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【特集】新産業「オンラインイベント」の先行者、“時代の要請”乗る企業は <株探トップ特集>

「東京ゲームショウ2020」が通常開催の中止を決定、オンライン開催への変更検討を発表した。東京ゲームショウに限らない。立ち上がろうとしているオンラインイベント産業の行方を追った。

―リアルイベント断念で脚光、「東京ゲームショウ」オンライン開催検討なども追い風―

 新型コロナウイルス感染拡大により、 イベントの中止が余儀なくされている。こうしたなか、インターネットを活用したオンラインによる展示会やセミナーなどに注目が集まっている。オンラインイベントの運営企業はもちろん、システムなどの支援サービスを提供する企業にとっては、事業拡大への大きな機会となりそうだ。時代の要請を背景に、飛躍を目指す「オンラインイベント」の関連企業を追った。

●風向き、急速に変わる

 オンラインイベントについては、コストの大幅削減、場所を選ばずどこからでも参加できる、開催日時や参加人数にも柔軟に対応できるといった多くの利点が挙げられる。とはいえ、現実の会場が存在し、生身の観客が集う従来型のイベントを超える魅力については、なかなかイメージが伝わらなかった経緯がある。ある展示業界関係者は「従来、ブースを訪れた来場者と担当者が対面し直接説明を受けることを重要視してきた。こうした、長年続いてきた慣習が障壁となり、オンライン上でのバーチャルなイベントについては理解がいまひとつ深まらなかった」と言う。

 しかし、今年に入り急速に風向きが変わった。 新型コロナウイルス感染防止のために、人と人との濃厚な接触を避けることが求められたことで、イベントの開催が相次ぎ中止に追い込まれた。加えて、東京五輪・パラリンピックの2021年への延期が決定したことにともない、メディアセンターとして使用予定だった東京ビッグサイトの貸出休止期間が大幅に延長されることになったことも、オンラインを活用したイベントへの関心を一層高めることになった。同施設は、国内最大の展示会・見本市会場であり、イベント開催に関係するさまざまな企業の経営にも大きな影響を与えることになりそうだ。日本展示会協会によると、東京ビッグサイト東展示棟・東新展示棟・西展示棟が引き続きIBC(国際放送センター)、MPC(メインプレスセンター)として据え置かれ、21年11月まで利用ができなかった場合、主催者・支援企業・出展社が約1兆5000億円の売上損失になると算出している。こうした感染拡大による影響は、イベント業界に新たな刺激を与え、潜在的なオンラインイベント需要を掘り起こすことにもつながりそうだ。

●ITメディア、問い合わせ実施件数ともに大幅増加

 IT系ネットメディア事業を展開するアイティメディア <2148> は、2月26日に「イベントのオンライン移行を支援する取り組みを強化」すると発表した。同社は2009年からセミナーや展示会といったイベントの開催をオンラインで実現するソリューションを提供している。同分野ではトップクラスの実績を持ち、30~5000人規模のオンラインセミナーを年間200件以上実施している。同社の調査によると、新型コロナウイルスの感染拡大による各種イベントの開催中止は、東京マラソン一般参加の中止が発表された2月17日を境に大幅に増加したという。会社側では「(イベント中止が相次ぐ)こうした状況のなかで、当社のオンラインソリューションが代替ニーズにマッチしていると認識しており、問い合わせも急増している。オンラインイベントの実施件数は2月17日以前の3倍程度に拡大し、足もとの好業績にもつながっている」(イベント事業推進部)と話す。今後の展開については「リアルとバーチャルが共存することで、大きなメリットが生まれてくると考える。この状況が収束した後、元の通りリアルの展示会だけに戻るということではなく、バーチャルと併設されることにより更なる需要の拡大につながるとみている。そこをしっかり提案していきたい」(同)。

●Jストリームは引き合い急増

 Jストリーム <4308> [東証M]もニーズを捉える動きをみせている。同社は、インターネット動画ライブ中継やオンデマンド放送を提供するが、4月21日には、ワンストップオンライン配信パッケージ「イベキャス」の提供開始を発表。イベント企画、チケッティング、映像制作、オンライン配信、プロジェクト・マネジメントといった各分野で実績を持つ3社とタッグを組み、オンラインイベントの需要が高まるなか、主催者がスムーズでリーズナブルに開催、実施できることを目指すという。4月30日取引終了後には20年3月期の決算を発表。連結経常利益は5億6200万円(前の期比76.2%増)と従来予想の4億3000万円を大きく上回り、12期ぶりに過去最高益を更新した。昨年8月末に連結子会社化したビッグエムズワイの業績が想定より伸びたことが寄与。また、新型コロナウイルス感染症対策としてライブ配信やイベントの事前映像収録などの引き合いが急増するなか、医薬業界を中心に多くの新規案件を獲得したうえ、コンテンツ視聴の拡大でデータ流量が増加したことも収益を押し上げた。

●攻勢掛けるシャノン、スペースマーケット

 こうしたオンラインイベントへの取り組みが活発化するなか、商機を捉えるべくここにきて攻勢に出る企業は多い。シャノン <3976> [東証M]は4月9日、マーケティング支援システム「SHANON MARKETING PLATFORM」のオンラインカンファレンスサービスを提供すると発表。同サービスは大規模なカンファレンスやフォーラムをオンラインで実現するサービスで、事前登録から会員管理、メール配信まで揃ったイベントシステムを提供するほか、ライブ配信やオンデマンド配信が選択できるという。また、配信機材や音響機材を利用した当日の撮影サービスにも対応している。加えて、同月23日には、既存のセミナーをウェビナー(ウェブとセミナーを合わせた造語)に移行したい客層に向けて、「ウェビナートライアルパック(期間限定)」の提供を開始すると発表しており、ニーズを果敢に捉える姿勢を見せている。

 遊休不動産などのスペースを貸し借りする「スペースマーケット」を運営するスペースマーケット <4487> [東証M]は、4月10日にパートナー企業と業務連携を行いオンラインイベントの支援サービスを開始すると発表した。同社は、法人向けに「イベントプロデュース」事業を行ってきたが、デジタルコミュニケーションやライブ配信を強みとする各パートナー企業と連携し、オンラインイベントの企画から会場選定・機材準備・配信をサポートする。「ハイブリッド型バーチャル株主総会」のようなリアルとオンラインを組み合わせたイベントの実施や、社員総会やカンファレンスなど、秘匿性の高いオンラインイベントの開催も可能だという。

●ブイキューブは「V-CUBEセミナー」

 テレワーク関連株の一角として、株式市場で一躍脚光を浴びることになったブイキューブ <3681> もオンラインセミナーでニーズを取り込む姿勢だ。同社が手掛ける「V-CUBEセミナー」は、1セミナーあたり最大5000拠点に同時配信でき、高い双方向性と臨場感あふれるオンラインセミナーを低コストで実施できるという。オンラインセミナーを年間2500回以上開催しており、スタジオ、または現地でのテクニカルな配信サポートだけではなく、ホテル、回線、食事、各種代行手配など、細部にわたるサービスを提供している。株価は2月14日につけた年初来安値495円を底に急速人気化。4月1日には1483円まで買われ年初来高値を更新し、株価は1ヵ月半でおよそ3倍化した。現在は1200円を挟みもみ合うが、切り口多彩なだけに注目場面は続きそうだ。

 イベントサイト「machicon JAPAN」を運営するリンクバル <6046> [東証M]にも目を配っておきたい。同社は、オンラインビデオチャットサービス「V BAR(ブイバー)」を3月26日から提供開始した。現在は、オンライン飲み会や女子会、合コン、ヨガ教室、カメラ教室などさまざまなオンラインイベントを展開。4月30日には、サービスリリースから約1ヵ月で利用回数累計5万回を突破したと発表している。

●Sansan、「オンライン名刺交換機能」で商機

 オンラインイベントの活発化は、周辺産業の新サービス普及を後押ししそうだ。Sansan <4443> [東証M]は、3月中旬にクラウド名刺管理サービス「Sansan」の新機能として、「オンライン名刺機能」と「オンライン名刺交換機能」を追加することを発表。機能提供は6月予定だが、オンライン名刺交換機能を用いれば、オンラインでのイベント開催時や商談においても、これまでと同じように名刺交換ができるとしており、今後活躍の舞台が広がる。また、今月4日、政府の専門家会議は新型コロナウイルスの感染防止のための「新しい生活様式」の実践例を示し、このなか「会議や名刺交換はオンライン」としたことも追い風となりそうだ。

 新型コロナウイルスは、社会生活の急激な変化を促すとともに、新しい産業の芽を大きく刺激するという状況を生んでいる。オンラインイベントの広がりもそのひとつだが、奇しくも今年が“テレワーク元年”となり、これを取り巻く新サービスの勃興を呼んでいる。こうしたなか、9月後半に開催予定だった「東京ゲームショウ2020」が通常開催の中止を決定し、オンライン開催への変更を検討すると発表。新型コロナウイルスとの戦いは、長期戦になるとの見方もあるなか、オンラインイベントへの関心は更に高まりをみせることになりそうだ。

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