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【市況】明日の株式相場戦略=巣ごもり、AI、バイオ周辺に着目

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 週明け27日の東京株式市場では日経平均が急反発、前週の暗いムードが雲散霧消したかような強調展開となった。今週は日米欧の中央銀行の金融政策決定会合が集中する週で、金融緩和ウィークに売り方が暗躍しにくいという見方は事前コンセンサスとしてあったが、それでも週初からこれほどまで強い展開は大方の予想を超えていた。堅調な米株先物を横目に東京株市場では例によってアルゴリズムの先物買い戻しで日経平均が500円を超える上昇をみせ、2万円の看板が立つ急勾配の斜面を一気に駆け上がってきた。明日にでもこの2万円ラインに手が届く状況にある。具体的な材料は不在で総論としては買いにくい環境に違いなく、2兆円そこそこの全体売買代金をみてもエネルギーは伝わってこない。いわゆる売り方が作る相場を地で行く展開となっている。

 日本は規制が緩やかな分だけ、新型コロナウイルスの感染収束に向けてのプロセスも時間を要しそうだが、欧米では新型コロナの感染者数の増加ペースが既に鈍化しており、経済活動再開への道筋が前方に見えてきた。拙速な規制解除は感染拡大第2波につながる可能性も大きく中期的に予断は許されないが、売り方の立場とすればそれまで高水準に積み上がった売り残を放置しておくほどの余裕はない。日経平均は1月の2万4000円近辺から1万6000円台前半までの大暴落を経て今の位置まで戻っており、まだ半値戻しの水準に過ぎず、売りを仕掛けた側のトータルで利益を確保できればよいという思惑が顕在化している。

 全体相場の縮図として象徴的だったのは、きょうのファナック<6954>の動きだ。同社が、前週末24日引け後に発表した20年3月期の決算は最終利益段階で前の期比半減となる733億円と大幅な落ち込みをみせたが、株価は下げるどころかマドを開けて急騰し底値圏を離脱、最近では記憶にない一時1800円を超える上げ幅で3月初旬以来の水準を回復した。マーケットコンセンサスを上回っていたとはいっても、わずかであり、中国向け受注の回復を読み取ったという解釈もあるが、ここまで買い人気が集中するのは少なくとも自然体ではない。株券を調達して売り建てていた向きの買い戻しが浮揚力を与えたことは明白だ。

 個別では巣ごもり消費で何度か取り上げた電子書籍のイーブックイニシアティブジャパン<3658>が今期好決算見通しを好感して値幅制限いっぱいに買われる人気となった。この流れで、足もとはコスト先行とはいえ富士山マガジンサービス<3138>や、海外にも布石を打つパピレス<3641>など引き続きマークしておきたい。また、占いコンテンツのザッパラス<3770>に意外性あり。巣ごもり経済の穴株的な位置で独特の雰囲気を醸す。業績面からのアプローチは難しいものの、短期割り切りスタンスで注目される可能性がありそうだ。

 人工知能(AI)関連の中低位株ではデータセクション<3905>が株価400円台に位置しておりジリ高歩調を継続、時価総額の割には重い株だが中期的に上値余地を感じさせる。今後5Gの商用化本番で自動運転分野などへの取り組みも加速することが想定され、同社のAI分野の開発案件にスポットライトが当たりそうだ。

 新型コロナとの絡みで出世株が相次ぐバイオ関連では今月中旬にピックアップしたテラ<2191>やプレシジョン・システム・サイエンス<7707>が鮮烈に上値を指向している。特にプレシジョンシステムはかなり強力な上昇波を形成してきたが、きょうはストップ高に買われる人気となった。製薬国内最大手の武田薬品工業<4502>がかなり強い上昇トレンドを継続し、きょうは大幅高に買われた。ここだけを切り取っても、バイオや医薬関連株の期待値の高さを暗示している。そのなか、新型コロナ関連では思惑ではなく実績を積み重ねている銘柄としてPCR検査で高い実績を持つ栄研化学<4549>の2000円近辺は注目しておきたい。

 日程面では、あすは3月の完全失業率、3月の有効求人倍率の発表がある。海外ではFOMCが29日までの日程で開催される。4月の米CB消費者信頼感指数が開示されるほか、米7年国債の入札も予定される。また、スウェーデン中銀が政策金利を発表する。
(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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