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【特集】船舶燃料のSOx規制で商機到来、急浮上する脱硫装置関連株<株探トップ特集>

船舶燃料に関する国際的環境規制が来年1月に導入される。現在の船舶燃料の主流であるC重油などは今のままでは使用不可となり、この対応が求められている。脱硫装置分野に展開する企業などに注目する場面だ。

―2020年に導入される船舶燃料に関する国際的環境規制、浮かび上がる有望株とは―

 船舶燃料に対する国際的な環境規制が2020年1月に導入される。 大気汚染の原因とされる硫黄酸化物(SOx)の排出を減らすために、燃料に含まれる硫黄分の上限が引き下げられるというもので、現在の船舶燃料の主流である、硫黄分を多く含む重油(C重油)は今のままでは使えなくなる。

 国際物流の要である海運への支障を回避するためには、19年中に「船舶燃料のSOx規制」への対応が必要となる。一方でこれに伴う特需も期待でき、関連銘柄には注目が必要だろう。

●海運業界の2020年問題

 今回の船舶燃料に対する規制強化は、国連の専門機関の一つである国際海事機関(IMO)が定めたもので、全ての海域が対象となることから「 海運業界の2020年問題」ともいわれている。

 現在もSOxや窒素酸化物(NOx)などの大気汚染物質の船舶からの排出については、アフリカや南米の国々を除く89ヵ国が署名している海洋汚染防止条約(MARPOL条約)附属書VIで燃料油の硫黄分濃度の上限が規制されており、一般海域は3.5%、北米、カリブ海、北海、バルト海のECA(排出規制海域)では0.1%以下となっている。一般海域については段階的に規制が強化されており、20年1月からは上限が0.5%となる。

 新たな規制は、当初は25年からの導入で、規制もここまで厳しいものではないと想定されていた。そのため「2010年代前半までの新造船には、この規制に対応した発注が行われておらず、国内の海運各社は対応が遅れた」(業界関係者)とされ、現在関係する業界各社は急ピッチで対応を進めているところだ。

●規制強化への3つの対応策

 規制の対象となる船舶は、造船だけでなく既存船も対象となるが、対応策としては(1)燃料の重油を硫黄分の少ないものに切り替える、(2)硫黄分を含まない液化天然ガス(LNG)や液化石油ガス(LPG)に切り替える、(3)従来の重油を使い続けるが、船舶に排ガスの硫黄分を取り除く脱硫装置(スクラバー)を取り付ける、などが考えられる。

 ただ、どの方法にも一長一短があり、例えばLNGを燃料に使うとなるとタンクが重油の2倍程度必要となるほか、再液化設備が必要であるため既存船の改修には向かず、更に船舶にLNGを供給するインフラの整備が必要になる。また、脱硫装置を取り付けるとなると1基あたり数億円の費用がかかるほか、内航船のような小型船舶に導入が難しいなどの問題がある。

 その結果、多くの海運会社は燃料を硫黄分の少ないものに切り替えるとみられるが、これにも供給する石油会社との連携が不可欠となる。更に石油会社にとっては他の石油製品との精製や価格のバランスが崩れかねないうえ、精製段階で硫黄分を下げる装置の設備投資が必要となり、燃料価格が上昇すると懸念されている。

●スクラバーメーカーに商機

 SOx規制により予想される装置コスト増や燃料価格の上昇を受けて、海運業界では早くも燃料費の運賃への転嫁に向けた準備が進められている。日本の荷主は毎年4~5月に年間運賃を更新するケースが多いため、今年の契約更改に間に合わなければ、20年1月から数ヵ月はコスト増が海運会社にのしかかることになる。今後、日本郵船 <9101> や商船三井 <9104> など海運大手を中心に運賃に関する話題が増えそうだ。

 一方、脱硫装置などを製造する機械メーカーには、需要増が期待できる。ただ、同分野はフィンランドのバルチラ社、ノルウェーのヤラマリン社、スウェーデンのアルファ・ラバル社など北欧勢が強いのが現状だ。

 そうしたなか、日本勢では三菱化工機 <6331> が気を吐いている。同社では、三菱重工業 <7011> と共同で「三菱SOxスクラバーシステム」を開発。シンプルな構造で既存船へのレトロフィットが容易なのが特徴で、初号機搭載船の船籍国であるパナマ政府からは実効性を認める証書を与えられている。

 また、菱化工機と並ぶ国内大手の富士電機 <6504> では、18年10月にSOxスクラバーを搭載した「船舶用排ガス浄化システム」を開発し出荷した。内部構造にサイクロン技術を採用し高脱硫率を実現したのが特徴であるほか、小型化を図り既存船への適用を容易にしたという。

●その他の対策も活発化

 スクラバー以外の対応策も活発化している。川崎重工業 <7012> は、中国合弁造船所で、世界初のLNG燃料推進の自動車運搬船を建造した実績を持つ。更に、LPGを燃料として使用できる二元燃料対応の大型LPG運搬船(VLGC)建造もスタートさせており、21年下期にも引き渡しを予定している。同社はこのほか、LNG燃料供給船やLNG推進の20万トン級大型バラ積み運搬船の開発も完了しており、SOx規制強化を機にビジネスチャンスを増やしそうだ。

 また、ジャパンエンジンコーポレーション <6016> [東証2]は、SOxの排出が少なく環境負荷が低いマリンガスオイル(MGO)のみを燃料とする船舶用エンジンを開発し、今年1月に初号機を公開した。独自の燃料噴射技術を使って燃料消費量を抑えることで、高価なMGOを利用しやすくしたのが特徴で、中・小型内航船に提案していく方針だ。

 更にスクラバーを洗浄する際には真水が必要なことから、船舶搭載用の造水装置を製造するササクラ <6303> [東証2]などにも注目したい。

株探ニュース

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