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【特集】米中の報復連鎖で世界株大波乱! 暴落相場のトリガーは引かれたか? <株探トップ特集>

週明けの東京市場は日経平均が急反落。年初以来約7カ月半ぶりの安値水準に売り込まれた。市場関係者に取材して、ここからの相場展望を探った。

―為替の円高、企業業績の悪化、消費税引き上げ、山積する悪材料とその処方箋―

 週明け26日の東京株式市場は、米中摩擦の激化を背景としたリスク回避の波が押し寄せる形で日経平均株価は急落、一時は2万円大台割れも意識させる全面安商状を呈した。寄り直後に先物を絡め2万100円台まで売り込まれた後は下げ渋ったが、薄商いのなか戻りも限定的で、日経平均は結局449円安の2万261円で着地。終値ベースで今年1月10日以来の水準まで下値を切り下げた。

●中国の仕掛けで「パウエルプット」は機能せず

 前週の時点で、米国にとどまらず世界の株式市場では23日のジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演に一極集中的に関心が高まっていた。そして同講演でパウエル議長は、投資家の思惑に沿う形で世界景気減速に対する警戒感を示すとともに、今後の追加利下げに前向きな姿勢を示した。これは米株式市場にとっては紛れもなくフレンドリーで、俗に言われる「パウエルプット」となるはずだった。

 ところが同日、皮肉にもマーケットの視線はこれとは別の方向に集中する形となった。中国政府が対米報復関税として、原油や自動車、農産物など約750億ドル相当の米国製品に5~10%の追加関税を課し、9月と12月の2段階に分けて実施することを発表したことで眼前の風景はガラリと変わった。これを受けてトランプ米大統領が即座に「中国の報復関税への対応を講じる」としたことから、米中両国の間で繰り広げられている関税合戦が泥沼化するとの印象を強く与えた。本来ならば上昇相場回帰への契機となり得たパウエル発言は、米中両国の対立激化、いわば報復の連鎖を懸念してどこかに吹っ飛ばされる格好となってしまった。

●人民元安、そして円高と為替市場で逆風吹き荒れる

 23日の米国株市場ではNYダウが600ドルを超える急落、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数も240ポイント安と大きく売り込まれ、恐怖指数とされるVIX指数は一時21.07まで上昇、市場の不安心理が高まった状態を示唆する20を上回った。

 このリスクオフの流れは週明けの東京市場をはじめとするアジア株市場を直撃。中国・上海株市場だけでなく、香港、台湾、韓国の各市場も下値模索の動きを強め、特にデモが収束気配をみせず地政学リスクを抱える香港市場は一時3.5%以上の下げに見舞われた。

 外国為替市場も当然ながら波乱モード。渦中の中国では一段と 人民元安が進行、26日の海外市場で一時1ドル=7.16元と大幅安となり、こうなると米国の関税引き上げの緩衝材として中国政府が容認していたとされる人民元安とは性質が異なり、中国からの資本流出懸念を増幅させ、リスク回避に向けた思惑を高める背景となり得る。また、同時並行的に安全資産とされる円買いが加速、ドル・円相場は一時1ドル=104円台後半まで円高が進行し、東京株式市場にとっては輸出セクターを中心に売り人気を加速させる背景として、マーケットの緊張が一気に高まった。

●企業業績面から弱気な見方が増勢傾向に

 果たしてここから先、日経平均はどういう軌道を描くのか。市場関係者の間でも意見が分かれてはいるものの、足もとは弱気ムードが若干優勢のようだ。ブーケ・ド・フルーレット代表の馬渕治好氏は「目先はリバウンドがあるかもしれないが、外部環境は厳しく、買いは続かないだろう。企業の収益見通しに対するアナリストのコンセンサスは週間ベースで下方修正が続いている。加えて10月の消費税引き上げを考えると、日本株を買い上がる材料が見当たらない」と指摘する。馬渕氏以外にも企業実態にスポットを当て、政策期待だけでは買いスタンスを正当化できないという意見が比較的多い。

 一方、東洋証券ストラテジストの大塚竜太氏は「強気を唱えるには難しい環境だが、水準的に(日経平均が)底値圏にあるという感触はある。日経平均2万円近辺はPBR1倍の水準でもあり、ここを割り込む場面はイレギュラーとの判断で買い向かうところ。実際、2万円に接近すると政策買いとは別に、個人投資家などから自然発生的に押し目買いの板が厚くなる」と指摘する。そして、今は政策催促相場との見方もできる局面だが、そのなか、日銀が担うべき役割は大きいとする。「金融緩和余地が少ないとされる日銀だが、(各国の中央銀行が対応に動くなか)このまま状況を見守るだけで、音無しの構えを続けるというわけにはいかない。思い切った形でのETF買い入れ枠拡大というような政策アナウンスがあれば流れは変わる」(大塚氏)という意見を示している。

 このほか、第一線で活躍する市場関係者3人に株式市場と為替市場の先行きについて見解を聞いた。

【松井証券シニアマーケットアナリスト 窪田朋一郎氏】

●1万9600円近辺が下値抵抗ラインに

 きょうは、日経平均が一気に2万円近辺までの下落を予測する声もあったことを考えれば、想定よりは底堅い動きだったといえる。9月18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げはもちろん、9月12日のECB理事会での緩和的政策も取り沙汰されており、世界的な金融緩和期待の高まりが下値を支える形になりそうだ。日経平均が2万円大台を大きく割り込む形で売り込まれるイメージは湧かない。

 危機があるとすれば9月18日のFOMC通過後であろう。それまでは売り方も動きにくく、日経平均は下値模索が続いたとしても下値1万9600円近辺が抵抗ラインとして意識されそうだ。ただし、金融緩和はあくまでカンフル剤であり、米中摩擦問題の解決とは次元が異なる。その意味では中期的に下値リスクを内包している。もっともこういう環境でも、資金を振り向ける先はある。投資家としては順張りでREIT市場や金市況の上昇について行くか、目先逆張りなら中国関連の機械株や半導体関連、あるいはソフトバンクグループ<9984.T>などの突っ込み買いが有効と思われる。

【東海東京調査センターシニアストラテジスト 庵原浩樹氏】

●2万円前後の下値堅い、米中は徐々に歩み寄りへ

 26日の東京株式市場は2万円割れも懸念されたが、下値には買いが入り下げ渋った。トランプ米大統領は、中国の報復関税に対して感情的に反応したようにもみえる。

 同氏が中国に対して強気姿勢を取れるのは、NYダウが高値圏に位置する面もあるが、今後も強硬姿勢を取り株価が一段と下がるようなら、支持率にも響きかねないだろう。一方、中国も米国に対して打つ手立てはあまりないだろう。中国は10月1日の建国記念日を控え一段の混乱は避けたいはずだ。米国も中国が関税率の引き上げなどに出てこなければ、新たに制裁を課すことはないと思う。こうしたなか、米中は今後歩み寄りを摸索する展開が見込めると考えている。

 日本株はPBR1倍の2万円前後が下値メドとなっている。当面のレンジは2万200~2万700円前後とみている。為替は円高基調にあるほか、消費増税を控え上値は追いにくい状況が続くだろう。個別は、高配当利回りの内需関連株などが物色の中心になると思う。

【外為オンラインシニアアナリスト 佐藤正和氏】

●103円へ一段の円高も、日銀の金融緩和必要に

 ドル円相場は一時1ドル=104円43銭まで円高が進み、今年1月3日の安値と同水準まで売り込まれた後、105円80銭近辺まで値を戻す荒い展開となった。トランプ米大統領は、中国の関税引き上げに対して報復措置を取った。これに伴う、中国景気への影響は小さくないだろう。

 しかし、中国も強硬姿勢を強めていることで、米中貿易戦争は簡単には終わりそうにない状況となっている。米国は中国からのほぼ全ての輸入品に関税をかけることになるが、先行き中国製品に対する輸入制限にまで踏み切ってもおかしくはないと思う。トランプ大統領が、パウエルFRB議長への批判を強めていることも気になる。

 当面のドル円のレンジは1ドル=103円00~107円00銭。基調は円高であり、103円もあると思う。9月に向け日米の金融政策は要注目だ。9月のFOMCでは0.5%の利下げもあり得るだろう。日銀も、何らかの形で金融緩和に踏み切らざるを得ないと考えている。

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