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【特集】台風対策で緊急テーマの国土強靱化、防災・減災で「建設コンサル」に脚光 <株探トップ特集>

安倍政権が掲げる国土強靱化で重要な役割を担うのが建設コンサルに携わる企業だ。河川氾濫や土砂災害が続くなか、株式市場でもここにきて一気にその存在感を高めている。

―日本列島を襲う記録的豪雨、いまマーケットの熱視線が注がれる企業群を追う―

 台風15号の傷が癒えぬなか、日本列島を19号が猛威を振るい河川の氾濫、決壊、土砂災害などが各地で発生し、東日本を中心に甚大な被害となっている。更に、今回の21号に伴う記録的な豪雨により、再び大きな被害が発生した。地球規模の気候変動はかつてない自然災害を生み出し、その脅威の前に日本列島はなすすべもなく、国土の強靱化が急務であることを改めて意識させることになった。今後、復旧活動に加え抜本的な対策が求められることになるが、国家強靱の礎(いしずえ)となる防災・減災事業を展開する「建設コンサルティング」の役割は大きい。関連株のいまを追った。

●再評価機運高まる

 国土交通省による被害状況をみると、19号については、いまだ「応急対策中」の河川が存在。また、21号の影響による大雨でも河川が氾濫、再び尊い人命が失われるなど、ここ連続して発生する天災に被害が拡大し、復旧活動もままならない地域もある。気候変動により、予想を超える災害の頻発化が懸念されるなか、今後も不安が募る状況だ。ただ、いっそうの 防災・減災に向けての対応により、被害を最小限にとどめることはできる。まさに安倍政権が掲げる国土強靱化がそれであり、これに向けての更なる施策が求められることになる。豪雨に伴う河川の氾濫、決壊、そして土砂災害などが多発するなか、国土強靱化は今秋の補正予算編成のもと国策として改めて注目される可能性も高い。

 こうしたなか、建設コンサルに携わる企業に関心が集まっている。建設コンサルの事業領域は、国土基盤の整備にはじまり、街づくり、設計、環境、新エネルギー、システム開発、そして防災・減災などとすそ野は広く、さまざまな社会的基盤構築のニーズに応えている。ただ、建設コンサルに関連する銘柄は総じて商いも薄く、株式市場においては地味な存在だったが、国土強靱化が急務となるなか再評価機運が高まりそうだ。

●素早い対応のアジア航測

 台風19号の被害発生直後、すばやい対応をしたのがアジア航測 <9233> [東証2]だった。19号は12日夜に伊豆半島に上陸、東日本を中心に甚大な被害を与えたが、翌13日には上空から被害地域の緊急撮影を実施、情報を公開することで現地の詳細解明及び2次災害の抑制を図っている。同社は航空測量大手で、得意分野の空間情報を利用することで建設コンサルにも注力している。会社側では、こうした想定外の災害について「緊急対応しなければならない自治体、あるいは国といったところからの業務に加え、以前から災害協定などを結んでいるところも多く、業務としては増加するとみている。また、復旧復興のための前段階として、まず現状を把握(航空測量)、それをもとに対策のための計画、設計を行うことになる」(経営企画部)。また、今回の台風でも被害の大きかった福島県郡山市に提供している「3次元浸水ハザードマップ」については、「身の安全を守るという意味で、もっと活用されることを願っている」(同)と話す。今後、河川の氾濫、浸水など頻発するなか、3次元浸水ハザードマップへの関心も高まりそうだ。

 ある業界関係者は「災害が起きたことで、これが業績に反映するとはなかなか言いにくいものがある。しかし、当社を含め防災・減災にかかわる企業の業務が増え、それに寄与できるということについては、国土強靭化の推進という観点からは間違いなく良いことだ」と慎重に言葉を選びながら話す。

●応用技術は防災コンサルで高い実績

 応用技術 <4356> [JQ]は業務効率化ソフトに加え防災コンサルにも傾注している。土木建築分野では構造解析やアセットマネジメントなどで独自ノウハウにより需要を開拓。また、地震や河川氾濫などの自然災害に対して数値シミュレーションモデルを構築、防災コンサルで高い実績を持っている。業績も好調で、18年12月期営業利益は前の期比倍増の3億3000万円と大幅な伸びを達成、続く19年12月期も前期比9割増の6億3000万円を見込む。また、19年1-6月期時点で前年同期比2.1倍の5億9100万円と対通期進捗率は94%に達している。同社では「中長期的に(防災・減災に絡む)仕事は増えていくと考える」(IR)としており、防災分野での更なる活躍期待が高まりそうだ。株価は26週移動平均線をサポートラインとする上昇トレンドを構築しているが、業績再評価で一段の水準訂正に期待もかかる。

●いであは切り口多彩

 いであ <9768> は、9月11日に「早期がん診断につながる技術開発」について発表し、ストップ高となるなど注目を集めているが、本業は建設コンサル。CCTVカメラを有効活用することで、上流から下流まで空間的に密な水位測定を可能とし、より高度な洪水予測・河川管理を行う「CCTVカメラ等を用いた河川水位観測システム」をはじめとして防災・減災分野でも貢献している。株価は、9月11日に一時ストップ高、翌日も上ヒゲで273円高の1469円まで買われ年初来高値を更新。その後調整を経て、きょうは1400円台を回復しており高値奪回を視野に入れている。同社が8月5日の取引終了後に発表した19年12月期第2四半期累計(1-6月)の連結経常利益は、前年同期比38.4%増の28億9200万円に拡大し、通期計画の15億5000万円を既に超過している。がん診断の分野でも注目されており、切り口多彩な面でも妙味がありそうだ。

●電線地中化でオオバ

 甚大な被害を及ぼした今回の台風では、電線地中化にも大きな関心が集まった。先月9日の早朝、関東に上陸した台風15号では、強風により電柱が倒壊、千葉県を中心に大規模停電が発生し大きな混乱を呼んだ。これに伴い、電線地中化がにわかにクローズアップされ、電線などの共同溝を手掛けるイトーヨーギョー <5287> [東証2]、ベルテクスコーポレーション <5290> [東証2]などに買いの矛先が向かった。電線地中化はもはや景観問題だけにとどまらず、防災関連の中核のひとつとして意識されることになる。

 こうしたなか、電線地中化関連として急浮上したのがオオバ <9765> をはじめとする建設コンサルの一角だった。オオバは、東電タウンプランニングと無電柱化推進事業で業務提携をしているが、ここにきて両社協働による成果が着実に実り始めており、これを評価する買いが株価を刺激した。ただ、同社は10日の取引時間中に第1四半期(6-8月)連結決算で、営業損益が3億9500万円の赤字(前年同期2億9400万円の赤字)、最終損益が2億6400万円の赤字(同2億2200万円の赤字)となり、営業損益の赤字幅が拡大したと発表。受注高は同4.0%増の57億6600万円となったものの、建設コンサルタント業務の完成高が減少し、売上高が減少した。一方で販管費は増加していることから、営業損益が悪化した格好だ。株価は、この業績発表を受けても堅調に推移し18日には737円まで買われ年初来高値を更新したが、その後はさすがに調整し現在は700円割れとなっている。ただ、電線地中化は国土強靱化においては、もはや外すことのできない存在であり、加えて長期にわたるテーマだけに、今後も折に触れて注目されることになりそうだ。

●長大は業績上振れでストップ高

 長大 <9624> は、道路や橋梁など公共投資向けのウエートが高い建設コンサル。同社は前週末25日の大引け後に、19年9月期連結業績について売上高が289億円から290億円(前の期比0.1%増)へ、営業利益が22億円から29億円(同69.7%増)へ、純利益が13億5000万円から18億4000万円(同71.8%増)へ上振れて着地したようだと発表。グループを挙げての業務効率化に加え、人員増強を中心とする体制強化の一部が翌期にずれ込み、人件費や経費が計画を下回ったことが寄与した。更に、業績上振れに伴い従来40円を予定していた期末一括配当を53円に増額するとあわせて発表した。前の期実績の36円に対しては、17円の増配になる。株価は、きょうこれを受けてストップ高となった。なお、同社では同時に、22年9月期に売上高357億円、営業利益30億円を目指す中期経営計画を発表しており、今後の展開からも目が離せない。

●日本工営、FCHD、オリコンHDにも注目

 そのほかでは、株価が高値圏の3300円近辺でもみ合う日本工営 <1954> に注目。総合建設コンサルの最大手で海外での展開力でも目を引く。また、PER7倍前後、PBRも0.7倍近辺と株価指標面で割安感が際立つFCホールディングス <6542> [JQ]、商い薄が難点だがオリエンタルコンサルタンツホールディングス <2498> [JQ]にも目を配っておきたい。

 気候変動の脅威は、想像をはるかに超える自然災害を起こし甚大な被害を招いている。待ったなしの国土強靱化、建設コンサル企業の責務は大きくなる一方だ。

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