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【市況】植草一秀の「金融変動水先案内」

植草一秀(スリーネーションズリサーチ株式会社 代表取締役)

第2回 株価本格調整局面の始動か

植草一秀(スリーネーションズリサーチ株式会社 代表取締役)

●株価本格調整の可能性

 日米株価は10月初の高値を起点に本格調整局面に移行する気配を強めています。 NYダウは10月3日ザラ場で2万6951ドルの史上最高値を記録しましたが、その後に急落し、12月20日に2万2644ドルのザラ場安値を記録しました。下落幅は4307ドル、下落率は16.0%に達しています。 日経平均株価は10月2日ザラ場で2万4448円と27年ぶりの高値を記録しましたが、NYダウに連動して急落し、12月21日ザラ場で2万0006円の安値を記録しました。下落幅は4442円、下落率は18.2%に達しています。

 私は会員制レポート『金利・為替・株価特報』の2018年10月15日発行号に、日本株価の下落トレンドへの転換可能性を予測しました。2018年の日本株価推移が2007年の日本株価推移に類似していることを踏まえ、日本株価が10月初以降、下落トレンドに転換する可能性を予測しました。

 主要国では日米以外に英独の株価も下落基調を鮮明にしています。ドイツDAX30は1月23日の高値1万3596ポイントから12月20日の安値1万0563ポイントまで3033ポイント、22.3%の下落を記録、英国FTSETM100は5月22日の高値7903ポイントから12月20日安値6646ポイントまで15.9%の下落を記録しています。

 主要国の株価はサブプライム金融危機による株価暴落による2009年3月安値を底にして9年間の上昇相場を演じてきました。この安値と比較すると、NYダウは本年10月までに4.2倍、日経平均は同じく本年10月までに3.5倍、ドイツDAX30は3.8倍、FTは2.3倍の株価高騰を演じてきました。

 9年から10年持続した長期上昇トレンドが終局の局面を迎えている可能性が高まっています。この9年半の間に主要国の株価上昇は2度の中規模調整局面を経ています。一つ目は2011年央から年後半にかけての欧州政府債務危機による株価調整、二つ目は2015年央から2016年初にかけての中国株価急落に連動するグローバルな株価調整局面です。この二度の調整局面を挟んで主要国株価は三次にわたる上昇波動を形成してきましたが、第三次波動が形成され終えた局面で大型調整局面に移行する気配を示しています。

●株価下落の原因

 2018年株価下落の主因が三つあります。第一は米国の金融引き締め政策です。米国利上げ政策は2015年12月にイエレンFRB議長が着手しました。第2回目の利上げが1年後の2016年12月実施されたのち、2017年には3月、6月、12月に3回の利上げが実施されました。これに対して、2018年は3月、6月、9月、12月に年4回の利上げが敢行されたのです。これが株価下落の第一の背景。

 第二の背景は米中貿易戦争の勃発とその激化。この戦争を仕掛けたのは米国のトランプ大統領です。2018年3月の勃発以降、トランプ大統領は米国の中国からの輸入に対して制裁関税を課すことを段階的に発表してきました。その第3弾が2019年1月から実施されることになっていましたが、12月初めの米中首脳会談により、制裁関税の第3弾実施は90日間先送りされることになりました。しかし、まだ解決を見ているわけではありません。

 第三の背景は安倍内閣による増税実施方針です。安倍内閣は2014年4月に消費税率を5%から8%に引き上げました。このときも日本経済は強い下方圧力を受けました。日本政府は認定していませんが、2014年1月から2016年5月まで、日本経済は実質的な景気後退局面に転落したと見られます。その消費税率をさらに10%に引き上げることが計画されてきたのです。

 しかしながら、税率を5%から8%に引き上げた際の影響が極めて深刻なものであったことから安倍首相は、税率を8%から10%に引き上げる時期を、当初の2015年10月から2017年4月に先送りし、さらに2017年4月から2019年10月に先送りしてきた経緯があります。その2019年10月が来年に迫り、安倍首相は本年10月15日に消費税増税を具体的に指示したのです。その指示をきっかけに日本株価が急落し始めました。

●残存する三つのリスク

 実は2018年の株価変動では主要国の株価下落率よりも大きく株価が下落した国がありました。中国です。中国は新興国のカテゴリーに分類されることが多いのですが、GDPの規模では2010年に日本を追い越し、世界第2位の経済大国の地位に上り詰めています。

 その中国を代表する株価指数である 上海総合指数が2018年に大幅調整を演じています。上海総合指数は1月29日の高値3587ポイントから10月19日安値2449ポイントへと1138ポイント、31.7%の調整を演じているのです。2018年株価調整の最大の背景が米中貿易戦争勃発であることが示唆されています。

 10月中旬から12月にかけて、株価下落の三つの要因がさまざまな変化を示しましたが、現時点で三つのリスクに対する安心感は広がっていません。これが株価下落波動を強める結果につながっているものと理解できます。

 米国利上げ政策に関しては、12月7日発表の11月米雇用統計で非農業部門雇用者増加数が15.5万人に減少したことから、FRB利上げのペースダウンを想定する向きもあったのですが、同日講演をしたFRBのブレイナード理事が「FFレートの漸進的引き上げは依然として有効」と発言して利上げ路線継続との見方が有力になりました。

 焦点の12月19日FOMCでFRBによる本年4度目の利上げが決定されるとともに、FRBが2019年に2度、2020年に1度の利上げを見込んでいることが公表されました。トランプ大統領が執拗に利上げの中止を求めたのに対し、FRBのスタンスは依然として極めてタカ派色が強いことが改めて印象付けられました。

 他方、米中貿易戦争については、12月初のアルゼンチンでの米中首脳会談で米国の制裁関税第3弾発動時期が90日間先送りされたことで紛争終結へとの期待感が浮上しましたが、中国企業ファーウェイ幹部がカナダで逮捕されたことを契機に米中対立の長期化が改めて想定され、安心感が再度後退して現在に至っています。

●2019年のトランプリスクに警戒

 安倍内閣の菅官房長官は『リーマンショックのようなことがない限り』2019年10月の消費税増税を実施するとの発言を示しており、今後の内外金融情勢次第で消費税増税の再々再延期の可能性が浮上することになりますが、年末の予算編成に際しては増税実施方針が再確認されることになります。

 安倍内閣は消費税の影響を緩和するための施策を提示していますが、消費税率2%引き上げによる税収増加金額は今後10年で約60兆円にも達します。仮に3兆円の増税対策を講じるとしても焼け石に水程度の効果しか期待することはできません。消費税増税実施に際して、当初の半年間は実質的に税率を現行の8%から5%に引き下げることも検討されていますが、この施策実施により、2019年10月以前に日本の消費全体に買い控えムードが蔓延することも予想され、日本経済が2019年に完全な景気後退に転落する可能性が高まります。

 他方、米国では11月の中間選挙で下院過半数を民主党が占有したことから、ロシア疑惑等に対する民主党のトランプ大統領追及が激化することも想定されます。中間選挙での上院選でトランプ大統領の共和党はミシガン、オハイオ、ペンシルベニア、ウェストバージニアで敗北を喫しました。これを大統領選にそのまま当てはめるとトランプ大統領の再選が困難ということになり、トランプ大統領の政策運営がさらに過激化することも警戒されます。

 その矛先がパウエルFRBに向かう可能性も否定し切れません。トランプ大統領がFRB人事においても独断専行を強めると、金融市場はFRBの政策運営に対する警戒感を強めることになると想定されます。このことも2019年に向けての金融市場の波乱要因のひとつになることが警戒されます。

 12月入り後の株価下落が急ピッチであることから目先は一時的な反発の余地もあるとは考えられますが、2019年に向けてグローバルな株価調整に対する警戒感を解くことは時期尚早であると考えます。(2018年12月21日)


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