【特集】NYダウ最高値更新が秒読み! 株価V字回復の真相とは <株探トップ特集> (訂正)
昨年12月から今年の年初にかけて大幅な下落を演じた米株市場が復活の動きを強めている。主要指数の最高値更新が近づくなか、株価V字回復の真相とこれを受けた日本株の今後を読み解く。
―金融緩和姿勢と米中摩擦の懸念後退で変わる波動、NYダウ2万8000ドル説も―
今年の年初にかけ大幅な下落を演じた米株式市場が、急速な反発を演じている。 NYダウや S&P500といった主要指数は昨年秋の最高値更新を目前に捉えてきた。この背景にあるのは、緩和姿勢へとハト派色を強める米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策や米中貿易摩擦に向けた警戒感の後退などだ。とりわけ、今週末からは米主要企業の決算発表が本格化する。警戒感が強い今回の決算発表だが、市場には増額修正観測も強く、NYダウは最高値奪回から一段高に向かうとの期待も出ている。
●NYダウは昨年末から2割の上昇、ロシア疑惑の幕引きも安心感呼ぶ
10日の米株式市場でNYダウは前日比6.58ドル高の2万6157.16ドルに上昇。昨年10月3日の最高値2万6951.81ドルを視野に捉えている。S&P500種平均も昨年10月高値の2393.86ポイントまであと2%程度のところに迫っている。昨年12月末に2万1712.53ドルまで下落したNYダウは、2割程度の上昇とV字型の回復を描いている。この株価急回復をもたらした要因は何か。
「FRBが金融政策を再度、緩和基調へ方向転換したことや、米中貿易摩擦の緩和方向が見えてきたことの要因が大きい」と東海東京調査センターの庵原浩樹シニアストラテジストは指摘する。米国の金融政策は年初までの引き締め姿勢は一転、利下げも期待される緩和基調へと転換した。また、米中貿易摩擦に関しても両国は徐々に歩み寄る姿勢をみせており、貿易戦争突入による景気悪化シナリオへの懸念は後退している。更に、米政権を長らく揺さぶってきたロシア疑惑がトランプ氏側の勝利となり幕を引く方向にあることも安心感を呼んでいる。
●足もとの米経済指標には底堅さ、トランプ大統領の経済政策に期待も
そんななか、市場がいまなお警戒感を崩さないのが、米国の景気減速懸念だ。金融市場では3月に3ヵ月物国債利回りが10年物を上回る「長短金利逆転(逆イールド)」が発生。景気後退の前兆とされるものだけに、金融市場には緊張が走った。
もっとも、逆イールドが発生して、景気後退が訪れるとしても、それはまだ先のこととみる向きは多い。足もとで発表された米経済指標も「懸念されたほど悪いわけではない」と第一生命経済研究所の桂畑誠治主任エコノミストは言う。米3月雇用統計や、米3月ISM製造業指数も底堅い内容だった。また、20年の米大統領選の再選を目指すトランプ大統領は一段の景気対策を打ち出すことが期待できる。加えて、景気悪化が警戒される中国が減税策など景気テコ入れ策を発表したことも投資家のセンチメントを改善させた。米国景気に対する過剰に悲観的な見方は揺り戻しを迎えている。
●1~3月期決算には増額修正期待、投資家センチメントに改善余地
こうしたなか明日から米企業の第1四半期(1-3月)決算の発表が本格化する。市場では第1四半期の業績は米国の主要500社ベースでは11四半期ぶりの減益となるとの観測が出ている。純利益では前年同期比4%前後の減益との予想だ。もっとも、前出の庵原氏は「最終的には上方修正されるのではないか」と述べ、増益となる可能性も指摘している。昨年7~9月期まで米国の主要企業の増益率は2割を超えていただけに、失速懸念は強いものの減益幅が縮小するだけでも投資家のセンチメントは改善されそうだ。
個別企業では12日にJPモルガン・チェースとウェルズ・ファーゴ、15日にシティグループとゴールドマン・サックスといった金融大手の決算発表を皮切りに、続いて16日からはネットフリックス、IBMといったIT・ハイテク企業の決算が始まる。それ以降、24日にキャタピラー、フェイスブック、25日にアマゾン・ドット・コム、インテル、29日にアルファベット(グーグル)、30日にアップルといった大手企業の決算発表が続く。
●警戒感が残る分、上昇余地、年末には2万8000ドル視野の展開も
では、最高値圏にあるNYダウの具体的な見通しはどうか。桂畑氏は「いったん2万7000ドルまで上昇し最高値を更新することが見込める。ただ、米中首脳会談による合意がまだいつになるか、はっきりしない点や今後は米国と欧州・日本との貿易摩擦懸念が高まることが警戒材料となる。最高値を更新しても、その後は上値が重い展開となるだろう」とみる。一方、庵原氏は「5月にかけ最高値更新後に、いったんは調整局面に入る可能性はある。ただ、夏場から年末にかけては来年の米大統領選の勝利を期すトランプ大統領によるインフラ投資など景気拡大策も見込めNYダウは再度、上昇基調を強める」とみる。「市場には警戒感がまだ残っているが、その分上値余地は残っている」とし、年末に向けては2万8000ドルを視野に入れる可能性もみている。
●米企業の決算発表予定
4月 12日 JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ
15日 シティグループ、ゴールドマン・サックス
16日 IBM、バンク・オブ・アメリカ、ネットフリックス、
ジョンソン&ジョンソン
17日 モルガン・スタンレー、ペプシコ、アボット・ラボラトリーズ
18日 TSMC、トラベラーズ、フィリップ・モリス
22日 ハリーバートン、キンバリークラーク
23日 プロクター&ギャンブル、テキサスインスツルメンツ
24日 フェイスブック、キャタピラー、ザイリンクス、ボーイング
25日 インテル、アマゾン・ドット・コム、スターバックス、
マイクロソフト、スリーエム
26日 エクソン・モービル、シェブロン
29日 アルファベット、ウエスタン・デジタル
30日 アップル、マクドナルド、ゼネラル・エレクトリック
(注)予定は変更されることがあります
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