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【特集】コロナ契約減のダメージから、まっさきに脱却できる賃貸仲介会社はどこ?

株探プレミアム・リポート

登場する銘柄:ハウスコム<3275>、AMBITION<3300>、LIFULL<2120>

筆者:高山英聖(Hidemasa Takayama)
専門紙「全国賃貸住宅新聞」記者。不動産会社、ハウスメーカー、不動産投資家などを精力的に取材している。

 新型コロナウイルス感染拡大は、様々な場面でこれまでの常識を変えようとしている。賃貸住宅市場もその流れと無縁でない。今後の「部屋探し」は、非対面での物件案内や契約の締結が進み、また狭くても職場の近くに住もうとする「職住近接」のトレンドも終焉を迎える可能性がでてきた。

 適者生存。新しい環境の変化にいち早く適応する会社が生き残り、今後の成長株として期待を集めるはず。その候補はあるのか。

緊急事態宣言が「オンライン内見」「IT重説」を加速

 部屋探しのオンライン化に積極的な上場賃貸仲介会社の1社が、大東建託<1878>を親会社に持ち、国内184拠点で部屋探し店舗を直営するハウスコム<3275>だ。ビデオ通話アプリを最大限に活用して完全非対面による手続きを可能としている。

 物件の室内を見学する内見では、その物件に興味を持った顧客を仲介会社の社員が案内するのが、ビフォーコロナの常識。だがアフターコロナの時代は、撮影された賃貸物件のビデオ画面を見て、顧客が「○」「×」ないしは「△」を判断する機会が増える可能性がある。

■オンライン内見のイメージ
【タイトル】
出所:ハウスコム

 ハウスコムはすでにこうした"デジタル内見"システムを導入済み。物件に出向くのは、同社の社員のみで顧客が同行せずに済むようにしている。現地に出向いた社員は室内の様子を、ビデオ通話の画面に映す。

 それを見ながら遠隔地にいる顧客が、例えば「洗面所も映して下さい」と頼むと、社員は洗面所の様子を顧客がチェックしやすいように様々な構図で、映像を写す。社員は顧客とアプリを通して会話をしながら、内見業務を代行できる体制を整えている。

 また不動産にまつわる契約を交わす際にも、オンライン対応を進めている。契約時には、物件に関する権利関係や物件の属性、取引条件を明示し、さらに手付金や支払金の保全措置など重要事項を、宅地建物取引士が説明することを宅地建物取引業法で、義務付けられている。

 従来は対面で説明することが義務付けられていたが、2017年10月からテレビ電話などオンラインでのやりとも可能にする「IT重説」が解禁された。ハウスコムでも、このIT重説を導入し、顧客と非接触で契約条件の説明を行っている。

IT重説は4月のみで約1500件、年2万超えを見込む

 ハウスコムは5年前から段階的に非対面サービスを導入してきたが、その活用を加速させる原動力になったのが今年4月に発令された緊急事態宣言だ。いわゆる「IT重説」の利用実績は4月だけで約1500件に達したという。前年度のIT重説は約1万8000件で、年間仲介成約数の2割強を占める。

 今のペースでIT重説が増えれば今年度は「低く見積っても2万件は超すだろう」と同社の田村穂社長は見る。仲介成約数に占める比率が増す可能性も高い。

 直接対面しなくてよいIT重説は、移動の制約・時間・費用もろもろ削減できる意味で、経営の効率化にもつながりやすく、業績にその効果が表れてくるのかは、今後の決算で注目点になる。

■重要事項説明を、テレビ通話を行うイメージ
【タイトル】
出所:ハウスコム

地場の仲介会社もオンライン対応が進み、もはや業界の常識に

 コロナを機に新たに非対面接客に対応し始める地場大手・中小企業も増えつつある。新潟県の地場大手仲介会社・リビングギャラリー(新潟市)は、その1社だ。

 リビングギャラリーでは4月から、ビデオ通話アプリ『Zoom』を使ったオンライン接客、内見、IT重説のサービス対応を始めた。今井雅浩取締役は「最初は操作に不慣れがあったが、比較的問題なく進められる」と語る。今まで仕組みそのものは構築できていたが、使えていなかった。今後は本格的にネット対応の比率を上げていきたいという。

 同社は、新潟県中心に19店舗を構え、賃貸仲介件数は年1万3000件弱。県内では断トツトップの賃貸仲介会社として、業界内では全国的にも知名度のある企業だ。その同社がオンライン対応に舵を切ったのは、店舗来店者と契約数の減少が大きく関係している。

 専門紙・全国賃貸住宅新聞がこの4月中旬に47都道府県の地場大手不動産会社47社に実施した聞き取り調査では、4月前半の来店者数・契約者数が「前年同月より減少した」と回答した会社が過半を占めた。減少幅は1~4割と大小あるが、新潟県のリビングギャラリーは、どちらも4割ほど減った。

 この逆風下、悪影響を最小限にとどめるためにできることが、ITによる非対面接客の強化だ。不動産会社向けコンサルを手掛けるプリンシプル住まい総研(東京都港区)の上野典行所長は「ITに柔軟な姿勢が、同業との差別化のポイントとなる」と語る。先のリビングギャラリーは、非対面対応に加えウェブ集客を強化して、4月下旬以降は「例年並みの成績を取り戻してきた」(今井取締役)と強調した。

 非対面対応は、テレビ通話を使った内見・重説業務、また契約書類・鍵の受け渡しは郵送を使えば一度も顧客と接触せずにやり取りすることが可能だ。国土交通省の職員も「その方法で問題ない」と回答している。

 こうした仕組みの構築は、従前から難しいものではないが、不思議とそれを行う会社は限られていた。数年前から対応済みの企業があるにはあったが、それは自社の業務効率を上げる意味合いが強かった。

 しかしコロナ禍で4月から外出抑制が本格化したことで、潮目が変わった。消費者側と企業側の非対面ニーズが初めて一致し、上野所長は「導入が加速する」と見る。

 予兆は見えてきている。部屋探しサイト大手のLIFULL<2120>では、会員の不動産会社に対して提供しているビデオ通話機能の利用件数が、4月は前年同月の19倍に増えたという。実数は非開示だが、広報の堀内麻希氏は「ニーズは急増している」と語る。

賃貸管理でもRPA、AI導入が進む

 今後、ハウスコムのように不動産賃貸を手掛ける企業がITを活用する取り組みは加速していくと見られる。AMBITION<3300>もその1社で、特に賃貸管理業務のIT化に積極的に取り組んでいる。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。



 

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