【特集】欧州EVシフト加速待ったなし、車載2次電池関連に新たなる上昇旋風 <株探トップ特集>
EUの排ガス規制の達成期限が間近に迫るなか、欧州メーカーのEV化の動きが加速している。国内でもEV普及の流れが強まるなか、リチウムイオン電池や全固体電池関連株などが再脚光を浴びている。
―EUの排ガス規制の達成期限が間近に迫るなか、リチウム電池にビッグウェーブ到来―
欧州連合(EU)の 排ガス規制の達成期限が間近に迫るなか、二酸化炭素(CO2)排出量削減への取り組みが待ったなしの状況である。こうしたなか欧州メーカーの電気自動車(EV)化の動きが加速している。日本ではハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)が主流となっているが、環境規制を乗り切るにはEV化が必要であり、国内でも同様の動きが見込まれている。
●東京モーターショーで脚光浴びるEV
「第46回東京モーターショー2019」が東京ビックサイトとその周辺施設で開催されている(~11月4日まで)。近く市販される新型車のほか、次世代自動車のコンセプトカーが目玉となる。次世代自動車では、HV、PHV、EV、燃料電池自動車(FCV)などが挙げられるが、国内では、HV、PHVが人気上位のようだ。これは電気が切れた場合にガソリンで対応できるといった心理的な安心感からによるものもある。しかし、欧州の自動車メーカーはEUの排ガス規制達成期限が間近に迫るなか、CO2排出量削減への取り組みが急務といえる。
ドイツの調査会社調べでは、排ガス規制の目標達成には2021年までに乗用車のEVのシェアを3倍、HVのシェアを5倍に引き上げる必要があるとみているようだ。更に、排ガス排出量を25年までに15%、30年までに37.5%削減しなければならない。この規制をクリアできないと、メーカーは基準を1グラム超えるごとに1台当たり95ユーロの罰金が科せられる。排ガス規制を満たさない車の一部は販売して罰金を科せられるよりも、販売をやめた方がコストが安くなるともみられている。
●各社各様のコンセプトでEV需要開拓
こうしたなか、今回の東京モーターショーでは、各自動車メーカーはEVコンセプトカーなどを相次いで発表している。トヨタ自動車 <7203> はレクサスブランドでEVのコンセプトカーを出展。日産自動車 <7201> は、小型EVコンセプトカー「ニッサン IMk」、ホンダ <7267> は、ハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-MMD」を採用した新型「フィット」を世界初公開するほか、来年に日本販売を開始するEV「HONDAe」の量産モデルを日本初公開する。マツダ <7261> は同社初の量産EVを出展するほか、三菱自動車工業 <7211> は、電動のSUVコンセプトカー「MI-TECH CONCEPT」を出展する。
また、最近では独フォルクスワーゲン(VW)が23~24年に同社の小型車「ポロ」と同サイズのEVを発売すると発表。仏ルノーは1万ユーロ(約120万円)以下のEVを5年以内に発売すると伝えられている。こういった流れが加速はしているものの、欧州規制には届かないとみられており、EVへのシフトがより早まることが考えられる。小型EVの生産を増やしたとしても、搭載電池が高価格であることから利ザヤは小さく、売れば売るほど赤字が拡大する可能性もあるが、そういった意味では利ザヤが稼ぎやすい高価格帯のEV化を急ぐ必要がある。実際に消費者はSUV(多目的自動車)へシフトしていることもあり、小型EVは街乗りのイメージで増えたとしても、今後は大型車などへのEV化が加速することが考えられよう。
●物色対象として最有力なリチウム電池関連
EV化への加速には搭載電池の価格低下及び高性能化、更に充電設備や充電時間短縮などが課題とされており、現在主流であるリチウムイオン電池と合わせて、次世代電池の開発が急がれる。先日にはノーベル化学賞の日本人受賞でリチウムイオン電池関連の一角が動意をみせていたが、EV化へのシフトが加速するなか、改めて投資対象としてリチウムイオン電池に市場の関心が高まりやすいとみられる。関連として旭化成 <3407> が挙げられるが、個人投資家好みの銘柄としては、田中化学研究所 <4080> [JQ]、戸田工業 <4100> 、日立化成 <4217> 、ジーエス・ユアサ コーポレーション <6674> 、日本ゼオン <4205> 、マクセルホールディングス <6810> 、古河電池 <6937> などが注目される。
また、ポスト・リチウムイオン電池として注目されているのが 全固体電池である。電解液の代わりに、酸化物セラミックス系電解質を使用するため液漏れの恐れがなく、燃えない、熱に強いといった安全性の高い電池である。トヨタ自動車は20年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、全固体電池を搭載したモビリティの開発を進めている。村田製作所 <6981> は全固体電池のサンプル出荷を開始しており、エネルギー関連市場への展開を加速。TDK <6762> はセラミックス型全固体電池を開発しており、量産を目指している。個人投資家の関心を集めやすい銘柄としては、FDK <6955> [東証2]、カワタ <6292> 、東邦チタニウム <5727> 、ニッカトー <5367> などが挙げられる。
●非接触充電関連も人気化素地を内包
そのほか、課題となる充電設備や充電時間短縮に関する銘柄では、充電設備の関連として安川電機 <6506> 、東光高岳 <6617> 、ダイヘン <6622> 、日東工業 <6651> など。充電時間短縮においては急速充電があるが、将来的な成長局面においては非接触充電が主流となりそうだ。ブリヂストン <5108> 、ローム <6963> 、東洋電機製造 <6505> は東京大学などと共同で、「第3世代走行中ワイヤレス給電インホイールモータ(IWM)」の開発を進めている。タイヤ内に受電コイルを搭載し、道路上にある送電コイルにおいて充電する。交差点など信号機で止まっているときに充電ができるようになるのも、そう遠くはないと思われる。
加えて、日本では大型台風が相次いで上陸するなど、天災に見舞われているがこれを契機として、EVを充電設備として利用する動きもみられている。各自治体が今後導入する動きなどもEV化を加速させる一因になりそうだ。
株探ニュース