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【特集】飲み会もライブも総会も… 森羅万象「オンライン化」時代の最前線株 <株探トップ特集>

飲み会、ライブイベント、株主総会、名刺交換、教育、仕事…。すべてがOnlineになるステイホーム時代の最前線に迫る。

―ステイホーム“新ビジネス”、大いなる可能性を追う―

  新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、「ステイホーム(家にいる)」が呼びかけられている。 テレワークを導入する企業も増加しており、人との濃厚接触を避けることが求められているが、この結果として経済活動も著しく停滞しており、企業業績にも大きな影響が出始めている。こうしたなか、新ビジネスで苦境を乗り越えようとする企業が出てきた。ピンチをチャンスに、新しいビジネスで飛躍を目指す企業を追った。

●「ビジネスチャンスを捉えようとする動きも」

 さまざまな研究機関がワクチンや治療薬の開発を急いでいるが、残念ながらまだ多くの時間を要しそうだ。「アビガン」などの有効性は頼もしいものの、特効薬が存在しない現在、テレワークなどによるステイホームで人と接触しないことが感染拡大阻止につながる大きな抑止になることは間違いない。しかし、「ヒト」「モノ」の流れが滞れば、当然のことながら「カネ」もストップすることになる。こうした状況下、チャンスの芽を見いだし、機敏に動き出した企業も少なくない。

 帝国データバンク(東京都港区)が3月後半に発表した「新型肺炎が日本経済に及ぼす影響」というリポートでも「新型コロナウイルスで業績への影響が避けられないなかでも、収束後の社会変化を見据え、ビジネスチャンスを捉えようとする動きも出ている」と指摘。確かに、テレワーク実行のためのソリューションを提供する企業は、期間限定の無償提供などにより新たな顧客層の開拓に余念がない。株式市場でもこうした動きを評価し、株価は敏感に反応している。感染拡大を背景に、テレワーク関連のすそ野が大きく広がっているのは象徴的な事例だが、それ以外でも新たなビジネスの芽が、いま大きく育とうとしている。

●Jストリーム、オンラインイベント増加にらむ

 3密(密閉、密集、密接)からの回避が強く求められている現在、厳しい状況に置かれているひとつがイベント業界だ。今後、緊急事態宣言が解除されたとしても、多くの観客が集まることになるイベントの開催は当分難しい状況に置かれそうだ。こうした状況下、オンラインによるイベントの増加をにらんだ動きが加速している。

 ネット動画ライブ中継やオンデマンド放送を提供するJストリーム <4308> [東証M]は21日、イベントレジスト(東京都渋谷区)、LockUP(同)、TAMARIBA(同)と共同で、各社の強みを生かしたワンストップオンライン配信パッケージ「イベキャス」の提供を開始したと発表した。同サービスは、イベント企画、チケッティング、映像制作、オンライン配信、プロジェクト・マネジメントの各分野で実績のある4社が集結し、各社の強みをパッケージ化したもの。今後、インターネットを活用したオンラインイベントの需要が高まるなか、イベント主催者がスムーズでリーズナブルに開催、実施できることを目的としており、幅広いカテゴリーのイベントへ対応が可能としている。株価は、3月中盤につけた638円を底に急速に切り返し、現在は年初来高値圏の1800円近辺でもみ合っている。

●ブイキューブ、アステリアはバーチャル株主総会でタッグ

 また、テレワーク関連の一角として注目度が高いブイキューブ <3681> とシステム連携ソフトの開発などを手掛けるアステリア <3853> は、15日取引終了後にバーチャル株主総会(インターネットから参加できる株主総会)の推進で協業することを発表した。感染予防策として経済産業省が推進しているバーチャル株主総会において「報告聴講」、「質問」、「議決権行使」をワンストップで実現するという。総会のライブ配信とブロックチェーン議決権行使で感染予防対策の徹底につなげる計画で、投資家の関心も高い。両社では、バーチャル株主総会は感染予防だけではなく、今後の社会で求められニーズは更に広がるとしている。

●ガイアックス、出資先が「みんなのオンライン飲み会」

 3密の代名詞のひとつが「飲み会」だ。22日には、政府の専門家会議から「人との接触を8割減らす、10のポイント」が発表され、そのなか「飲み会はオンラインで」と提言した。この提言以前から、外出自粛要請を受けてさまざまなソリューションを利用したオンライン飲み会は広がりを見せている。

 ガイアックス <3775> [名証C]は6日、あこがれの有名人からビデオメッセージが届くサービスを展開する出資先のオクリー(東京都千代田区)がCtoCオンラインイベントに特化したプラットフォームサービス「みんなのオンライン飲み会」の提供を開始したことを発表。いままでのオンライン飲み会は仲間同士によるものが多かったが、このサービスは既存の知り合いを超えて参加者を探すことが可能で、誰でも自由にテーマを決めて簡単にイベントを開催することもできる。また、参加費を設定することも可能で、新たな収入源を得る機会にもなる。感染拡大で苦境に立つエンターテインメント業界や中止を余儀なくされているリアルイベントなどをオンラインから支えていくことを目指すという。ガイアックスでは「反応は上々だ。新しい出会いを求めるニーズが高まるなかで、これは“来るんじゃないか”という期待感はある」(広報)と話す。

 なお、オクリーは21日に「みんなのオンライン飲み会」に「プロダクション人力舎」をはじめとする芸人の出演協力が決まったと発表。芸人によるオンライン飲み会の開催や、ユーザー主催のオンライン飲み会に芸人がゲストとして参加することも可能としており、参加費用や芸人の招待費用がかかるという。

●メディアシークは「マイクラスTV」提供開始

 感染拡大を背景に学校の休校が続いているが、やカルチャースクールにとっては、ステイホームはまさに死活問題だ。カルチャースクール向けに事業者向け管理プラットフォーム「マイクラス」を展開するメディアシーク <4824> [東証M]は、リアルの授業とオンライン授業、どちらも大切にしたいスクール事業者向けに、動画配信プラットフォーム「マイクラスTV」の提供を開始した。今すぐにでも授業をインターネット経由で配信したいスクール事業者の細かなニーズに合わせ、オンライン授業配信プラットフォームを構築することができるという。

 株式市場では、eラーニング銘柄にもスポットライトが当たり、そのすそ野も広がっている。ICT活用の教育用システムの企画・開発・販売を行うチエル <3933> [JQ]、ネット学習教材を提供するすららネット <3998> [東証M]、eラーニングシステム「SLAP」を展開するアイスタディ <2345> [東証2]をはじめとして多くのeラーニング銘柄が注目を集めているが、改めてオンライン教育への関心が高まった格好だ。こうした動きは、一過性に終わることなく、日本の教育のありようを大きく変える可能性がある。世界に比較して遅れをとっているとも伝わるなか、いま大きな変革の時を迎えている。

●ランサーズ、発注問い合わせが急増

 新型コロナウイルスの影響は、経済活動におけるニーズの掘り起こしも広げている。フリーランスと企業を、仕事領域でマッチングさせるプラットフォームを運営するランサーズ <4484> [東証M]は3日、「テレワーク拡大による企業・フリーランスの働き方の変化」に関する調査結果を公表。このなかで、同社が運営するフリーランス人材を斡旋するプラットフォーム「Lancers」の3月の企業による発注問い合わせ数が19年12月比76%増となったとしており、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、企業の販管費の見直しや有事に備えた人材を確保したいニーズが高まっていると分析。また、フリーランス登録者数は同58%増となったという。会社側では「これを契機として、企業マインドの変化をしっかり捉えていきたい」(IR)と話す。同社は、昨年12月にマザースに上場、テレワーク関連の一角としても関心が高い。株価は、波乱相場の影響を受け3月23日には400円まで売られたが、ここを起点に上昇に転じ今月17日には1060円まで買われた。現在は上昇一服、800円半ばで頑強展開。

●Sansanは「オンライン名刺交換機能」など追加へ

 クラウド名刺管理サービス最大手のSansan <4443> [東証M]にも注目したい。同社は、「Sansan」の新機能として、「オンライン名刺機能」と「オンライン名刺交換機能」を追加することを発表。ユーザーは、自身の名刺情報をオンライン上でも手軽に送ることができるようになるといい、テレワークやオンラインでの業務が加速するなか、新しいニーズをとらえる構えだ。機能提供は6月を予定している。同社は13日、20年5月期の連結業績予想について営業利益を7億2400万円から5億9100万円(前期8億4900万円の赤字)へ下方修正した。ビジネスイベント「Meets」の開催計画の見直しや、新型コロナウイルスの影響による大型ビジネスイベントなどの開催見送りなどを考慮したという。株価は、7日に3605円で直近安値を付けたあと、業績を織り込んだ形で急速に出直り色を強め、現在は5000円台半ばで上値指向継続。

 そのほかでは、テレワーク推進で脱はんこ文化が求められるなか契約締結サービス「クラウドサイン」を展開する弁護士ドットコム <6027> [東証M]にも株式市場の視線は熱い。同社は、きょう「クラウドサイン」について4月に導入企業数が8万社を突破したことを発表した。株価は高値圏を快走しており、時代のニーズを追い風に今後も成長期待が続きそうだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大は、いまだ収束の兆しが見えない。経済活動の先行きも不透明だが、逆境をばねにしようとする企業も多い。思わぬ形でやってきた、テレワーク元年。新型コロナウイルスとの戦いは続くが、新ビジネスの芽は確かに育とうとしている。

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