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【特集】検証・ロシア関連株、プーチン「平和条約」発言で日ロ関係は動くか <株探トップ特集>

唐突に飛び出したプーチン露大統領の平和条約発言。過去の経緯からマーケットでロシア関連株に動きはないが、期待薄は関係改善に進展があった際のサプライズを増幅する可能性をはらむ。

―マーケット無反応も期待薄がサプライズ増幅、関係改善の行方は―

 ここにきて、日本とロシア間で北方4島を巡り変化の兆しが出ている。きっかけは今年9月、ロシアのウラジオストクで開催された東方経済フォーラムにおいて、唐突ともいえるプーチン大統領の安倍首相に向けての「平和条約を結ぼう」という発言だった。そして、安倍首相も11月14日のシンガポールにおけるプーチン大統領との会談後、平和条約交渉に対して意欲をみせたことで、4島問題も解決にむけて歩み寄るとの観測が広まっている。が、過去の経緯に加え、一筋縄ではいかないプーチン大統領を向こうに回して楽観視する見方は極めて少ない。こうした状況を反映してか、株式市場でもロシア関連株に目立った動きは見られない。ただ、国際情勢が急激に変化するなか備えあれば憂いなし、 ロシア関連株の現状を検証した。

●2島プラスα

 日本政府は、戦後一貫して領土問題の解決なしにはロシアとの平和条約締結はないとの立場を堅持してきた。しかし、ここにきて安倍首相は、平和条約締結後に4島のうち2島(歯舞、色丹)引き渡しを明記している1956年の日ソ共同宣言を基に、「2島プラスα」を模索していると伝わっている。ロシア側も、欧米の経済制裁に加え原油安による景気低迷の状況であるだけに、日本との交渉を進め経済支援を得たいとの事情が背景にある。ただ、領土返還はプーチン大統領にとっても“諸刃の剣”で、ロシア国民の反発を招きかねず、そうたやすいものではない。

 こうした日ロ接近にも東京株式市場は、あまり関心が高いとはいえない。そこには、トランプ米大統領という変数による、米中新冷戦とも揶揄される世界経済の混乱が株式市場にも波及しており、“眉つば”ものの領土交渉どころではないといったムードもある。

●「良い方向には期待しにくい」

 ある大手生保系エコノミストは「安倍首相はロシアとの平和条約締結に前向きな姿勢をみせており、これは株式市場にもポジティブな思惑をもたらしている。プーチン大統領との間では1956年の日ソ共同宣言を平和条約交渉のベースとすることで合意したと伝わっている。もし、そうであれば共同宣言は条約締結後に歯舞、色丹の2島について日本への引き渡しを明記しているので、一気に4島とはいかないまでも相応の期待が膨らむところだ。ところが、プーチン大統領は(日本に)引き渡したとしても主権を日ロどちらが持つかについて協議する必要があると強く主張している。一連の流れを見る限り、2島の主権の帰属についてロシアは譲るつもりはないことが分かる。したがって、これが良い方向で盛り上がることは期待しにくいと考えるのが現実的だと思う」と言う。

●川上塗料、国営天然ガス大手に塗料納入

 こうしたなか、ロシア関連株に無関心を装う東京株式市場だが、2016年の年末には急動意する場面があった。同年12月、プーチン大統領が訪日し、北方領土問題の進展や日ロ間の経済協力を巡っての思惑が高まり、資源、水産などに加え、物流に絡む低位株にも物色の矛先が向かった。これら関連株の状況は、いまどうなっているのだろうか。

 このプーチン大統領訪日を前に、もちろん大手の資源、水産株などには注目が集まったが、そうしたなか投資家が熱い視線を向けたのが“中堅どころ”の関連銘柄だった。

 そのなか、16年12月に急動意した銘柄の一つが川上塗料 <4616> [東証2]。同社は、1991年からロシアの国営天然ガス大手ガスプロム社に天然ガスパイプライン用塗料の納入を開始しており、これを材料視し物色の矛先が一気に向かった。現在の株価は、1300円を挟み底を這う状態に加え出来高流動性も乏しい状況が続く。ただ、ガスプロム社には約2兆5000億円ともいわれる投資計画があると伝わっており、「現在も取引は継続している」(総務部)だけに、ロシア関連株に再びスポットライトが当たれば思惑高を招く可能性は少なくない。

●東海運、リンコー、東洋埠頭

 また、東海運 <9380> にも当時、物色の矛先が向かい急騰。300円手前の株価を500円台半ばまで沸騰させた経緯がある。同社は、ロシア向け国際輸送に強みを持っており、これが日ロ間の関係改善で輸送量が増加するとの思惑から買われた格好だ。現在の株価は年初から調整が続き、10月30日に295円まで売られ年初来安値を更新したが、ここを底にジワリ反転の兆しも。

 ロシアとの関わりが深い新潟港を軸に港湾運送を行うリンコーコーポレーション <9355> [東証2]も急動意した銘柄の一角だ。それまで、株式市場では極めて低かった同社の名前を一気にスターダムにのし上げた。加えて、新潟市と佐渡市でホテルの経営を行っていることから、ロシアからの訪日客需要が拡大するのではとの連想を呼びロシア関連銘柄として注目された。思惑先行の色彩が強い銘柄だが、関係改善が明らかになれば、急騰習性に着目した投資家が再び食指を再び伸ばすこともありそうだ。同社は11月6日に決算を発表。19年3月期第2四半期累計の連結経常利益は前年同期比90.1%増の4億5800万円に拡大し、通期計画の4億8000万円に対する進捗率は95.4%に達している。時価総額が小さく値動きが軽いため、いざという時のため注目しておいても良さそうだ。

 更に、国際物流事業でロシアに強い東洋埠頭 <9351> は、関連会社を軸にロシアCIS(独立国家共同体)及び中央アジア諸国を中核サービス地域とし、複合輸送と倉庫保管業務を展開しており、ロシア関連としての注目度は高い。

 こうした、かつて急騰したロシア関連株といわれる銘柄の難点は、現在商いが極めて薄いところだ。時流に乗る投資眼と同時に、慎重な投資姿勢を持つことも肝要となる。

資源・プラント関連物流セクターに思惑

 前出のエコノミストは「ひとつ言えるのは株式市場では必ずしも4島返還への道のりをテーマ視しているわけではないということ。ロシアとの経済交流が何らかの形で実現すれば、それが関連企業の株価には刺激材料になるはずだ。そう考えた場合に、ロシアとの平和条約交渉はその過程で商社資源・プラント関連、あるいは物流セクターの思惑買いの原動力にはなりそうだ」と指摘する。

 当然、ロシア関連の本流といえば、資源に絡む銘柄ということになる。国際石油開発帝石 <1605> 、石油資源開発 <1662> などがあるが、こちらはここ急速に軟化している原油価格を背景に株価はパッとしない。ただ、日揮 <1963> 、千代田化工建設 <6366> などプラント株、三菱商事 <8058> 、三井物産 <8031> 、丸紅 <8002> 、住友商事 <8053> 、伊藤忠商事 <8001> など商社株には活躍期待が高まりそうだ。また、漁場の拡大思惑から日本水産 <1332> 、マルハニチロ <1333> などにも目を配っておきたい。

●東光高岳、駒井ハルテックに新味

 新味あるところでは、今月8日に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が極寒冷地における安定的なエネルギー供給目指すことを目的に「ロシア極東に極寒冷地仕様の風力発電機3基が完成、実証運転を開始」と発表。NEDOの締結先はサハ共和国、ロシア国営電力会社ルスギドロ、委託先は三井物産、東光高岳 <6617> 、駒井ハルテック <5915> で、19年12月から、低コストで安定的なエネルギー供給を目指した本格的な実証を行う予定だという。今後、日ロ関係に何らかの進展があった場合、関連銘柄の一角として注目しておく必要があるかもしれない。

 ロシアとの領土返還交渉と平和条約締結は、言うは易く行うは難しで、そうは簡単に進むものではない。ロシアに関連する企業数社に、今回の日ロ政府間の言動を踏まえ、今後の事業展開についてコメントを求めたが、「その件については、お答えを控えさせて頂く」(物流)、「ああいう国だから……」(プラント関係)と、口を閉ざす。疑心暗鬼のなか、進出企業自体も今後の行方を見守るしかない状況だ。

 来年1月、安倍首相はロシアを訪問し、再びプーチン大統領と会談をする予定。国民感情を背景に、現実には動かないと思われた北方領土を巡る交渉、そして平和条約締結への動き。本当に“山”が動きだすのか、来年早々にも最初の正念場を迎えることになる。

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