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【市況】植草一秀の「金融変動水先案内」 ―経済は順調に回復するか-

植草一秀(スリーネーションズリサーチ株式会社 代表取締役)

第40回 経済は順調に回復するのか

●東アジアの堅調株価推移

 日経平均株価は6月9日に2万3185円の戻り高値を記録しました。1月17日の2万4115円から3月19日の1万6358円まで7757円、32.2%の急落後、6月9日まで6827円、88%の急反発を演じました。しかし、6月9日以降は緩やかな調整局面を迎えています。6月15日に2万1529円、7月31日に2万1710円の安値をつけて、なお弱含みの推移を続けています。

 狭いレンジでのもみ合いが2カ月続いたことになります。相場は上か下に保ち合い放れを演じる気配を強めているように見られます。中国の武漢での感染拡大から世界に伝播した新型コロナウイルスですが、発生源ともされる中国の株価がもっとも堅調な推移を示しています。

 上海総合のコロナショックでの株価下落率は15.4%にとどまりました。3月19日以降は上昇に転じ、7月13日には3458ポイントの高値を記録しました。下落幅に対する反発率は169%に達しています。同様に堅調な株価推移を示しているのが台湾と韓国です。台湾の株価下落率は30.1%、反発率は123%に達しています。韓国の株価下落率は36.8%、反発率は109%に達しています。中国、台湾、韓国ではコロナショックの株価下落を完全に埋め合わせて株価上昇が観察されているのです。

 これに対して、英国は株価下落率36.3%に対して株価反発率が58%、フランスは株価下落率40.6%に対して株価反発率が64%にとどまっています。同じ欧州でも、ドイツは株価下落率40.7%に対して株価反発率は91%に達しています。

●感染再拡大の放置

 新型コロナウイルスについてはさまざまな見解が表出されています。100年前に猛威を奮ったスペイン風邪のような深刻な影響を警戒する声は強いのですが、他方に、コロナは実態を偽った人為的な騒ぎであるとする「陰謀論」も提示されています。

 東アジアに関して言えば、コロナの被害は著しく軽微にとどまっています。日本のコロナ致死率は公表統計ベースでは2.5%という高水準を示していますが、その主因は検査が十分に実施されていないことを背景とする感染者数の過少確認にあると思われます。

 検査がもっとも積極的に行われているシンガポールの数値を用いると致死率は0.05%にとどまっています。同様に積極的な検査が行われている英国の致死率15%の300分の1という水準です。

 致死率が0.05%であるなら、経済活動を止めてしまうロックダウンなどの政策運営は過剰対応であると言えます。したがって、東アジアに限って言えば、過剰な警戒は現時点では必要ないと言えそうです。ところが、英国の致死率15%が事実だとすると、感染を放置することは公衆衛生政策として容認することができません。極めて厳しい行動抑制が正当であると言えるでしょう。

 100年前のスペイン風邪流行の際には、第2波の感染拡大で死者が急増しました。ウイルスが変異して強毒化することがあり得ると指摘されています。安倍内閣は感染拡大を放置していますが、この過程でウイルスが強毒化すると悲劇が日本を襲うことになります。

●リーマン級の景気後退

 安倍内閣がようやく景気後退を認めました。私が執筆しているレポートでは昨年前半から、2018年10月を境に日本経済は景気後退局面に移行したと記述してきました。しかし、安倍内閣は景気拡大が続いていると言い張ってきました。実は、2014年3月から2016年5月までの2年強の期間も景気後退期でした。消費税増税を主因とする不況だったのです。

 しかし、安倍内閣はこの不況を隠蔽して、「いざなぎ超え」だの「いざなみ超え」だのと喧伝してきました。2018年10月からの不況も主因は消費税増税です。安倍内閣は7月30日になってようやく不況への転落を認めましたが、この事実は安倍内閣が不況突入1年後に消費税増税を強行したことを意味するものです。

 昨年10月の消費税率10%実施で日本経済の落ち込みはさらに深刻化しました。その不況深刻化の局面で発生したのがコロナショックなのです。鉱工業生産指数、鉱工業在庫率指数、景気動向指数のいずれもが、日本経済の急落下を鮮明に示しています。すでに日本経済はリーマン危機時の不況並みの落ち込みを示しているのです。7月末にかけて株価下落圧力が強まったのは、本年4-6月期の企業決算数値が公表されたことによっています。

 2019年度と2020年度の2年間で上場企業の経常利益が4割から5割減少する見通しです。そうなると、日本の株価の割安さは消滅してしまうことになります。

●コロナはただの風邪とはまだ言い切れない

 米国が2兆ドル規模の超大型経済対策を成立させたことをきっかけに、各国株価が急反発しました。中国、台湾、韓国のようにコロナ収束を実現して経済活動の再拡大を推進している国のリスクは限定されますが、コロナ感染拡大が続く国では、経済活動の順調な拡大を明確には展望しがたい状況です。

 日本時間の8月7日夜に発表される7月米雇用統計と米国の追加経済対策協議が注目され、その結果によっては経済楽観論が強まることも考えられるのですが、米国での感染拡大もまだ収束したとは言えない状況にあり、現時点で手放しの楽観は許されません。

 日本では安倍内閣が国内旅行を推進する一方で、小池都知事が帰省自粛を要請するなど、行政の対応が支離滅裂な状況に陥っています。外食、旅行・観光、旅客輸送、アパレル、コスメ、興行などの分野の売上減少は長期化する様相を強めています。大型補正予算が編成されましたが、日本経済の順調な活動拡大を誘導するものになっていません。

 客観データを分析すると、人の移動拡大が4週間後の新規感染確認者数増大をもたらしています。人の移動データは7月22日にピークを更新しているので、8月中下旬に新規感染者数がさらに拡大することも想定されます。

 「コロナはただの風邪」と笑って済ませる状況がすぐに到来するとは考えにくい状況が続くと思われます。

(2020年8月7日記/次回は8月22日配信予定)


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