【市況】国内株式市場見通し:メキシコ追加関税回避で日経平均は続伸へ
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
■日経平均は5週にぶり反発
前週の日経平均は上昇した。利下げ期待が浮上しNYダウが上昇したことが支援材料となって日経平均は5週ぶりに反発に転じた。メキシコへの通商摩擦の拡大から5月31日のNYダウが354.84ドル安と急落し、為替市場で1ドル=108円台前半まで円高が進行したことも嫌気されて、週初3日の日経平均は大幅安の始まりとなった。朝方にはおよそ4カ月半ぶりの安値水準となったが、その後は、日銀のETF(上場投資信託)買いが下支えとなり下げ渋りをみせた。3日のNYダウは小反発したが、ハイテク株が売られてNASDAQ指数は大幅続落となった。この流れを受けて、4日の日経平均は小幅ながらも5日続落となった。1ドル=107円台までの円高進行も警戒された。パウエルFRB議長が利下げに動く可能性を示唆したことがインパクトとなり、4日のNYダウが512.40ドル高となると流れが変わった。この今年2番目の上げ幅となったNYダウの上昇を好感して5日の日経平均は前日比367.56円高と6日ぶりに急反発した。全面高商状のなか、がん治療薬の試験結果を好感した第一三共<4568>の急伸も話題となった。5月ADP雇用統計が予想を大幅に下振れて、米国での利下げ期待が一段と強まるとNYダウは5日にかけて3連騰となった。しかし、東京市場は勢いが続かず6日の日経平均は小幅安に転じた。米半導体SOX指数の反落を受けたハイテク株売りと、上海総合指数の下落や為替相場における円高推移が影響して、プラスゾーンで推移していた日経平均は大引けにかけて値を消した。米政権によるメキシコへの関税引き上げ延期の検討が報じられた6日のNYダウが4日続伸となると、7日の東京市場も買いが先行して始まり、日経平均は反発した。ただ、端午節で上海市場が休場だったほか、大引け後に結果が判明する米5月雇用統計の発表を控えて積極的な上値追いはみられず、買い戻し一巡後はその日の高値圏でもみ合う展開となった。売買代金上位では、米半導体SOX指数の上昇からアドバンテスト<6857>と東京エレクトロン<8035>の上昇が目立った。7日のNYダウは263.28ドル高の25983.94ドルと5連騰となった。非農業部門雇用者数が前月比7.5万人増と予想を大きく下振れた米5月の雇用統計から、金融当局による利下げ期待が強まった。原油相場の上昇も好感された。なお、10日に実施される予定だった米国によるメキシコからの輸入品に対する関税上乗せは回避された。
■米国利下げ期待が強まる
今週の日経平均は続伸が期待される。トランプ大統領は7日夜(日本時間8日午前9時半頃)ツイッターで「メキシコからの輸入品関税の上乗せは無期限に延期」と投稿し、10日に実施予定だった関税上乗せは見送られた。株式市場の懸念材料の一つが払拭されたことになり、自動車株などが買い戻される見通しだ。これを前に明らかとなった米5月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が予想を大きく下振れ、平均時給の伸びも鈍化したことから米連邦準備理事会(FRB)が利下げに踏み切る期待が強まるかたちとなった。週明けの東京市場はこの流れを好感して戻りを試す展開となるだろう。また、FRBが利下げに踏み切る可能性がでてきたことを受け、日銀の金融政策に関しても「追随緩和」の可能性が指摘され始めている。ETF買い入れの増額などの案が具体化してくると、日経平均は5月29日以来となる21000円台を回復する場面も期待される。
■イベントにらんで後半は模様眺めへ
ただし、週後半はもみ合いに転じる可能性がある。NYダウが7日までの5連騰で1168ドル強の上昇を見ており、スピード調整が到来する可能性が高い。国内需給面では14日のメジャーSQを控えて先物の動向もかく乱要因となりそうだ。また、金融政策を占う大きなスケジュールが日米で翌週に控えている。6月19日、20日に日銀の金融政策決定会合、6月18日、19日にFOMC(連邦公開市場委員会)が予定されており、FOMCは日本時間20日午前3時頃に声明を発表する見込みだ。この日米の金融政策イベントとメジャーSQを控えて、週後半にかけては、次第に模様眺めムードが高まることが予想される。さらに、その先では、28-29日にかけては「G20」(20カ国・地域首脳会議)が開催され、日米、日露、日中の各首脳会談が個別に開催予定という政治イベントが控えている。物色的には、5G関連、無電柱化関連の一角に動きはあるものの広がりは見られない。そのため材料が浮上した個別物色が続きそうだ。このほか、13日にトヨタ<7203>の株主総会が開催される。ソニー<6758>は18日、ソフトバンクグループ<9984>は19日で、6月最終週が株主総会のピークとなる。一般的に株主総会を控えるこの時期は、企業サイドからはネガティブ材料が出にくい傾向がある。
■国内ではメジャーSQなど控える
今週の主な国内経済関連スケジュールは、10日に1-3月期GDP改定値、4月経常収支、5月景気ウォッチャー調査、11日に5月マネーストック、5月工作機械受注、12日に5月国内企業物価指数、4月機械受注、13日に4-6月期法人企業景気予測調査、5月都心オフィス空室率、14日にメジャーSQ算出日がそれぞれ予定されている。このほか、11日にゲーム業界最大の見本市「E3」開催(13日まで、ロサンゼルス)、14日にEU経済・財務相理事会(ルクセンブルク)開催などが控える。
《FA》
提供:フィスコ