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【特集】ゼロから始める「株探」の歩き方 ― (30)大株主の動きから、株式市場のトレンドをつかもう【日本の株主】

大株主の動きは株価動向に影響を及ぼす
横山利香(ファイナンシャルプランナー、テクニカルアナリスト)

◆保有株リストと保有比率の変化、二面で大株主を追跡

 まず各ページの上部にあるグローバルナビから「日本の株主」を選んでクリックします(図1)。表示された「日本の株主」のページでは、「【有価証券報告書】編」と「【大量保有報告書】編」に分かれていて、世界の機関投資家を中心とした日本の全上場企業における保有状況と、大株主の保有割合の増減情報を提供しています(図2)。


図1 グローバルナビの「日本の大株主」
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図2 「日本の株主」の【有価証券報告書】編と【大量保有報告書】編
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 まずは、日本最大の株主からみていきましょう。現在の日本最大の株主は、国民の公的年金の積立金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」です(先にも述べましたが2020年内に日銀が実質最大となるとみられています)。皆さんも、「公的年金の運用が四半期ベースで赤字(もしくは黒字)でした」といったニュースを聞いたことがあるのではないでしょうか。GPIFの投資先は国内の株式だけではなく外国株式や内外債券も対象となりますが、うち国内株式は資産構成でおよそ全体の4分の1を占めています。

 「【年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)】の保有銘柄リストを新掲載!」をクリックすると、世界最大規模の年金基金とされている「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が保有する銘柄一覧」をみることができます(図2、図3)。なお「日本の大株主」のページでは、左欄の「【有価証券報告書】編」の一覧を下に見ていくと、「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」がありますので、こちらからも確認することができます。


図3 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が保有する銘柄一覧
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「GPIF保有概要」では、年度に保有している銘柄数と保有銘柄の時価総額を表示しています。2019年度(2020年3月末)はコロナショックにより国内株式市場がダメージを被った影響もあり、時価総額が前年度より3兆円ほど減少していることがわかります。

 その下にある「GPIF保有の銘柄一覧」では、保有銘柄を確認することができます。一覧表を見ると、「前年比」に加え、「【2020年3月末】保有」と「【2019年3月末】保有」ではそれぞれの株数と持株比率が記載されています。ですから、前年度からどのような変化があるのかという視点で、銘柄の保有動向をつぶさに追うことができます。

 なお、一覧で銘柄が表示されるとはいえ、保有銘柄数は2000超とかなりの数にのぼります。そのため、これまでご紹介したように、表の上部にある「市場別」と「時価総額別」のフィルターを活用して、銘柄をある程度選別してみるとよいかもしれません。たとえば、東証1部の大型株を中心に取引している人の場合には、「市場別」の「1部」をクリックすることで、東証1部の銘柄に絞り込むことができます。

 次に、「【有価証券報告書】編」と「【大量保有報告書】編」を見ていきましょう。「【有価証券報告書】編」では、有価証券報告書に記載されている大株主の状況(上位10件)に基づいて、大株主が保有する銘柄リストを掲載しています。

 例えば中小型への投資でしばしば注目される光通信グループは、「【有価証券報告書】編」をみると光通信が168社、ブロードピークが48社、リトル・アイが1社、総合生活サービスが1社など多数の銘柄に投資していることがわかります。本体だけでなくグループ全体の動きがわかるのは大変便利です。「光通信(168社)」をクリックすれば、保有している168銘柄の一覧を確認することもできます(図4、図5)。


図4 【有価証券報告書】編の一般企業 「光通信グループ」
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図5 光通信が保有する銘柄一覧
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 この「【有価証券報告書】編」では海外投資家としてステート・ストリートやフィデリティ・グループといった資産運用大手、JPモルガン・チェース・バンクやゴールドマン・サックスなどの銀行世界大手、ノルウェー政府など海外政府系の保有株がわかります。国内投資家としては三菱UFJ銀行などの銀行、日本生命保険などの生命保険・損害保険、SBI証券や楽天証券などの証券会社、一般企業では先ほどの光通信グループのほかトヨタ自動車や三井物産、三菱商事など大株主として多くの銘柄を保有する企業がリストアップされています(図6)。


図6 【有価証券報告書】編と【大量保有報告書】編に登場する大株主たち
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 一方、「【大量保有報告書】編」では、保有割合5%以上の株主に提出が義務づけられている大量保有報告書に基づいて、特定株主について保有割合の増減記事を一覧で掲載しています。

 「大量保有報告書」では、上場会社の株券等について、新たに発行済み株式総数の5%超を取得した場合や、その後1%以上の増減などが生じた場合に、投資家が土、日、祝日を除き5日以内に、大量保有報告書もしくは大量保有変更報告書を提出しなければならないと決められていますので(5%ルール)、いち早く大株主の動きを探ることができます。

 こちらも、「海外投資家」と「国内投資家」に大きく分けられています(図6)。海外投資家ではブラックロックなどの資産運用世界大手、ゴールドマン・サックスといった銀行世界大手、証券会社ではクレディ・スイスといった錚々たる顔ぶれが並びます。国内投資家ではレオス・キャピタルワークスや野村アセットマネジメントなどの資産運用会社、三菱UFJフィナンシャル・グループなどの銀行、野村証券をはじめとする証券会社、一般企業・その他として光通信グループと旧村上ファンド系がリストアップされています。

 個人投資家としては、まずは大株主がどの銘柄を買い入れて、そして売り抜けるのかという点が気になるところですから、まずは大量保有報告書もしくは大量保有変更報告書で動きを注視したいところです。そして、「〇銘柄を△が買っているようだ」などの思惑が渦巻きやすいという視点では、「一般企業・その他」の「光通信グループ」や「旧村上ファンド系」については注目しておいてもよいかもしれません(図7)。


図7 【大量保有報告書】編の「光通信グループ」と「旧村上ファンド系」
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 物言う株主として旧村上ファンドの流れを汲む投資ファンドとして「エフィッシモ・キャピタル・マネージメント」がよく話題にのぼりますが、7月末には保有する東芝 <6502> [東証2]の株式の一部を売却したことが明らかになりました。自分が買おうと考えている銘柄や保有している銘柄の株価が大きく動いた時など、話題の大株主から大量保有報告書が出されていないかを確認するようにしましょう。

 市場外であれば影響を気にする必要はないかもしれませんが、仮に大量に保有する大株主が市場内で売却するということになると株価への影響も大きくなります。日頃から大株主の動向には注意しておくようにしたいですね!

 次回は、グローバルナビの最後の項目である「市場マップ」について解説する予定です。

 


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