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【特集】クイック Research Memo(2):専門職紹介を中心に総合人材サービスを展開

クイック <日足> 「株探」多機能チャートより

■事業概要

1. 会社概要
クイック<4318>は、就業希望者と求人企業を結び付ける総合人材サービス事業を展開している。人材紹介を中心に人材派遣・紹介予定派遣・業務請負を運営し、人事労務コンサルティングなど人材サービスの周辺事業も幅広く展開していることから、同社と就業希望者、求人企業との接点は幅広い。なかでも、看護師や施工管理技術者、MR(Medical Representative:医薬情報担当者)など、労働需給がタイトになりがちな専門職の人材紹介に強みがあり、「看護roo!」など同社の専門職向け登録サイトは人気となっている。そのほか、企業の人材採用をサポートするリクルーティング事業や、「日本の人事部」など企業経営者や人事担当者向けのポータルサイト、海外日系企業向けの人材紹介や人材派遣、人事労務コンサルティングなどの事業を展開している。

同社は、1980年に(株)日本リクルートセンター(現 リクルートホールディングス<6098>)出身の現代表取締役会長兼グループCEOである和納勉(わのうつとむ)氏により大阪で設立された。当初は社名を株式会社クイックプランニングと称し(1990年に現社名へ改称)、関西でのリクルート代理店第1号として、求人広告代理業と採用教育に関するコンサルティング業務を展開した。事業は順調に拡大して東京や名古屋に支店を出すほどに成長したが、1991年のバブル崩壊で転機を迎え、従来のリクルーティング事業中心の事業構造から、人材紹介事業やIT・ネット関連事業への進出など多角化の舵を切った。2001年のJASDAQ市場上場を弾みにM&Aを積極化、海外にも事業領域を拡大した。リーマンショック機に、看護師など求人ニーズの強い専門職の紹介事業を本格化させ、これが現在の主力事業にまで成長している。なお、足元では新型コロナウイルス感染症の影響が世界経済へ広がっている。同社も短期的には影響が懸念されるものの、少子高齢化やグローバル化などから人材採用のニーズは今後も強まると予想されること、リーマンショックの際も影響が小さかった看護師など専門職に強みがあることから、新型コロナウイルス感染症拡大の影響からの立ち直りは相対的に早く、中長期成長への影響も限定的と弊社では見ている。


専門職紹介とシステムの自社開発で差別化

2. 業界環境と同社の強み
人材サービス業界は、リーマンショックによる低迷から抜け出した後、アベノミクスと少子高齢化による人手不足を背景に10数年成長を続けてきた。なかでも、専門職に対する求人ニーズは非常に強い状態が続いている。一方、就業希望者と求人企業の接点は、スマートフォンの普及などからインターネット求人サイトの伸びが著しくなる一方で、フリーペーパーの増加は緩やかになり、従来型の有料求人情報誌や折り込み求人誌は低迷気味である。また、就業希望者の争奪戦が徐々に激しくなっていることから、就業希望者にとって魅力的で役立つ情報が多数掲載されているWebサイトやスマートフォンアプリの開発・運営は、人材サービス業にとって必須となってきた。

このような業界環境のなかで同社の強みは、専門職の人材紹介と自社内のエンジニア部隊にある。同社が人材を紹介している主な専門業種・職種は、看護師など医療・福祉、MRなど製薬・医療機器、施工管理技術者など建築・土木・設備、自動車を含む電気・機械、化粧品などである。専門職の紹介はニッチで収益化しづらいが、相対的に高い利益率を確保でき、需給がタイトなため経済減速時でも比較的ニーズが強いという特徴がある。同社は、専門職紹介で獲得したノウハウを他の専門職分野へ横展開することでいち早くドメインを拡大するというブティック戦略を取っており、効率化しづらい専門職の人材紹介の収益化に成功している。一方、同社のエンジニア部隊は、システム周辺のみならず、紹介登録者獲得のための自社Webサイト、専門職の便利ツールなど各種アプリケーションの開発・運営を行っている。社内に自社のエンジニアがいるということは、同社の業務システムを熟知し、専門職独特の仕組みや慣習を理解したうえでシステムを構築することができるため、Webサイトやアプリケーションは常に効果的・効率的な状態を保つことができるのである。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《YM》

 提供:フィスコ

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