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【特集】フードデリバリー関連株に上昇ダブル旋風、待ち受ける株高の夏 <株探トップ特集>

10月1日から消費税率が10%に引き上げられるが、その緩衝材としての軽減税率を追い風とするのがフードデリバリー&テイクアウト関連株だ。また、これから相次ぐスポーツのビッグイベントも消費者心理を刺激する。

―軽減税率とスポーツビッグイベントで株価見直し機運高まる、投資の急所は何処に?―

 いま、フードデリバリー、テイクアウト業界にダブルの追い風が吹こうとしている。その風の名は「軽減税率制度」と、ラグビーW杯、東京五輪など日本で開催される「スポーツのビックイベント」だ。軽減税率は、10月1日から消費税率が8%から10%に引き上げられることに伴いスタートする制度で、低所得者への配慮から「酒類・外食を除く飲食料品」に対して税率を8%に据え置くというもの。すなわち、外食ではないとする「出前」や「お持ち帰り」ならば軽減税率が適用されることになる。加えて、世界的なスポーツイベントの開催は、自宅などで家族や友人とテレビ観戦をしながら食事をする機会も増え、ここでも活躍の舞台が広がることになる。軽減税率の適用で、フードデリバリー、テイクアウトには「2%のお得あり!」、出番を待つ関連銘柄の動向を追った。

●急拡大する新しい出前の形態

 2016年にフードデリバリーの巨人・米ウーバーイーツが日本に上陸し、一気に拡大した市場だが、ここにきて新たな追い風を背に、成長第2ステージを迎えようとしている。新しいニーズを捉えるべく、大手外食チェーンをはじめ続々とフードデリバリー事業に参入してきており、その勢いには目を見張るものがある。新しい“出前”の形態が着実に受け入れられるなか、株式市場でも更に注目が集まりそうだ。

 市場調査会社のエヌピーディー・ジャパン(東京都港区)が10日に発表した「外食・中食の出前市場動向分析レポート」によると、「レストラン業態における出前市場は、2018年は4048億円で、前年と比べ5.9%増加」となった。ウーバーが上陸した16年の5.8%増、17年の2.3%増を引き継いで順調に拡大していることがうかがえる。

●“観測気球”が波紋も「予定通り」

 成長著しいフードデリバリー市場だが、更なる支援材料になりそうなのが、消費税率の引き上げによる軽減税率制度だ。店舗内での飲食は消費税が10%となるが、出前や持ち帰りについては、「外食」の対象外とし8%に据え置くことから、それらを選択する消費者が増加する傾向が強まりそうだ。前述のレポートでも「軽減税率の適用となる出前は更に伸びることが予想される」としている。

 また、リクルートライフスタイル(東京都千代田区)の外食市場に関する調査・研究機関であるホットペッパーグルメ外食総研が昨年12月5日に発表した「2019年10月の消費税増税と飲食料品への軽減税率適用による、食生活に対する消費者意識調査」では、「20代男女は飲食店で税率8%適用予定のテイクアウトや出前の利用を増やしたい意向が強い」と分析。具体的な食事の種類は「夕食」で「テイクアウトや出前を選ぶ機会が増えそうとした人が28.9%」で最も多かったという。また、「10月を見据えて、テイクアウトやデリバリーを検討する飲食店が増える可能性もある」と分析しており、消費増税が予定される秋口にむけて、この分野への注目度は更に高まりをみせることが予測される。

 ただ、ここにきて安倍首相の側近ともいわれる萩生田光一幹事長代行が、消費税率引き上げ延期に言及し波紋を呼んでいる。この発言に対して財界の反応は否定的であるうえ、菅義偉官房長官も「リーマン・ショック級の出来事が起こらない限り引き上げる予定」と述べるなど、10%への引き上げ方針を強調した。萩生田氏の発言に対しては“観測気球(世論の反応をうかがうための発言)”との見方もあり、既に延期を行ってきた経緯からも、ここで更なる延期はないと見る向きが多い。また19日、萩生田氏は自らの発言について個人的な見解としたうえで、「増税方針に変わりはない」との釈明が伝わったことから、延期発言の余波は急速に鎮静化している。

 賛否両論のなか登場することになる軽減税率制度だが、少なくともフードデリバリー、テイクアウト業界にとっては、好影響を与えるとの見方は多いようだ。

●夢の街、ライドオンHDは動向注視

 フードデリバリー関連の代表株といえば、デリバリー総合サイト「出前館」を運営する夢の街創造委員会 <2484> [JQ]だ。同社は3月28日の取引終了後に19年8月期の連結業績予想を発表。営業損益を1億円の黒字から3億円の赤字へ、最終損益を7900万円の黒字から3億円の赤字へ下方修正し、これを受け翌日はマドを開けて売られることになった。急落前は2000円近辺でもみ合っていた株価だが、現在は1500円台半ばで悶々(もんもん)としている。新規アクティブユーザーの獲得が計画に届かず、シェアリングデリバリーの拠点拡大や店舗・拠点オペレーションの効率化などに積極的な投資を行っていることが下方修正の要因としている。ただ、こうした積極投資を裏付けるように、15日には札幌市で配達機能を持たない飲食店の出前を可能にするサービス、「シェアリングデリバリー」を開始したと発表。北海道での展開は初めてとなる。

 同じく注目度の高いライドオンエクスプレスホールディングス <6082> の株価も年初来安値圏で下値模索の状況だ。同社は、宅配寿司「銀のさら」、宅配御膳「釜寅」、宅配寿司「すし上等!」や、提携レストランの宅配代行ブランドとして「ファインダイン」を展開している。同社は、2月14日取引終了後に発表した19年3月期第3四半期累計の連結経常利益は、前年同期比20.1%増の7億4200万円に伸びたが、通期計画の11億1600万円に対する進捗率は66.5%にとどまっている。

 フードデリバリー関連株の龍虎ともいえる夢の街とライドオンHDは、厳しい株価に晒される状況にある。ただ、10月の消費増税が近づくにつれ「軽減税率関連株」の一角として思惑買いを誘う可能性もあるうえ、9月からはラグビーW杯、来年の東京五輪といったビッグイベントが続くなか需要拡大が期待されることから、その動向には注視が必要だ。

●攻勢を強める楽天、LINE

 エヌピーディー・ジャパンのレポートによると「出前でどのサービスを利用したかのサービス別金額シェアをみると、店やレストランからの直接の出前が36%と依然最も多いものの、主要出前7サービス(ウーバーイーツ、出前館、ごちクル、dデリバリー、楽天デリバリー、ファインダイン、LINEデリマ)も合計で約44%を占め、出前全体の半数近くに迫っている」としている。ここでも「出前館」の夢の街、「ファインダイン」を展開するライドオンHDの存在がキラリ光るが、異業種参入の代表格ともいえる「楽天デリバリー」の楽天 <4755>や、「LINEデリマ」で攻勢を強めるLINE <3938> からも目が離せない。

●わらべや日洋は弁当でGO!

 追い風が吹くフードデリバリー業界だが、テイクアウト関連株にも注目が集まりそうだ。政府広報オンラインによるとテイクアウトは「持ち帰りのための容器に入れ、または包装を施して行う飲食料品の譲渡」としており、弁当はもちろんレストランなどからの持ち帰り・宅配なども8%に据え置かれることになる。こうしたことから、持ち帰り弁当の「ほっともっと」を展開するプレナス <9945> やコンビニ向け弁当を手掛けるわらべや日洋ホールディングス <2918> などに物色の矛先が向かう可能性もある。

 わらべや日洋は業績も好調だ。同社は12日取引終了後に、20年2月期通期の連結業績予想を公表し、営業利益見通しを25億円(前期比63.8%増)とした。セブン―イレブン向けの売り上げ増を見込んでいるほか、生産効率の向上や商品規格の見直しなどにより利益率の改善を図る方針だ。株価は、今月15日には上ヒゲで2000円を突破し年初来高値を更新したものの、ここ急速な調整局面入りで1800円割れ寸前にある。

●市場拡大の恩恵受けるエフピコ

 フードデリバリーやテイクアウト市場の拡大による恩恵は、飲食に絡む業態だけではなく、料理を入れる容器製造業界にも波及しそうだ。出前や持ち帰り商品においては、専用の容器が用いられることになるからだ。

 食品トレー、弁当など容器大手のエフピコ <7947> では「軽減税率適用に伴い、特に外食産業におけるテイクアウトの需要増加が予想され、当社の取り扱う食品容器においても、機能や付加価値を備えた製品の市場拡大が見込まれる」と話す。株価は2月8日に6020円まで売られ年初来安値を更新、その後底値圏からの離脱に成功、現在は6700円近辺で推移。まずは4月15日につけた年初来高値6890円抜けから7000円台での活躍をにらむ。

 軽減税率にビッグスポーツイベントといったダブルの追い風が、これら関連株の帆をはらませそう。ただ同業界を後押しするのは、働く女性の増加、生涯未婚率の上昇、そして急速に進む高齢化社会など複合的な社会的状況が背景にあることを忘れてはならない。一過性に収まらない社会的ニーズの高まりが、フードデリバリーやテイクアウト業界の成長を牽引することになる。

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