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【市況】明日の株式相場戦略=5G周辺で新たな思惑を宿す銘柄は?

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 きょう(26日)の東京株式市場は日経平均株価が3日続伸となったが、前場に噴き上げた反動が後半に顕在化した。強い相場ではあるが、今週は週後半に米国株市場が感謝祭で休場となる関係もあって、外国人投資家の動きが鈍い。東京市場は薄商いのなかアルゴリズム売買によって振り回されやすい地合いであり、きょうはその傾向が特に強かった。ちなみにきょうの全体売買代金は3兆1000億円と約3週間ぶりの高水準だったが、引け際に1兆2000億円相当のMSCIの銘柄入れ替えに絡む売買が加算されており、実質的には2兆円を割り込む水準だった。

 この日、カギを握ったのは新華社通信やブルームバーグの米中協議に関する報道だった。午前中に「米中が第1段階の合意に向けて対話を続けることで合意した」と伝わり、この「合意」の部分に反応したアルゴリズムが、例によって「間断なき機械的な先物買い」を入れ、これに連動する現物へのインデックス買いで日経平均は一時300円超の上昇をみせ2万3600円台まで駆け上がった。 

 しかし、中身を吟味するまでもなく「部分合意に向けた対話を続ける合意」というのは、これまでと状況に大きな変化はない。今のところ交渉が決裂していないという途中経過を伝えたに過ぎない。当然これに続く買いは見込めず、サヤ取り狙いの空売りを含め日経平均は踵(きびす)を返すことになった。そのターニングポイントが午前10時47分に瞬間風速でつけた2万3608円だ。ただ、その後値を消すところまで行かないのが現在の相場の基礎体力の強さといえる。後場に入り日経平均は一時58円高まで上げ幅を縮小したものの、その後は持ちこたえ再び上値を慕う展開に変わった。今後も対中関税引き上げの“次のポイント地点”である12月15日に向けて、ニュースヘッドラインに反応するアルゴリズム売買による乱気流の発生は避けられないが、急な値動きに際して冷静さを失わないことが投資家の心得となる。

 もう少し中長期のタームで相場を俯瞰してみる。今の日本株の上昇は主体別でみると、外国人投資家が現物・先物ともに一手買いの様相をみせている。月次で見ると外国人投資家は現物については10月を境にこれまでの売り主体から一転して日本株買いの急先鋒に変わった。ちなみに10月に外国人は日本株を現物で1兆1000億円以上買い越すというド派手なパフォーマンスを演じた。日経平均が日足チャートで三空を形成して2万1000円台半ばから一気に水準を切り上げたのもこの時期と合致する。

 その時に変化した潮の流れが今もなお継続している。ただし、10月の急騰劇は市場参加者が限られていた。売買代金は2兆円そこそこで1兆円台の日も珍しくなかったが、過熱感のないなかで日経平均は不思議なくらいスルスルと上昇した。この時はまだ保有株で利益の乗る投資家が少ない一方、売り建てていた株で損を被る投資家が慌てて手仕舞いに動いたという背景がある。

 今はどうか。売りポジションで踏ん張って何とか利益を取ろうとする動きが底流している。例えば、NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信<1570>の需給動向をみると、今の投資家心理がよく見て取れる。直近データ(15日申し込み現在)で信用残は買い残が増加傾向をたどり、売り残は減少傾向にあるが、それでも信用倍率は0.79倍と売り長の状態が5週連続で続いている(日証金では25日現在で逆日歩こそついていないものの貸株残高が融資を大幅に上回った状態)。日経レバの信用残が1倍を下回る0.X倍というのは、実はかなりイレギュラーな状態といってよく、昨年の11月~12月の信用倍率は10~16倍あった。それだけ買い残が積み上がっていたわけで、今のような売り買いのバランスは真逆。何かのキッカケがあれば燎原の火のごとく買い戻しを誘発しやすいという状況が続く。依然として懐疑の森の中で全体株価は育つ環境にあるとみてよい。

 個別では5G関連株の一角が強い。アンリツ<6754>はとりあえずひと相場終えた印象だが、中小型株の中に再び仕切り直しの買いが流入し始めた。そのなか、通信制御ソフトに強く5G関連で需要取り込みが期待されるアイ・エス・ビー<9702>の上値指向が強い。また、タツタ電線<5809>は5G関連の穴株として頭角を現す公算が大きい。同社は「5G向けスマートフォンに対応した電磁波遮蔽フィルムを既に開発済み」(会社側)という。

 日程面では、あすは米国で重要経済指標が相次ぐ。7~9月の米GDP改定値のほか、10月の米耐久財受注、米個人所得・個人消費支出、米中古住宅販売仮契約などが発表される。また、米7年国債の入札も予定される。米国以外では10月の中国工業企業利益が発表される見通し。(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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