【特集】理想買いロード突っ走る「eスポーツ関連」、目指すは巨大なる世界市場<株探トップ特集>
世界的に巨大市場に成長しているeスポーツだが、遅れている日本でも国が活性化に向け本腰を入れ始めた。これを背景に関連企業には活躍の機が迫っている。
―有力投資テーマとして存在感を高めるeスポーツ、日本だからこそ伸びしろは大きい―
■理想買いロード突っ走る「eスポーツ関連」、目指すは世界の巨大市場
新たな投資テーマとして eスポーツが、ここ急速に存在感を高めている。膨張する市場を背景に、ゲーム各社はもちろん大会の企画・運営、グッズ販売などビジネスのすそ野も拡大の一途にある。経済産業省も9月から、日本eスポーツ連合(JeSU)と「eスポーツを活性化させるための方策に関する検討会」を開催するなど、巨大市場を眼前にして国もようやく本腰を入れ始めている。eスポーツ関連株が理想買いロードを走り始めるなか、関連ビジネスを展開する周辺企業も動きを強めている。
●「逆に考えれば伸びしろが大きい」
eスポーツとはエレクトロニック・スポーツの略で、格闘、シューティング、戦略などの対人ゲームが競技化されたもので、コンピューターゲームやビデオゲームで行われる。世界のトッププレーヤーの中には数十億円規模で稼ぐプレーヤーも登場。企業がスポンサーとなったプロチームやプロリーグが次々と発足しており、その市場規模は拡大の一途をたどっている。一方、日本に目を転じれば、ようやく認知度が高まり始めたとはいえ、一般的には「大規模なゲーム大会」といった程度の認識の低さも壁となり、ビジネスとしては世界から“周回遅れ”との声も聞こえる。株式市場でも、ここにきて注目を集めてはいるが、話題先行の感も少なくはない。
ある関係者は「世界に比べ出遅れは顕著だが、逆に考えれば伸びしろが大きいともいえる。世界有数のゲーム会社を擁する日本だけに、ここからの巻き返しに期待している」と話す。KADOKAWA <9468> 子会社のGzブレイン(現KADOKAWA Game Linkage)が、昨年12月に発表した国内のeスポーツ市場動向調査によると、スポンサー料や放映権、チケット販売などゲーム産業としての市場規模は、2022年には約100億円に達すると予測。周辺市場・産業への経済効果も期待できるだけに、関連企業はeスポーツという新たに誕生した成長市場でのビジネスを見据えた動きを加速させている。
●TOW、取り組み加速
イベント企画・制作大手のテー・オー・ダブリュー <4767> は、来年の東京オリンピック・パラリンピックを控えイベント関連の一角として注目を集めているが、eスポーツ分野でもスポットライトが当たっている。同社は、11月27日にJeSUに、正会員として加盟したことを発表。9月には、eスポーツイベントの企画制作プロデュース、演出クオリティー向上のためのパッケージ・プロダクト開発を行う専門チーム「TOW×T2 Creative e-Sports Unit TTe」を設立するなど、その取り組みが際立っている。
業績も絶好調だ。11月8日に、20年6月期第1四半期(7-9月)の連結決算を発表し、営業利益が5億6500万円(前年同期比91.6%増)となったと発表。なお、通期業績予想は営業利益20億4000万円(同2.2%増)とする従来計画を据え置いている。株価はここ上げ足を速め前週5日には947円まで買われ年初来高値を更新している。きょうも底堅さを見せており、切り口が豊富なだけに注目場面は続きそうだ。
●デジタルハーツは入念な布石
デジタルハーツホールディングス <3676> は、コアゲーマーだけでも4000人以上のスタッフが在籍しており、eスポーツへの参加を積極的に進めている。昨年は世界最大の格闘ゲームの祭典「EVO Japan 2018」を運営。eスポーツチーム「デジタルハーツゲーミング」の育成にも力を入れる。また、10月にはロート製薬 <4527> とeスポーツで協業を開始するなど活動領域を広げている。同社では「将来の巨大市場を見据え、その布石として、さまざまな施策をとっている」(広報)と言う。11月11日に発表した19年4-9月期の業績は増収減益。M&A関連費用などの先行投資が響いた格好だが、下期業績回復期待も漂う。株価は11月8日に855円まで売られ年初来安値を更新したが、ここを起点に切り返し急。きょうは4日ぶりに反落しており、1000円大台割れ接近で踏ん張りどころ。
●GameWithが海外へ足がかり
ここeスポーツ分野で頭角を現しているのがGameWith <6552> だ。同社は11月28日、タイにおけるeスポーツ大会イベント企画・運営を手掛けるInfofed社(本社シンガポール)への出資を決定したと発表。投資金額は500万円だが、Infofed社は事業拡大に向けた株式による資金調達を現在検討している段階で、出資シェア獲得に向け、将来株式による資金調達を実行する際、株式に転換することを約定する投資契約による投資を先行して実施するとしている。会社側では「さまざまな面での、先行投資だ。加えて、タイ市場が今後成長するということを見据えた情報収集という側面もある。出資は東南アジアを含む海外全体への足掛かりといえる」(広報)。また、8月にはJeSU副会長(現任)の濵村弘一氏が同社の社外取締役に就任したことでも注目を集めた。これについては「eスポーツだけではなく、ゲーム全般に対して新しい展開を見出すことを目的に要請した。ただeスポーツ事業に関して、注力していくことは間違いない」(同)と話す。株価は800円を挟みもみ合う展開となっている。
●オンキヨー、東プレ、ピアズなど
そのほかeスポーツ周辺では、ゲーミング及びeスポーツ市場に向けたゲーミング機器向け新ブランド「SHIDO(シドウ)」で攻勢を掛けるオンキヨー <6628> [JQ]、ゲーミングキーボードで人気を博す東プレ <5975> などにも目を配っておきたい。また、今年6月にマザーズに上場したピアズ <7066> [東証M]は11月19日に新たな事業としてeスポーツイベント企画運営受託事業を開始すると発表した。若年層向けゲーミングスマートフォンを製造販売する携帯製造販売業者の販売促進を支援するのが狙いだという。
当然のことながらeスポーツ関連では、バンダイナムコホールディングス <7832> 、コナミホールディングス <9766> 、スクウェア・エニックス・ホールディングス <9684> 、カプコン <9697> といったゲーム関連の中核をなす銘柄にも注目が集まっている。特に、年末商戦に突入するなか、ゲーム関連株に物色の矛先が向かいやすい時期を迎えており活躍期待が高まる。
eスポーツのイベントも盛り上がりを見せ始めている。直近では、11月23日に幕張メッセでサイバーエージェント <4751> 子会社のCyberZとエイベックス <7860> グループのエイベックス・エンタテインメント、テレビ朝日ホールディングス <9409> 傘下のテレビ朝日が共催する国内最大級のeスポーツイベント「RAGE」が開催され注目が集まった。このなか「RAGE Shadowverse 2019 Winter」GRAND FINALSでは、約6000人という多くの参加者から、予選を勝ち上がった8人による決勝大会が行われ、優勝者は賞金400万円と世界大会「Shadowverse World Grand Prix 2019」(優勝賞金1億1000万円)への出場権を獲得した。
今後も、eスポーツ市場はイベントの増加に加え、規模の急拡大が見込まれている。こうした拡大路線を背景に、株式市場では理想買いから現実買いの途上で、幾度となく注目を浴びることになりそうだ。
株探ニュース