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【特集】アイエスビー Research Memo(4):2020年12月期に売上高240億円、営業利益11億円を目指す

アイエスビー <日足> 「株探」多機能チャートより

■中長期の成長戦略と進捗状況

1. 『中期経営計画2020』の概要
アイ・エス・ビー<9702>は3ヶ年の中期経営計画を策定し、その着実な実行による中期成長の実現を目指している。現在同社が取り組むのは、2018年12月期-2020年12月期の3ヶ年中期経営計画『中期経営計画2020』だ。同社は2020年に創立50年の節目を迎える。今中計の3ヶ年は次の50年間を創っていくための基盤固めの時期という位置付けで、その意志は『CREATE THE NEXT GENERATION』というスローガンに現れている。

今中期経営計画において同社は以下の4つを重点戦略に掲げて取り組んでいる。すなわち、1)プロダクト事業の展開と拡大、2)高付加価値業務へのシフト、3)コスト競争力強化、及び4)グループ経営戦略強化、の4つだ。それぞれの具体的内容や進捗状況については後述する。

中期経営計画の業績としては、最終年の2020年12月期において、売上高240億円、営業利益11億円、営業利益率4.6%を掲げている。当初の計画では売上高200億円、営業利益10億円だったが、2019年1月に2社を連結子会社化したことを受けて、計画を一部見直した。売上高の上乗せ幅に対して利益の上乗せ幅が小さいのはのれんの償却費で営業利益寄与が圧縮されるためだ(5年償却のため2023年12月期をもって償却が終了する予定)。


中核のセキュリティシステムで新開発プラットフォーム「ALLIGATE」を活用した製品・サービスの市場投入が順調に進捗
2. プロダクト事業の展開と拡大
同社がプロダクト事業の展開に注力する背景には、現在の中核であるソフトウェアの受託開発型事業とは顧客層や需要構造、収益モデルが異なる事業を育成して収益構造の複層化を図る狙いがある。プロダクト事業は現状、7つの製品・サービスで構成されているが、最も規模が大きいのはセキュリティシステムだ。これは2017年1月に子会社化したアートが展開する事業であり、セキュリティシステム事業として独立した事業セグメントを構成している。これを主軸として、同社本体が従来から開発や導入を行ってきたWi-SUN、Vectant MDM、Caretive、L-Share等の製品群で構成されている。

プロダクト事業に関する数値目標として、プロダクト事業の売上構成比を20%以上にすることを掲げている。2018年12月期実績は20.4%で、2017年12月期の21.7%から若干低下したものの中計の目標水準は維持した。売上構成比の低下は、プロダクト事業の成長自体は順調だったものの、好調な事業環境によって受託開発事業の伸びが高かったことが原因と弊社では分析している。2018年12月期のプロダクト事業の主な進捗は以下のとおりだ。

主軸のセキュリティシステムにおいては、2017年にアクセスコントロール専用IoTプラットフォーム「ALLIGATE(アリゲイト)」をリリースした。2018年はそのプラットフォームに対応した製品・サービスの開発を進めることをテーマに臨んだ。具体的には、4月に「ALLIGATE Lock(扉向け)」や「ALLIGATE Lock(ロッカー向け)」、「ALLIGATE Logger」など4種類を発表するのを皮切りに他社との提携や共同開発も行いながら、新しい製品やサービスを次々と発売し、収益拡大に取り組んでいる。

「ALLIGATE Lock/Logger」は、単独でオフィスの入退室管理に高機能を発揮するシステムだが、さらにチームスピリット<4397>の働き方改革プラットフォーム「TeamSpirit」とサービスを連携させた。こうした一段の高機能化や利便性向上がユーザーに評価され、順調に導入数を増やしている状況だ。

同社(主体はアート)はまた、駐車場予約アプリ「akippa」を運営するakippa(株)と共同で駐車場向けのゲート自動開閉システム「シェアゲート」を開発した。駐車場予約アプリ「akippa」はコインパーキングや個人宅の空き駐車場などを対象としていたがゲート式駐車場ではゲート開閉がネックとなって導入できずにいた。「シェアゲート」はテンキーやBluetoothによってゲートの開閉を可能としたもので、これによってゲート式駐車場においても稼働率アップを目指して「akippa」を導入することが可能となっている。

直近では、(株)ライナフが開発したスマートロック「NinjaLock」とシステム連携を行い、ALLIGATEプラットフォームで動く「ALLIGATE for NinjaLock」を販売するほか、手動で操作するシリンダーロック型や自動施錠のレバーハンドル型などの新製品が発表予定となっている。

L-Shareにおいても着実な進捗がみられる。L-Shareは医療機器用画像データの伝送・共有システムで、従来から機能性では高い評価を得ていた。同社は商品化に向けて、地道に開発を続け、2017年12月には「医薬品医療機器等法(薬機法)」の認証を取得したほか、2018年初頭には旭川医科大学との産学連携によりPET-CT診断用のDICOMビューアを製品化した。その後2018年12月には、L-Share製品群の1つであるDICOM転送ルーター「L-Share Router」が日立ヘルスケアシステムズ(株)の「検診車向け医用画像転送サービス」に提供することが発表されている。日立ヘルスケアシステムズは今後、L-Share Routerをサービスメニューの1つとして検診施設等に提案していくことになる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)

《RF》

 提供:フィスコ

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