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【特集】白鳩 Research Memo(3):自社ブランド品の卸売展開と、ECシステムの外販が新規事業の柱

白鳩 <日足> 「株探」多機能チャートより

■新中期経営計画と中長期の経営戦略

3. 新規事業による成長
新規事業、新規ビジネスでは、自社ブランド事業の本格立ち上げと、自社開発したEC基幹システム『楽らく通販システム』の外販がその中核となっている。

(1) 自社ブランド事業
自社ブランド事業についてはブランドネームから「ブルーミングスタイル事業」と呼称することもある。自社ブランド事業の一環として白鳩<3192>は、「blooming FLORA」(ルームウェア)や「blooming FLORA essence」(インナーウェア)などをリリース済みで、自社サイトや楽天、Yahoo!、Amazonなどの各店舗で販売してきた(BtoC)。

これに加えて、2018年11月8日にZOZOTOWNに「blooming FLORA」の店舗をオープンした。同社はかねてより、自社ブランド商品による卸販売(BtoB)への事業拡大を目標として掲げてきた。ZOZOTOWNへの出店は、それ自体はBtoCであるが、同時にまたBtoB事業拡大を本格化する最初の1歩だと考えている。ZOZOTOWNへの出店で成功を収めるには、一定のブランド認知度がないと難しいと考えられるためだ。「blooming FLORA」がZOZOTOWNへの出店で一定の成功を収めることができれば、それは同ブランドの知名度、認知度が一定の水準に達したことを意味し、同社の卸売事業(BtoB事業)の成功可能性はそれだけ高まるものと期待される。

(2) ECシステム外販事業
ECシステム外販の収益事業化も従来から示唆されてきたが、BtoB事業同様、この事業も新中期経営計画の中で新規事業の1つに正式に位置付けられ、本格的に動き出した。既に複数の事業会社から引き合いが来ており、一部では具体的な商談も進んでいるもようだ。業績計画表を見ると、2020年2月期に80百万円の売上高が計画され、最終年度の2023年2月期には400百万円に拡大する計画となっている。

この事業の収益モデルは同社のECシステム(ソフトウェア)の販売とその後のメンテナンスとなるとみられる。典型的な対象顧客像について同社は、年商20億円~30億円のEC企業で、業種的には消費期限の短い生鮮食品業者と同社と競合するインナーウェア専門事業者を除いたすべてとしている。弊社では、同社と競合しないアウター中心のアパレル企業や靴のEC業者などがまずはターゲットになるとみている。

『楽らく通販システム』の特長・強みは複数の販路別の在庫を一括管理するほか、配送や経理等の社内管理業務とも連動した一貫型である点にある。年商が数百万円規模であれば簡易で安価なシステムで対応可能で、そうしたサービスは多数存在している。しかし数十億円規模になると、そうしたシステムでは対応できない。また、それだけの年商を上げるうえでは複数のモールに店舗を出していることが想定されるが、それらを効率よく一貫して管理できるような既製服型のサービスはないため、各社が“自社開発”するケースがほとんどとみられる。同社は『楽らく通販システム』を各ユーザーの事業内容に合わせて一部をカスタマイズすることで、高効率性と低コストを両立し、需要を掘り起こしていく方針だ。

ECシステムの販売価格を始めとする収益モデルの詳細は明らかにされていないが、システムのスクラッチ開発にかかる一般的な費用や、ECシステム業界の競争環境などから推計して、1件当たり数千万円規模になるとみている。この推測が正しければ、最終年度の400百万円の売上計画は、10数件の販売で達成可能であり、ECシステムに対する潜在需要に照らして十分達成可能なターゲットだと弊社では考えている。

ECシステムに関連してもう1つ注目されるのが小田急電鉄グループ内での同社のポジショニングだ。同社のECシステムが高い評価を獲得しているのは前述のとおりだが、小田急電鉄が同社を子会社化した狙いもここにあると弊社では見ている。鉄道会社は駅ナカ・駅近という立地を生かして小売事業を営んでいるが、EC化の流れへの対応を迫られていることも否定できない事実だ。その流れの中で、優れたECシステムを有する同社が小田急グループのEC戦略においてバックヤード業務を担う可能性は十分あると弊社ではみている。この点は今中期経営計画に織り込まれていないとみられるが、EC領域の体制整備と販売強化は小田急グループ全体の喫緊の課題となっており、比較的早い段階で事業化に至る可能性もあると弊社では推測している。


多様な人材が個性を発揮できる組織・体制づくりを推進し、成長エンジンの1つにすることを狙う
4. 新価値創造
前述の既存事業の拡大や新規事業の立ち上げは、これまでも中長期的な成長のための施策として語られてきた。新中期経営計画ではそれらに加えて“新価値創造”という取り組みが新たに加えられた。その内容は収益拡大と直接的に数字で結び付くものではないが、一方で、同社働く社員一人ひとりのモチベーションアップにつながり、結果的に収益拡大が実現されることがイメージできる内容となっており、ここにこの取り組みの意義があると弊社では考えている。

“新価値創造”の内容、目指すところは、新中期経営計画のスローガンである『Far Together!』に集約されている。『Far Together!』の意味は「未来へみんなで一緒に!」ということだ。ここには全社員がそれぞれ主役であり、社長も含めて横一線に前に進んで行こうという気持ちが込められている。こうしたスローガンが生まれた背景には、社員の76%を女性が占めていることに象徴されるように従業員の多様性が進んでいる現実がある。この現実を踏まえ、多様な人材が個性や潜在能力を発揮できる組織づくり、すなわちダイバーシティ経営の推進こそが企業価値増大に不可欠との判断に至ったことがこのスローガンに結びついたと言える。

この動きを主導したのは2017年に就任した代表取締役社長の池上正(いけがみただし)氏だ。同氏は創業者でもある前代表取締役社長(現代表取締役会長)の池上勝(いけがみまさる)氏の長男だが大学卒業後はインナーウェアメーカーに就職し、メーカー側の視点で業界を学んだ。その後同社に入社し、企画、仕入、システム開発などの各分野で経験と実績を積んできた。その正氏が社長に就任して強く感じたことは、全社員が価値観を共有することの必要性だ。『Far Together!』というスローガンは3年前から同社内に導入されていたが、中長期の成長戦略の重要ポイントであることを明確にするために、新中期経営計画に織り込んだ。

前述のように、同社は新社屋・物流センターの建設計画を有しているが、このプロジェクトは『Far Together!』の実現にも貢献が期待されている。新社屋では全部署が同一フロアに集まる形でのオフィス環境づくりが実現する見通しだ。これによりコミュニケーションの闊達化や情報・価値観の共有化を推進し、各個人の仕事への取り組みが前向きでスピード感のある、主体的なものになると期待される。また、365日稼働を実現する労働力の確保を目指して託児所の設置なども計画されている。同社では、これらにとどまらず、ダイバーシティ経営の実現に向けて随時新たなアクションを起こしていく方針だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)

《RF》

 提供:フィスコ

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