【特集】安倍政権の本気、「国土強靱化」総事業費7兆円で燃え上がる株<株探トップ特集>
建設株に再評価の機が熟している。昨年12月、安倍政権は「国土強靱化」の緊急対策を決定、大義名分を得た国費3兆6000億円、総事業費7兆円が今動き出す。
―“国策に売りなし”で広がるテーマ買いの裾野、変身期待の穴株5銘柄をピックアップ―
東京株式市場は足もと強弱感が対立している。今週注目された米連邦公開市場委員会(FOMC)でハト派的なFRBの姿勢を好感し米国株市場は上値追いを再開した。しかし一方で、日米金利差拡大の思惑が後退したことで外国為替市場では円高含みの推移となり、これが東京市場では主力輸出株の上値を重くしている。企業の四半期決算発表が佳境に突入するなか、様子見ムードが広がるのは仕方ない時期ではあるが、米国株がリスクオンの流れにある以上、少なくともここは弱気に構える場面ではない。物色の矛先が向かう先としては、海外経済や為替の影響を受けにくい内需株優位の構図が浮かび上がる。
●“国策に売りなし”の建設セクターを攻める
ここは“国策に売りなし”を地で行く建設セクターに照準を合わせてみたい。建設業界はファンダメンタルズ面での裏付けがあり、米株市場や外国為替市場の動向、あるいは世界景気の減速懸念などの影響が収益面に直接的なデメリットを及ぼしにくい。大手ゼネコンの業績をみても、今19年3月期に大林組 <1802> と清水建設 <1803> は営業増益を確保する見通しで、清水建については進捗率から上方修正含みだ。更に、大成建設 <1801> と鹿島 <1812> はいずれも減益見通しながら、前者は今期の営業利益を期初予想から60億円上乗せした1370億円、後者は同120億円上乗せの1200億円といずれも上方修正しており、このポジティブな流れは今期以降も続く公算が大きい。
建設資材コストや人件費の上昇が足かせとなっていたが、IT活用などの合理化に伴う生産性向上、受注単価の上昇などでこれを相殺している。大型案件を中心に手持ち工事は豊富で完工高は増勢基調、これは来期の業績に反映されることになる。商業施設やオフィスビルなど都市再開発に絡む受注が高水準であり、メーカーの旺盛な設備投資需要を背景に工場関連などの案件も収益を後押ししている。加えて、喫緊の課題として防災・減災に重点を置く国策が建設セクターにとって強力な追い風となっていく。
●「国土強靱化基本計画」の緊急対策に着手
安倍政権が掲げる「国土強靭化」は消費税引き上げを控えた景気浮揚策の意味合いも含め、株式市場においても有力テーマとしての位置付けが不動だ。日本列島全体が今、メンテナンスの必要性に迫られている。2017年3月末時点で、予備保全も含めると橋梁は61%、トンネルは実に97%が補修を必要とされている状況にある。橋梁やトンネルなど老朽化の進む社会インフラの補修は既に待ったなしの段階にあるといっても過言ではなく、防災・減災のためのインフラ整備という観点から、いうまでもなく公共事業の拡大は大義名分を得ている。
こうしたなか、安倍政権では従来の「国土強靱化基本計画」について14年の計画策定後初となる見直しに動いた。昨年は7月に豪雨に見舞われたほか、台風21号や、北海道胆振東部地震など自然災害が相次ぎ、経済活動にも多大な支障をもたらした。これを受け、昨年12月14日に160項目を取りまとめた緊急対策に着手することを閣議決定している。2018年度から20年度までの3年間で総事業費は7兆円規模とし、このうち約半分の3兆6000億円程度を国費でまかなう計画だ。羽田空港をはじめ主要空港の浸水対策や120に及ぶ河川の堤防強化などを主眼に建設セクターは大きく動き出すことになる。
●大手ゼネコンを筆頭に有力関連銘柄が目白押し
「国土強靱化」は関連銘柄の裾野も広い。まず、前述の大手ゼネコン4社、大成建、大林組、清水建、鹿島をはじめ、ゼネコン準大手で土木に強く好財務が特長の西松建設 <1820> 、大型土木工事が得意でトンネル関連で実績が高い熊谷組 <1861> 、ダム関連の案件を多く手掛け防災工事に傾注する飛島建設 <1805> などが挙げられる。
また、高速道路や橋梁など補修最大手のショーボンドホールディングス <1414> 、官公庁向けに強くシールド工法で実績が高い大豊建設 <1822> 、鉄道工事で実力を発揮する鉄建建設 <1815> や東鉄工業 <1835> 、海洋土木では業界最大手の五洋建設 <1893> や消波ブロックのトップ不動テトラ <1813> などにも商機が巡る。更にPC使用工事で強みを持つピーエス三菱 <1871> 、法面工事や地盤改良などの特殊土木分野ではライト工業 <1926> や日特建設 <1929> 、道路舗装ではNIPPO <1881> 、日本道路 <1884> 、前田道路 <1883> なども物色対象として外せない銘柄だ。
建設セクター以外でも「国土強靱化」の政策に乗って活躍余地が期待される銘柄は少なくない。道路舗装機械で国内シェア7割を誇る酒井重工業 <6358> や建設用クレーンメーカー大手のタダノ <6395> 。また、巻上機のほか、小型から大型クレーンまで商品ラインアップを充実させるキトー <6409> や、油圧式杭圧入引抜機で首位に位置する技研製作所 <6289> 。落橋防止用装置でトップシェアのエスイー <3423> [JQ]なども要マークだ。土木用プラントメーカーの日工 <6306> 、建設機材レンタルを展開し「足場」では抜群の技術力を持つエスアールジータカミヤ <2445> 、地盤補強材を製造する前田工繊 <7821> などからも目が離せない。
しかしながら、株には意外性が必要だ。このほかに、今回はテーマ買いの流れに乗って株価の居どころを変えそうな穴株を5銘柄厳選した。
●テーマ買いの流れに乗るこの5銘柄に株価変貌余地
<巴コーポ>
業績増額で超割安、月島本社で再開発の波にも乗る
巴コーポレーション <1921> は1月25日にマドを開けて買われた後、目先筋の利益確定売りをこなし再浮上の時をうかがう。鉄構建設大手で体育館など無柱の大張間構造建築で高実績を誇る。都市再開発需要を追い風に昨年11月中旬に19年3月期利益を増額修正している。減益見通しながら、PER5倍前後、PBR0.5倍前後はあまりに割安感が強い。17年12月には731円の高値まで買われた実績がある。なお、同社は東京の月島に本社を構えており、月島や豊洲、築地など再開発事業が今後目白押しとなるだけに、その切り口でも大きく人気化する素地を持っている。
<日本コンクリート>
トンネル内壁材セグメントで強靱化の追い風強力
日本コンクリート工業 <5269> は株価が低位に位置していることで人気素地が高い。200円台後半で5日・25日移動平均線をサポートラインに値固めを続け、上放れ前夜のムードを携えている。東京五輪関連需要で同社が手掛ける基礎パイルが恩恵を受けているほか、シールドトンネルに使う内壁材であるセグメントの需要が収益に貢献。トンネルは国土強靱化の対象として代表的なもので、同社株はその思惑のなかで化ける可能性がある。
<OSJBHD>
橋梁の補修で実力発揮、レオス大株主で思惑も
OSJBホールディングス <5912> も低位材料株の代表格であり流動性も高く、需給相場への思惑が常に根強い銘柄だ。橋梁などを中心とする建設会社で、補修関連中心に受注を獲得している。大株主の保有株比率の変化が頻繁だが、そのなか、昨年10月にひふみ投信で知られるレオス・キャピタルワークスが5%超の株を保有していることが分かりマーケットで話題となった(保有目的は投資一任契約、投資信託などによる投資)。橋梁や高速道路の補修はまさに同社のテリトリーで、国土強靱化のテーマに乗る。
<オリジナル設計>
地方自治体向けに強く公共投資拡大で商機捉える
オリジナル設計 <4642> [東証2]は900円台後半で煮詰まっており、4ケタ大台活躍に向けた踊り場と見ておきたい。上下水道の建設コンサルタントで水道事業の民営化に際し、給水・排水管や継手、バルブ、水栓金具など管工機材で業界トップクラスの実力が生きる。首都圏の都市再開発案件に加え、公共事業拡大の政策後押しも、地方自治体向けに強い同社にとって業容拡大のチャンスを得る背景となる。
<テノックス>
独自テノコラム工法は国策背景に需要開拓が進む
テノックス <1905> [JQ]は出来高流動性にやや難があるものの、動き出した時の足は速い。昨年12月中旬に急動意、瞬間風速で1000円大台にタッチするストップ高を演じた経緯がある。今年に入ってから800円台後半でもみ合いを続けているが、株価指標面で割安なだけに上昇に向けたエンジン再始動も近そうだ。建築物の基礎地盤改良で有力視されているのが同社独自のテノコラム工法で、国土強靱化で需要開拓余地が高まっている。
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