストラテジストの大塚竜太氏は「結論から言って、押し目があれば迷うことなく断固買い下がる方針で報われるはず。欧米株市場はアルゴリズム売買に振り回されているが、日本は新型コロナを躱(かわ)していることと、企業の業績が思った以上に良く見直し機運が台頭している。過剰流動性に支えられた市場環境で株式市場に資金が流れ込む状況に変わりはなく、そうしたなか欧州株市場から、売る理由が見当たらない日本株への資金シフトが起こっており、(それが今の地合いの強さでもあり)全く弱気になる場面ではない」と歯切れが良い。

 今年を振り返れば3月にコロナショックともいうべき世界的な大暴落に遭遇したが、その後は一貫して下値を切り上げ、日経平均、NYダウともにコロナ前の水準をほぼ回復している。ナスダック総合指数については9月に1万2000の大台に乗せ最高値をつけたことは周知の通りだ。今回再び暴落の入り口にあるのか、それとも杞憂に終わるのか。眼前に横たわっているのは、経験豊富な市場関係者も意見が真っ二つに割れる難局面。ワクチン開発の遅れなどが取り沙汰されるなか、新型コロナを巡って強気と弱気が錯綜する相場は、今しばらく続くことになりそうだ。

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