【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ いまは9月相場を占う大事なときか
株式評論家 植木靖男
「いまは9月相場を占う大事なときか」
●3月安値を起点とする上昇相場は継続
“前門の虎、後門の狼”の故事ではないが、いま日本人は、新型コロナウイルスと熱中症に挟まれて動きが取れない、行き場のない閉塞感の中にある。
こうした危機感が充満しているわが国の中で、株式市場のみが活況を呈するということであれば、少々虫がよすぎるのではないか、と思う。
だが、多くのソフト、つまりサービスの需要がコロナで吹っ飛ぶ中で、同じソフト産業にあっても株式市場は恵まれた方かもしれない。
とはいえ、やはり夏枯れから逃れることはできないようだ。8月第3週は1日の売買代金が2兆円を割り込んでしまった。こうした枯れた市場での株価の短期予測はそれなりに難しいことは百も承知で考えてみたい。
13日、ついに日経平均株価は6月8日の高値2万3178円を突破した(終値ベース)。2カ月ぶりである。このことはなにを意味するのか。
本年3月19日の1万6552円を安値とした上昇相場が依然として継続していることを意味するのだ。
これはこれで結構なことであるが、一面ではやや心配もある。つまり、相場は人間と同じく長く生きれば生きるほど老いて行き、いずれ命脈を絶つということだ。3月安値からみればすでに5カ月を経過している。念頭に置いておきたい。
●景気敏感かハイテクか? 鍵を握る米長期金利
さて、8月14日に2万3289円で引けて、2万3000円台を固めたかと思った矢先、8月第3週に入って夏枯れとともに小幅ながら軟弱な展開となった。日米ともに同じパターンながら、週末にかけて日柄と値動きで重要日を迎えた。NYダウが反発し、それに呼応して日経平均も上げ、首の皮一枚つながった。もし週末、週明けも下げれば、押しはかなり深くなるはず。ここ数年、首の皮一枚でつながり土壇場で息を吹き返したケースは多々ある。
問題は8月第4週だ。9月相場を占う意味で重要だ。まずは20日の終値2万2880円を下回らぬことが肝要だ。
いまはそれを祈るばかりだ。株価を支える実質金利は日米欧ともマイナス金利が続いている。FRB(米連邦準備制度理事会)が2022年度まで金利を抑制する方針は株価にとって好材料だ。株価が自壊作用を起こさない限り、明日に希望が持てる。
ところで、ここでの物色対象は複雑性を増している。たとえば、ナスダック指数が史上最高値を更新しても、わが国のハイテク株は動かず、全く対照的な景気敏感株が上げるという日がある。
どちらが有利なのか。鍵を握るのは米長期国債金利だ。いま投資家は戸惑っている。先の高値0.8%処を上回ってくれば、景気敏感株が再騰するとみられる。先般の景気敏感株買いは打診的な買いであろう。
さて、今回は個別対応として、次の銘柄に注目したい。まず、マザーズからメドピア <6095> [東証M]だ。今期業績予想を上方修正した。エムスリー <2413>を追うにふさわしい。
次にソリトンシステムズ <3040> 。テレワークソリューションやセキュリティ対策サービスを提供。最後にZホールディングス <4689> に注目。LINE <3938> との統合、EC事業の成長性からみて株価の居所が違うのではないか。
2020年8月21日 記