【通貨】為替週間見通し:ドルはもみ合いか、米中協議の不透明感残る
米ドル/円 <日足> 「株探」多機能チャートより
【先週の概況】
■米中対立継続もドルは110円台を回復
先週のドル・円は強含み。節目の110円を上回った。中国が米国に対する報復関税を発表し、米国も対中関税第4弾の詳細案を公表したことで、米中貿易摩擦激化への懸念でリスク回避のドル売り・円買いが観測された。しかしながら、トランプ米大統領は15日、輸入自動車に対する関税引き上げを巡る判断を最大6カ月間延期すると意向を示したことから、リスク回避のドル売りは一服した。
米商務省は16日、政府の許可なく米企業から部品などを購入することを禁止する「エンティティーリスト」に中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)と同社の関連68社を正式に追加したことから、通商問題などを巡る米国と中国の対立は長期化するとの思惑が浮上した。ドル・円は109円台半ばでもみ合う状態がしばらく続いたが、米経済指標の改善を好感してドル・円は110円台を回復した。
17日のニューヨーク外為市場でドル・円は、109円50銭から110円19銭まで上昇した。この日発表された米国の5月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値は、15年ぶりの高水準となったことや、トランプ大統領は自動車の関税上乗せについて「180日間、先送りする」との声明を正式に発表したことからドル買いが優勢となった。「米国が鉄鋼・アルミ輸入関税撤廃でカナダ・メキシコと合意」との報道もドル買い材料となった。ドル・円は110円08銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:109円02銭-110円19銭。
【今週の見通し】
■ドルはもみ合いか、米中協議の不透明感残る
今週のドル・円はもみ合いか。米中貿易協議に関する不透明感が続き、米中協議の不透明感を背景に株安になった場合、リスク回避の円買いが強まり、ドルを下押ししそうだ。米連邦準備制度理事会(FRB)が22日に公表する連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(4月30日-5月1日開催分)が注目されそうだ。
前回のFOMC会合で、FRBは政策金利の据え置きを決定した。FOMC後の声明ではインフレに関する認識が弱いと市場に受け止められ、利下げ観測からドル売りが優勢となった。その後、パウエル議長はインフレ鈍化を一時的な要因とし、利下げ観測後退でドルは買い戻された経緯がある。ただ、タカ派色の濃い議事要旨であっても、トランプ大統領は利上げを強くけん制しており、追加利上げは困難との見方が市場関係者の間で広がっている。
米政府は中国・華為技術(ファーウェイ)と同社の関連68社を政府の許可なく米企業から部品などを購入することを禁止する「エンティティーリスト」に追加したが、一方で輸入自動車への関税導入の判断に関して6カ月延期する方針を発表した。トランプ大統領は柔軟姿勢による株価への配慮もみせており、このような対応がリスク回避のドル売りを抑制する可能性もある。
【米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨】(22日公表予定)
22日に4月30日-5月1日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公表される。景気認識などで強気な意見が多く出ていた場合、利下げ観測は後退しリスク回避のドル売りは縮小するとみられる。
【米・4月耐久財受注】(24日発表予定)
24日発表の米4月耐久財受注は前月比-2.0%と、前月の+2.6%を大きく下回る見通し。コア指数も下振れの場合は製造業の回復の遅れが懸念され、1-3月期国内総生産(GDP)改定値の下方修正に思惑が広がりそうだ。
予想レンジ:108円50銭-111円50銭
《FA》
提供:フィスコ